14. 表彰式
「さあ白熱した試合を見せました今大会もついに終わりの時がやってきました。これより表彰式です」
「ちゃっかりトリシア・ヴァレンが三位入賞というのが解せんが……まあ、やはり彼女はしたたかであるの」
「はい、全く悪びれもせずに表彰台に立っていますね。満面の笑みです!」
「良くも悪くも健闘したのは確かであるし……何故か憎めんあたりが憎らしい」
「ははは、それではブロッケンさん、気を取り直しまして優勝者の発表をお願いします!」
「うむ、そうであったな。今大会、栄えある優勝者は……」
「レイス・ストレイである!」
「決まった! 決まりました優勝者! 今大会の優勝者はレイス・ストレイ! レイス・ストレイです! 表彰台に乗った彼女もさすがに目がうるんでいます。おしくも二位となったドゥウも残念そうにしながらもなきながら拍手を送る! 青春が見せる幻影でしょうか、それともレイス・ストレイが最後に突っ込んだせいでしょうか! 天幕の中にもかかわらず、さわやかな風が二人の間を吹き抜けていきます」
「それでは、公帰連会長として私ブロッケン・アームストロングが優勝トロフィーを授与する。 また二位、三位の者には表彰状と記念メダルが贈られる」
「今伝統あるこの一幕をこの目で見られる事を私は誇りに思います! 大きく輝く優勝トロフィーをレイス・ストレイが受け取る! その重みは彼女にしか感じられない勝利の重さです!!」
「続いてメダルであるな。二位ドゥウよ。惜しかったが、お主の帰宅道は全国のキタラー達がその目に焼き付けたであろう。道中奇策とトラブルの数々ではあったが、お主の真摯なるその帰宅道を邪道と抜かす者は一人もおらぬ、胸をはれ!
……続いてトリシア・ヴァレン。我が息子を下しただけはあるの。しかし、この場において含むことなく表彰させていただこう。大義であった、そして、おめでとう!」
「彼らの姿は来年この大会に出場するキタラーや、今後キタラーを志す若者の道しるべとなるでしょう! 栄光ある彼らの姿に、“自宅”たる天幕は嬉しさのあまり涙する者が絶えません!」
「うむ、なん……ぐすっ、何度見ても泣いてしまうものだの」
「はい……私の視界も、いくばくかにじんでおります!」
「しかし、このまま泣いている訳にもいかぬ。そろそろシメに入るかの!」
「はい! それでは閉会の儀といたしまして、家主のクロード様から閉会のあいさつをいただきます!」
「うむ、クロードよ。頼んだぞ」
「諸君、グルバ帝国軍の総指揮か――いやさ、家主のクロード・フォン・グルバである! 私も帰気を研究する身として諸君らの姿に学ばせていただく事も多くあった。しかしそれを長々とここで語るのは無粋の極みであろうから、一言、この言葉を送りたい――
――大会終わったんならお前らもう帰れよ!!!」
「はい、ありがとうございました! 家に帰るまでが帰宅である、という帰宅の初心を忘れるなという素晴らしい激励ありがとうございます!」
「うむ、ここまで帰宅した諸君らならば問題はあるまいが、きちんと“自宅”から自分の家まで帰るのだぞ? 我々公帰連も多少は見守るし、けがをした者は送り届けるが、基本自分の力で帰ってもらうのだからな?」
「はい、キタラーとして当然というか、むしろご褒美ですね!」
「うむ、それでは今回の解説、アラン殿大義であった。公帰連を代表しお礼を申し上げる」
「はい、私もまだまだ帰宅の深淵を知らぬ未熟者ですが、これからは精進していく所存です! それでは、この辺りで放送も終わらせていただきます! 実況はこの私、アラン・スミス。解説は公帰連会長ブロッケン・アームストロングさんでお送りしました!」




