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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
戦闘訓練
36/84

これがアイドル!

 話は昨夜、沙雪が良からぬことを企てている頃に遡る。


 関取たちと別れ、行く当てもなくぼんやりした黄色い街灯やネオンの光に包まれた街を彷徨さまよっていた明日香。その肩を、15歳の少女が後ろからポンポンと叩いて歩を止めた。


 反射的に振り返ると、自分の顔の高さに大きくもなければ小さくもない、適度な高さの美しい丘が二つあり、一瞬、本能的に目を奪われたものの、この美しいフォルムの持ち主の顔を確認すべく、明日香は上を向いた。


 こ、このお姉さんはもしかして、もしかして!?


 見覚えのある少女の顔に、明日香は瞬間湯沸かし器のごとく気持ちが沸騰。


風祭かざまつり羽心音はこねさん!?」


「えっ!? 私を知ってるの!? ありがとおおお大好きいいい!!」


 ぶっふぉあーたまらん! かわゆい女の子に背後からギュッとされてるぶふぁー! この世界に来てから冴えないことだらけだったけど、とうとう私にもツキが回ってきたああ!


「うふおおお! やっぱりそうだ! ヤバいヤバい興奮する一緒にホテル行こ! でもきょうはアコギのケース背負ってどうしたの?」


「今夜は路上ライブ! 歌って踊れて作詞作曲もできるスーパーアイドル羽心音さんですよお嬢さん! さーあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! ホテルはこれからやるライブの収入次第!」


「マジ!? うっひょーい! お客さん集めてくるね!」


 なんだろう、羽心音さん、テレビで見た切ない表情のイメージとは違う。


 もしやこれがっ、これがアイドルなんだ!


 普段は明るくても曲に合わせて表情や身振りを工夫してるんだ! 当たり前っちゃ当たり前だけど、演じてる人をナマで見るとなんかすごい感じが伝わってくる!


 そんな羽心音のために、明日香は頑張ってそれなりに客を集め、バラードをメインに観客を沸かせたが……。


「20人くらい来てくれて、お金くれたの一人だけだったね」


「路上ライブってそんなもん。うん、わかってたよ。まだテレビのギャラ振り込まれてないから、今夜は野宿だ」


 歌声は大気へと散りばめられ、その余韻はすっかり消えて静寂が訪れた深夜。人通りはまばらで、酒のせいかバカ騒ぎする男の奇声が時たま遠くに聞こえる。


 乾いた空気に冷却された11月の夜。街を少し外れたらさぞそれなりに綺麗な星空が広がっているだろう。


 しかしここは繁華街。酔い潰れた下々の人間やどぶねずみが行き交うストリートの隅で、二人はいつしか眠りに堕ちていた。暴力沙汰で拘留された沙雪とキャロルが結果的に一切の宿泊代を支払わず、市民の血税で身の安全を確保されていたなど、知る由もなく。

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