明日香、ヤンキーに絡まれる
「ああああああ、やっと休日だ。なぜ、なにゆえ私だけ休みが週1または隔週なのか」
給料日から3日過ぎた12月25日、クリスマス。この世界では国民的休日とされているらしく、ブラック企業勤務の明日香ちゃんもいつしかぶりの休日だ。
私は在宅勤務、その他金魚の糞たちもまあそれなりに休んでいて、休日には年末年始に必要なアイテムや自分へのご褒美を購入するために街へ繰り出していた。
朝10時。金魚の糞たちはまだ爆睡中。私は黙々と闇取引。
暇を持て余した明日香ちゃんは何を思ったのか、ひとりで外出していった。
◇◇◇
きょうはクリスマス! なのに家に引きこもってるなんて勿体ない!
せっかくの休日だからぱあっと! ショッピングしたり、イルミネーション見たり、サンタさんに物乞いしたり! クリスマスらしいことをしなきゃ!
しかし___。
「オーマイガー! お店どこもやってない!!」
商店街シャッター閉まってる!! 大型ショッピングモールの『テラ・スモール』さえやってない!!
なぜ!? なんで!? クリスマス商戦でしょ!? ここイチバンの書き入れ時でしょ!? ついでにせめて食事でもと思って行ったカレー屋さんも閉まってたよ!!
「あら明日香、なにやってるの?」
「キャロル!! ちょっとちょっと!! この世界どうなってるのさ!! クリスマスなのにお店やってないよ!! クリスマス商戦放棄ですか!?」
どこからともなく箒で飛んできたキャロルは土埃を巻き上げてふわっと私の前に着陸した。あのこれほんと、ファンタジーっぽい登場だけど当事者は目にゴミ入るわ砂粒吸い込むわで地味に不快だから本当にやめてほしい。
「なに言ってるの。そんなのイヴで終わったわよ。クリスマス当日はテレビ局とか一部を除いてはみんなお休み。常識でしょ?」
「常識!? いやいやクリスマスと言えば学生は冬休みだけど大人は普通に働いてるでしょ」
「あぁ、ほんと、日本人はよく働くわよね~。なのに企業の純利益率が低いのはなぜかしら? あ、根性論で働かせて人に投資しないからね」
「えぇ、そうですとも。私の勤務先の社長は日本人ですよそういえば」
「わかればいいのよ。じゃあ、先に帰ってるわ」
「え!? あ、ちょっと!?」
乗せてってくれたっていいじゃん。しかもまた土埃巻き上げてるしゲホゲホ。
しょうがない。とぼとぼ歩いて帰るか……。
失望を胸に、私は肩を落としてテラスハウスに向けて歩き出した。
それにしても、本当に人気ないな。みんなホームパーティーかな。
「おう嬢ちゃん! ちょっと、ちょっとだけ」
うっわ、うーわっ、サイアクだ、こんなときにヤンキーに絡まれるとかウザさしかない。




