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9. 集結! 震撼するザラ平野!

「おっと、どうやら“自宅(ゴール)”の設営が完了したようですね。家主のクロードさんが満面の笑みで明け渡してくれました。すごい苦笑です! あんなに納得がいかなそうな顔は今まで見た事がありません!」

「分かってくれたようでなによりであるな。それと、私は帝国を誤解していたようだ。あのクロードと言う男は気風がよい。身の安全と寝食を保障してやったら、気前よく旗下の兵士を設営準備のために貸し与えてくれたしの」

「はい、世間一般にはそれを捕虜ほりょというのですが、とにかく素晴らしい善意です!」

「うむ、それに報いるためには今大会を盛り上げる他ないな。さて、残念ながら我が息子が脱落し七人となってしまったが、キタラー達はどうなっておるかの?」

「はい、そろそろみなザラ平野に入る辺りでしょう! お、特に速いのは……あれはレイス・ストレイです! どうやら空から無事魔のホーヴィンス海域を踏破したようです!」

「流石に絶道の長距離飛行は疲れたようであるな、地上に戻り風踏みにシフトしたか」

「はい、グルバ帝国とは反対側から突入してきます! すごい! 速いぞレイス・ストレイ! アリシュリア兵を蹴散らして止まらない! 彼女のアニーキー走法が唸りを上げる! 牙をむく! 全く止まりません!」

「うむ、元々障害物を壊すだけのパワーは持っておったしの。兵士相手ではこの程度造作もなかろう」

「レイス・ストレイに続いてザラ平野に突入したのはドゥウとアリア11号です! こちらもアリシュリア王国方面から走ってきます! その後ろにトレインしたアレクセイが続く!」

「互いに僅差であるな。ここからどこでヲリ戦術に切り替えるかが勝負を分けるが、アレクセイはおそらくギリギリまで勝負を仕掛けんだろう。二対一であるし、狙うとすれば他のキタラーを巻き込んだ乱戦か」

「はい、既にアリシュリア王国の兵士と乱戦になりつつありますが、彼らでは相手にならないようです。陣形がズタズタです!」

「そしてダンボ・スチームがどうやら国境付近から来たようであるな。 モーラ・グーラの姿は未だなしか」

「はい、トリシア・ヴァレンも見失ったようです。彼女はまた奇襲をかけてくるのでしょうか?」

「おそらくはそうであろうな。映像班も全く捕捉出来ていないようであるし、これは読めんぞ」

「大番狂わせがあるかもしれません! っと、どうした事でしょう? 映像が強烈にぶれて……?」

「いや、映像ではない! 地面だ、地面が揺れておる!!」

「現場で地震でしょうか? この影響でアリア11号とドゥウの足が鈍ります! アレクセイは予測していたのでしょうか、しゃがんで衝撃に備えている! 他のキタラーは空に退避した!」

「当然の対応だが、む?」

「お! おお!! 地面が爆発した! いや、中から誰かが出てきます! これは、モーラ・グーラです! モーラ・グーラが地面からアリシュリア王国の陣地、その地形を歪めん勢いで登場しました!! 土砂と巻き込まれた多数の兵士が青空に舞う! ダイナミックな登場です!」

「彼女も絶道を極めたか。空ではなく地より這い寄る絶道とは――うむ、帰気の純度も見違えたようだ。これは面白くなって来たの!」

「はい、ここからは皆一路“自宅(ゴール)”を目指します!」

「うむ、これからは一瞬が勝負を分けるぞ、みな心せよ!」

「おっと、アレクセイが突然仕掛けました! アリア11号と、近くを飛んでいたダンボ・スチームに火の玉のようなものを放っています! しかしそれはドゥウの結界のような帰気に防がれた! そしてダンボ・スチームは空です! 高機動を生かしかわすかわす! 当たりません!」

「おお、これは連結する気だな」

「連結とは?」

「トレインしている時にあえて他のキタラーにヲリ戦術を取り、トレインに巻き込む戦法だ。……と、どうやらダンボ・スチームが乗って来たようだ。アレクセイはアリア11号とドゥウに追いすがる!」

「しかし凄い度胸ですね! 両方にケンカを売るとは」

「いや、違うのだ。アレクセイは上手く火の玉を曲折させ射線を読ませなかった。これではドゥウ達やダンボ・スチームから見れば誰が攻撃を仕掛けてきたのか分らぬ」

「おっと、しびれを切らしたのかドゥウがダンボ・スチームに透明なガラスのような刃物を飛ばしています! これは防御に用いていた結界のような帰気を利用したものでしょうか?」

「であろうな、しかしこれは……そうか、移動をアリア11号に任せているが故に全ての帰気をドゥウは妨害に回せる。だから『ハリー・マウスのジレンマ』を回避した上で夢の両手ヲリ戦術をとれるのか!」

「つまり…………ドゥウは二人を相手取って戦えるという事ですか? 両手ヲリ戦術なら片手ヲリ戦術相手にしても、実質的には二人分に匹敵する火力が出せるでしょうし」

「そうだ! しかし、よく考えたものだな。ロマンがなさ過ぎて一部のキタラーに嫌悪される事が間違いのない変則両手ヲリ戦術だが」

「アリア11号の件もありますし、公帰連以外にも色々と敵に回しましたね、ドゥウ」


・兵士

 帝国や王国では職業軍人を指して言う。個人差はひとまず置いて、標準的な兵士一人の強さを10とすると、帰気を使える段階のキタラーの強さは500以上である。しかも、全国大会決勝となれば、個々人の強さは優に3000を超えると言えるだろう。

 そして当然ながら一定以上の戦力差がある場合に、数の優位は失われる。例え羽虫が数百匹群がったところで、人間にとっては脅威にならないように、上位のキタラーの前に“軍”という単位はなんら障害にならない。

 この帰気を軍事転用する事を試み、曲がりなりにも実用化したクロードは優秀な男であるが、いかんせん、今一歩思考が足りなかった。

 帰気を覗く者は帰気に呑まれる。それはこの世界の鉄則であり、この世界が一定の平和を保っている理由なのである。


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