おっぱいちっぱいミドルパイ!
そろそろパーティーに戻らなきゃと、お相撲さんたちとグッパイサヨナラした私は、夜の繁華街を絶賛満喫中。煌々とした騒がしい街の中、みんなと合流するためにアキアカネに電話をかけたら、沙雪とキャロルは何かやらかして隔離されてるって聞いたし、それを言伝してきたアキアカネ夫妻はパチンコ打ちに行ったみたいだし、私はキャバクラでも行こうかな~。
キャバクラって、どんなところなんだろう?
明日香は暫し、妄想に耽る。
◇◇◇
「へいへいへーい! 未成年にドンペリタワーはダメだから、ジンジャエールタワー行こうぜへーい!」
シャンデリア煌めく店内のグラスタワーに注がれる黄金色のジンジャエール。そして私はお姉さんたちに囲まれてカンパーイ!
「きゃあああっ! 明日香ちゃん最高! もぎゅもぎゅさせてー!」
「イヤ! 今夜から明日香ちゃんは私の妹! ほーら、私の谷間に飛び込んで!」
「ねぇ、わたし、おっぱいちっちゃいけど、だめかな?」
「そんなそんなぁ~、おっぱいもちっぱいもミドルパイもカモンカモ~ンぐふぇふぇふぇ~」
◇◇◇
「ビュッフェーッ! びゅふぇふぇふぇふぇ! たまらん! こりゃたまらんのう! 一晩で1億くらい使ってしまいそうじゃぐゅふぉふぉふぉふぉっ!」
さてさて、今宵私は何処に泊まろうか。3人パーティーの中で唯一施設にぶち込まれたり警察のお世話になっていない優等生の私だから、きっと一流ホテルが似合う筈だけど、あいにくお金をあまり持っていない。波風立てず無難に暮らそうとして、沙雪みたいにハチの巣退治で賞金を貰ったり、キャロルみたいに魔法で誰かを救助して食い繋ぐ術もない。パチンコが終わったら、アキアカネが宿に連れてってくれるかな。でもアイツらはパーティーメンバーじゃないから、もしかしたらもう会わないかもしれない。
これは野宿フラグか。はたまたネカフェ難民になるか___。
夜の繁華街は綺麗なお姉さんより、危ない男のほうが多いから怖い。かといって街外れに避難したらモンスターに襲われる可能性が高まる。
やばい、怖いし退屈だ。どうしよう。
酔っ払いのオジサン、バイトっぽいチャラそうな客引き。満面の笑みでお姉さんのお店の前に立つ、怒らせたら何が起きるかわからない本職の客引き。街は人であふれ返ってるのに、私の世界は独りぼっちの静かな空間。誰も彼も他人には無関心だけど、肩がぶつかったり気に食わないことがあると突然刃を剥き出しにして、荒んだを満たそうとする。でも暴力は麻薬と同じで、繰り返す度に心はどんどん荒んでゆく。私自身が両親の喧嘩を見て育ち、二人の変化を見て学んだことだ。
凡人の私に居場所がないのは、現実世界でもゲームの世界でも同じなんだ。
私たちの生きる世界は負の要素のほうが強いと、何処かで聞いた。それを真実として仮定すると、その場で何もせずにじっとしていれば、待っているのは安定ではなく脅威。
海の浅瀬でぷかぷか浮かんでいたら、いつの間にか水深数百メートルの沖に流されて、平野部でのほほんとしていても、やがて嵐が襲来して、直撃されたら死んでしまう。何処でどうしていようと、何もしなければ必然的に脅威に見舞われる。それはきっとゲームの世界でも同じで、じっとし続けていたら後悔という闇に呑まれる。
でも今の私にできることなんてせいぜい好きなものを見て楽しんだり、飲み食いして商人の売り上げに貢献するくらい。つまり受け身の立場で、自分からは何も造り出せない。
この世界に一定の貢献をしなければゲームクリアにはならないけど、私に与えられたステージは、一体何だろう。お金を稼いで、何かをたくさん買って社会に貢げば、それでいいのかな。
「ヘーイリトルガール、こんな時間に一人で歩いてどうしたの?」
思い耽りながらとぼとぼと歩いていたら背後から女の人の声がして、柔らかい手に肩をポンポン叩かれた。振り返ると、私の頬は彼女の人差し指に陥没して、よくあるイタズラに引っ掛けられたと気付いた。
あれ? このお姉さんって、もしかして……!




