弾薬の街‘スカ’
明日香ちゃんがクエストに精を出すものの、私含む他2名はやる気なし。明日香ちゃん以外はそれなりに稼いでいるから、いまのところ臨時収入が必要なほど困ってはいないのだ。
シックルウェアの借家から南へ十数キロ。私たちがやって来たのはアメリカンな街、スカ。シックルウェアの武器商が刀剣を中心に扱っているのに対し、スカには銃やミサイル、爆弾などの弾薬系を扱う者が多い。
噂によれば、闇市ではこの世界で最高性能のロケットランチャーも購入できるのだとか。それは通常軍隊の基地や戦艦に搭載されるそうだけれどそこは闇市。カネさえ払えばなんでもアリ。購入して逮捕されたときの保釈金は大国の国家予算を遥かに超えるけれど、使い方や改造の仕方によってはゲーム自体がシステムエラーを起こし世界そのものが滅びるため、基本的にはお金での解決には応じられず、死刑になるそうだ。
ふふふふふ、これはおもしろい……。
命懸けにはなるけれど、これでゲームの運営者を狙撃して全滅させれば世界征服も夢じゃない。
あ、でもそうなったらシステムメンテナンスをする人がいなくなって自動的に世界が滅亡してしまう。それはまずい。
しかしそのロケットランチャーの技術を応用して、世界は滅びないが征服は可能なレベルの装置を開発できるかもしれない。
あぁ、わけのわからないモンスターを討伐するよりそちらの技術を学びたい……。
そんな意欲を秘めつつ、私たちは客船なら10分の距離をお金がない明日香ちゃんに合わせレンタル手漕ぎボートで2時間かけ、晴れ渡る冬の海を渡った。上陸したのは無人島『モンキーアイランド』。その名の通り猿が多く住んでいて、凶暴化したそれの討伐が今回のクエスト。
島内には私たちの他にも客船で上陸したプレイヤーが数十名おり、過半数が浮き足立ったおかしなオーラを醸し出している。
「よーし無人島上陸! なんだかRPGらしくなってきたぁー!」
「ふふふ明日香ちゃん、人生そのものがRPGなんだよ……!」
風祭さんがお姉さんらしく含蓄を垂れるも、明日香ちゃんは「あぁ、うん、そうだね」と受け流し、なんだか気まずい空気が流れた。
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