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10. 二人目の脱落者、一つの決着

「アレクセイの奇策! トレインの連結によって乱戦の様相を呈してきた四人! 一方でレイス・ストレイとモーラ・グーラはストイックに帰宅をしていますねブロッケンさん」

「うむ、両者はヲリ戦術のある意味で対極に位置する、アニーキー走法を用いておるからの」

「これは二人のうちどちらかが優勝すると見ても良いかもしれません! 団子状態となった四人とは対照的に、二人はまっすぐ“自宅(ゴール)”を目指し走る! まるで砂埃か何かのように、巻き込まれた兵士たちが吹き飛んで行きます!」

「ふむ、確かにあの二人に――!!」

「おっとどうした事か! モーラ・グーラが突然止まった!! 止まりました! これを好機と見たか兵士たちが殺到します!」

「まずいの、これは……やはり奴か?」

「どうやらそのようです。光の尾を引くあざとい演出と、これ以上ない悪辣なタイミングは――」

「トリシア・ヴァレン!」

「スマイルと同じ手口でしょう! トリシア・ヴァレンが、その矢でモーラ・グーラを気絶させたようです!」

「こう兵士が多くては、モーラ・グーラもトリシア・ヴァレンの接近に気づく事が出来なかったのであろうな。元より隠密性に長けた種族である」

「しかしこれはまずい! モーラ・グーラに煮え湯を飲まされたつづけた兵士が好機と見たか! モーラ・グーラを刺し殺さんと槍を振り上げる!」

「ええい、映像班でも間に合わぬか、やむを得んここは私が介入す――!」

「!! これは意外です! トリシア・ヴァレンの奇襲を受け気絶したモーラ・グーラをレイス・ストレイが助けた! 周囲にいた兵士は彼女に槍を向けるどころか、着地の衝撃で意識を刈り取られる!! 普段の彼女も行動が凄まじいがこの表情! 彼女の背後に幽鬼が見えます! そしてトリシア・ヴァレンと対峙する!」

「そういう帰気もあるというが、これはもはや気迫であるな。レイス・ストレイはモーラ・グーラに同性のキタラーとして期待していたようであるし、お互いにアニーキー走法を用いるライバルでもあった。そのモーラ・グーラを、卑怯な片手ヲリ戦術で下したとあらば……」

「帰宅道を曲げてでもトリシア・ヴァレンを撃つと?」

「分からぬ……繋げ、音声班!! ついでにモーラ・グーラを保護せよ救護班!」


『貴女がやったの?』

『うししし、そうでし! それがどうしたでし!』

『……変な話し方ね』

『余計なお世話でし! ……それで、どうするでし?』

『何が?』

『恨めしいでしか? 妬ましいでしか? 彼女を脱落させたこの私が!』

『別に、彼女が未熟だっただけよ』

『ししし、嘘はやめるでし。それならどうして彼女を助けたでし?』

『そんなの、決まってるわ』

『?』

『それが私の帰宅道だからよ。そしてそれは今も変わらない。トリシア・ヴァレンといったかしら? あなたこそ安っぽい挑発はやめにしたら? 貴女は私のアニーキー走法を恐れている。 そうでなければ、私に話しかける意味なんてないでしょ?』

『!?』

『そして、アニーキー走法は背中で語るものよ。見ていなさい、彼女へのせめてもの手向けに私はアニーキー走法で直帰する。そして私の背中を見たが最後、誰も私に追いつけはしない!』


「……然り。アニーキー走法とは元来そういうものだ。だが、それ以上に冷静な精神力をこそ、私は評価したい」

「はい! 安易に片手ヲリには落ちない! 流石はレイス・ストレイといったところでしょうか!」

「そうであるな。元より、初めて用いたであろう絶道を御す彼女にあのような挑発は無意味であったな。トリシア・ヴァレンはもはや負けたも同然だ。小回りの利く彼女は帰宅戦でこそレイス・ストレイに勝るが、純粋な帰宅速度ではアニーキー走法には勝てない」

「おっと! 苦し紛れに放った矢がレイス・ストレイを襲います! しかし……!」

「跳ね返したの。絶道の応用か」

「どういう事でしょう?」

「本来、かの絶道は足の裏一点に帰気を集約して放つ事によって加速を得ている。それと同じ原理で矢が着弾する瞬間、帰気を放つ事で矢を跳ね返したのだ。恐るべき帰気コントロール能力である」

「そして走り抜けるレイス・ストレイに、やはりトリシア・ヴァレンは追いつけない! ぐんぐん離されていきます!」

「ハリー・マウスのジレンマがある以上、アニーキー走法はある意味片手ヲリの天敵である。精神力でも実力でもレイス・ストレイに軍配が上がったといえよう。勝負は、決したの」


・背中で語る

 アニーキー走法の極意。元はヲリ戦法を好んだアルト・ウォーリアーの言。彼はストレイト・アニーキーについて「彼の背中を見た時点で、全てのキタラーは己の敗北を悟る」とコメントした。それが広まった結果、アニーキー走法は硬派な帰宅戦術として、多くのキタラーに受け入れられたのだ。


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