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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
戦闘訓練

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35/91

キャロルの脚は非常食

「おら! もう戻ってくんなよコラァ!」


 乱闘から一夜明けた朝。小鳥のさえずりが響く少し寒い青空の下、隔離病棟での収容期間を終えた沙雪とキャロルは甲冑の大男につまみ出され、べふべふっと二つの尻が朝露で湿った土の路面に勢いよく叩き付けられた。小さな尖った砂利が突き刺さって地味に痛い。


「ふ~ぅ」


 外の空気は美味しい! 早く密輸業者と取引をしてロケットランチャーを整備しなきゃ!


「痛い! レディーに何すんのよ!」


 まったく、マナーが成ってないわね! か弱いレディーをぶん投げるなんて信じられない! 次に会ったら魔法で操って顔面から肥溜こえだめにぶち込んでやるわ!


 沙雪とキャロルはそれぞれに想いを抱き、明日香やアキアカネ夫妻と合流するためにラチエンコーストの中心部へ向かって歩き出した。事実上の獄中で一夜を明かした二人だが、反省の色はまるでない。そう、人は簡単に心を入れ替えられる生き物ではないのだ。


 アキアカネ夫妻とはすぐに連絡が取れたが、明日香からは応答がない。もしかしたら何者かに捕らわれたかもと嫌な気もしたが、まぁ何とかなるだろうと気楽に構えた。


「きのうはごめんね。キャロルちゃんが強いからつい気合いが入っちゃった」


「ううん、私こそごめんなさい。魔法を使えない沙雪への配慮が足りなかったわ」


 ふふふふふ、と許し合う二人から滲み出るドス黒いオーラ。二人とも決して『あなたが思いのほか強かったから本気を出した』とは言わず、さも力をセーブしたかのような物言いをした。


「おう、お前ら元気だったか」


 レーダーで感知したのか、アキアカネ夫妻は沙雪とキャロルがちょうどパチンコ店の前へ差し掛かるときに中から出てきた。自動ドアが開いた途端、パチンコ玉のじゃらじゃらした音やBGMの濁流が外へ漏れ出し耳が痛くなる。


「アキアカネさん。おはようございますっ」


 コイツがいなければキャロルをメッタメタにできたのにと、天使のような笑みの裏に怨念を隠す沙雪。


「元気じゃないわよ! よくも隔離病棟なんかにぶち込んでくれたわね!」


「それだけ言えるなら元気ね。ところで明日香はどうしたの?」


 雌のアキアカネが問うた。


「わっ、私ならここに……」


 足元をよく見ると、明日香よく似たの素行の悪そうな少女と、何かを夢見てギターを担ぎ都会へ出たは良いものの、社会を甘く見て失敗し、行き場を失ったように見える15歳くらいの少女がパチンコ店の外壁にもたれ掛かってぐったりしている。なんだ、チャラチャラして貧乏になった挙句、物乞いをするどうしようもない奴らかと、沙雪たちは二人を無視して歩き出したが。


「きゃあ! 脚掴まないでよ!」


「ぶひゅひひひ、キャロルの脚は非常食……」


 小汚い少女の纏う黒いハロウィン衣装はまるでゴミ袋に穴を開けて服の体を保っているようで、せっかくのおしゃれアイテムが不潔感を際立たせている。そして何より、瀕死状態でニヤニヤしがみ付くその姿が不気味のなんの。


 足手まといは知らぬ者として扱いこの場に捨てるのも、この先の戦闘を不利にしない有効な手段と思った沙雪とキャロルだが、名前を呼ばれ変態行為に及ばれたら他の人類に失礼と、この小汚い少女が明日香だと断腸の思いで認めざるを得なかった。


「ところでこの女は誰なんだ」


「むふふふふ、アキアカネよ、よくぞ訊いた。この人はね……」

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 インフルエンザで寝込んでいました。


 ということで、また地味にキャラクターが増えました。彼女は何者なのか……? お楽しみに!

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