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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
はじめての戦闘

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少女が高速飛行した結果

 んんんんんん!! 口が裂けるううう!! 幼くして口裂け女になっちゃうよおおお!!


 雌のアキアカネさんに急いでラチエンコーストまで飛んで欲しいという頼んだら、「わかったわ、目を閉じて!」と言われ、私はそれに従った。続いて「準備はいい?」と訊かれ「はい」と答えると、彼女はホバリングから飛行機が離陸するときのように一気に加速した結果……。


 助けて助けてやだやだもうやだ降ろして明日香ちゃんより先に私が空中分解して死んじゃうよお! でも空気抵抗で喋れないから意思表示もできないよお!


 空気抵抗により歯茎を剥き出した状態で唾液を飛散させながら空中を高速移動する私はさぞ醜いだろう。でも明日香ちゃんを助けるためになるべく早く助けを呼ばなきゃ。


「着いたわよ、ラチエンコースト」


 アキアカネさんの知らせに安心し、腰が抜けそう。


「は、はあああっ……」


 生きて、生きて着陸できた。あぁ、もうだめ。


 空飛ぶ少女というと、箒にまたがって絶景に感動しながら悠々と飛行するイメージがあったけど、所詮は私、3次元。アニメの世界と現実とのギャップに着陸までの僅か数分で打ちのめされ、いまにも倒れてしまいそう。偶像崇拝ぐうぞうすうはいに入り浸り過ぎた哀れなオタクの末路というものか……。


 いけないいけない、感傷に浸るより先に助けを呼ばなきゃ。


 腕時計型端末を操作し、ダメ元で運営側に直接救助してもらえるようボビーさんに乞うたが、それではゲームの意味がないと断られたものの、レスキュー隊の電話番号は教えてくれた。緊急通報用電話番号は警察、救急ほか、どれも共通で『911』だそうなので、さっそく通報する。


 良かった。ここは電波が入る。


 森の中は『圏外』のため、基地局を必要としない無線通信である運営以外との通信は不能となっていた。現実世界のように携帯端末用の基地局を設置するという無駄に凝った設定など迷惑極まりない。この世界のすべての情報はサーバー管理されているのだから、世界全体が有線接続されているも同然だろう。私たちは好んでこの世界を冒険しているわけではない。リアリティーにこだわるのならば、実際の通信会社のようにカスタマーサービスとして一刻も早く市街から離れた場所にも基地局を設置していただきたい。けれど運営側と常時連絡が取れるのは幸いだ。言い換えれば、常に神様と交信できるのだから。


 そう思いながらダイヤルすると、ワンコールでオペレーターと繋がった。


『はいキューイチイチです。どうされました?』


 オペレーターはやや早口の男性。洋画の日本語吹き替え版のような口調だ。


「あ、もしもし。あの、ビギンズタウンとラチエンコーストを繋ぐ切り通しでお友だちがスズメバチに囲まれてしまったのですが」


「スズメバチは何匹くらいですか?」


「百匹以上です」


「お友だちはどのような状況か、わかりますか?」


「いえ、いま私はラチエンコーストの市街地で、お友だちは蜻蛉さんと一緒にスズメバチの巣の天辺てっぺんに転落しました」


『スズメバチの巣に転落。ではあなたの名前と年齢、住所を教えてください』


階上はしかみ沙雪さゆき、12歳です。冒険者なので住所は不定です。あの、命が危ないので早くしてください」


 緊急事態だから通報しているのに、やり取りがじれったい。ただでさえこの場所に到着するまで数分経過しているとあり、不安は増すばかりだ。


「わかりました。落ち着いてください。ビギンズタウンとラチエンコーストを繋ぐ切り通しですね。すぐに向かいます」


 通信を終えた私は端末でホームセンターを検索、僅か1分で到着した。この世界の虫に有効な殺虫剤と二人分の防護服を指紋認証システムで素早く購入。再びアキアカネさんに抱えられ、現場へ向け出発した。

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