第一話「黒い少女と白い少年」
初投稿です。
放課後、夕陽が沈む頃、教室に一人の少女がいた。
「ふぅ、やっと日誌書き終えた〜!」
少女の名は黒木 凛小学六年生のロングの黒髪が似合う大人しい性格な少女だ。凛は職員室に日誌を届けに行った。
「失礼します。日誌を届けにきました」
凛が職員室に入り担任の机に向かう間、周りがざわめいた。
「今晩わ凛ちゃん、偉いね居残りで書いていたの?」
「この前のテスト良かったよ。凛ちゃんだけだよ百点は、頑張ったね〜」
凛は容姿が良く、おまけに賢い、周りの教師に人気があった。特に男の教師に。
凛は、聞こえていたがあえて返事はしなかった。返事をしたら相手からの一方的な会話が止まらないからだ。凛が向かった机には一人の男が寝ていた。
「はぁ〜…」
凛はため息をして、男の頭を日誌で叩いた。
「ん…」
男の名は金田 進少し痩せ気味な顔つきでいつも眠たそうな顔をしている
「何か用…?」
金田は目をこすりながら凛を見た。
「何って日誌ですよ。日誌!」
少し膨れっ面で金田の胸に日誌を突き出した
「おぉ、日誌か…確かに受け取った。気をつけて帰れよ」
金田はそう言うとまた寝た。
「家まで送ってくれないんですか?」
凛がそう言うと
「あと三十分…」
もうすでに夢の中のようだ。凛は呆れて職員室を出た。時計を見たらすでに七時をまわっていた。
「はぁ〜…荷物取りにいかなきゃ」
凛は階段を上がり廊下を渡ろうとした時足を止めた。
(第二校舎の幽霊…本当にいるのかな?)
凛の通うこの鈴ノ森学校には夜の第二校舎に赤い服の女の子が突然現れ遊び相手を探していると言う噂が流れていた。しかも丁度今の時間に見たと言う証言があった。凛の教室は一番奥なのでかなりの距離がある。
(すぐに取りに行ってダッシュで帰れば大丈夫…!)
凛はすごい勢いで教室に入りランドセルを手に取った。そのまま帰ろうとしたらランドセルの中身が床に散らかった。
(嘘でしょ?!)
凛は今にも泣きそうな顔でランドセルに詰め込んだその時
ピシャッ
いきなりドアが閉まった。そしてドアの所には女の子が立っていた。
「遊ぼ…いいでしょ…?」
「い…いや…」
凛は唇を震えさせながら首を横に振った。するといきなり女の子の周りから火が噴き出してきた。
「何で!何で遊んでくれないの!」
火に包まれた女の子その姿は噂の赤い服の女の子そのものだった。そして女の子は凛に近づいてきた。
「誰か助けて…!」
女の子の手は凛の首を締めようとしていた。しかしいきなり女の子の動きが止まった。
「ちっ…面倒なのが来た…」
そう言うと女の子は消えて行った。凛は消えたのが分かった瞬間走った。荷物の事など頭から消えていた。廊下を右に曲がった瞬間誰かとぶつかった。凛は意識が朦朧とする中必死にその人を見た。
(白髪の男の子…?)
凛はそのまま気を失った。
「ん…」
凛が目を開けると天井があった。そしてフカフカの毛布があった。
(保健室かな?)
凛は体を起こし辺りを見回した。そして学校の保健室じゃないことに気が付いた。
(どこだろう?っていうか何してたんだっけ?)
何処か懐かしい雰囲気を漂わせる家具や置物がいっぱい置いてあった。奥の部屋から微かにコーヒーの匂いがしてくる。
(誰かいるのかな?ちゃんとお礼言わなきゃ…)
凛が毛布を剥ぐと驚いた。
(Yシャツ一枚?何で?下はパンツしかない…まさか変態に拾われた!?)
その時奥の部屋から物音がした。
(ヤバイ、起きてるのがばれたら何をされるか分からない。でも隙を見て逃げなきゃ…何か無いの…あっ!)
凛は近くにあったガラスの人形を手にして毛布の中に入った。
(これで油断した所狙って逃げなきゃ…)
ガチャ
誰かが凛のいる部屋に入ってきた。凛は毛布の隙間から様子を伺った。奥のドア付近に居るのが分かった。
(良し!相手の位置は把握出来た。後は近づいた所をこれで…!)
凛はギュッとガラスの人形を握った。まだドア付近に居るのが分かる。しかし急に目の前が真っ暗になり毛布が剥がされた。
そこには白髪の少年が立っていた。身長からして凛と同じ年齢くらいだ。凛はキョトンとしてその場で固まった。
「何してんの?………あっ」
少年はそう言って顔が赤くなった。凛は我に帰り状況が分かった。その瞬間
「イヤーーーーーー!!」
凛は叫びながら手に持っていた人形で必死に少年を叩き続けた。
「はぁ…はぁ…はぁ……はっ!?ヤバイやり過ぎた!」
少年はピクリとも動かない。凛は急いでベッドで寝かせた。
しばらくして少年が目を覚ました。
「ここは?」
凛は目を覚ましたのが分かってホッとした。
「あなたの家ですよ。急に倒れてびっくりしたんですから!」
「そうなの?誰かに殴られた記憶が…」
「そっそれは夢なんじゃないですかっ?」
「そうかな…頭がズキズキする…」
(何とか説得出来た。でもすごい罪悪感が…本当に申し訳ないです…)
「ていうか何で私はここに居るんですか?」
その言葉を聞いた少年は驚いた。
「何にも覚えてないの?」
「はい…気が付いたらここで寝ていたんです」
「…まぁ立ち話も何だから向こうの部屋に来て」
そう言って少年は向こうの部屋へ案内した。
凛が椅子に座ったらコーヒーが出された。
「いただきます…」
勢いよく飲んだ凛だが
(苦っ!)
気を紛らわすため辺りを見回した。やはり向こうの部屋と同じで懐かしい雰囲気のある部屋だ。少年がタンスから服を出し凛に渡した
「その格好だと話しづらいから…」
「誰がこんな格好にしたんですかっ!?」
凛がそう言うと、少年は少し焦りながら
「そっちからぶつかって来たんじゃないか!
」
「えっ…?」
「君が今日夕方くらいに階段付近でぶつかって来たんだろ」
凛はそう言われると黙り込んだ。
(今日の夕方?確か日誌を起きに行って…あれ?何してたんだっけ、ますます分からない)
「もしかして思い出せないの?」
「はい…」
少年は急に表情を変えた。
「君、記憶抜かれたんだね。僕とぶつかる前に何か無かった?例えばあの学校って噂があるよね?赤い服の女の子の話で何かあったとか」
(何か?んー…赤い服?………あっ!)
「教室に行く前にその話を思い出したから急いでランドセルを取りに行ったんです。そして中身が全部散らかって、拾っていたら扉が急に閉まりました!それから…」
「それから?」
「誰かいたような、いなかったような…すみません思い出せないです」
「そこまで聞けたら大丈夫だよ。君が出会ったのは赤い服の女の子だ」
「何でそんなことが分かるんですか?」
「何でって…仕事の内容だからね」
「仕事…?失礼ですが何の仕事してるんですか?」
「魔法探偵!」
凛は驚いた。
「ぷっ…そうなんですか」
(魔法って何言ってんのこの人、子供にも程がある、呆れた…もう帰ろう)
「すみません、今日塾なので帰りますね」
「そうですか…じゃあ名前だけ教えてください」
「黒木凛です。……あなたは?」
「僕ですか?僕は白神 仁です。凛さん?いきなりですがあなたこのままじゃ死にますよ?」
「はぁ?何言ってんですか!?不謹慎にも程があります!もう帰りますから、服返してください!」
「……分かった。少し待ってて」
そう言って仁は別の部屋に行き凛の服を持ってきた。
「…これを見ても驚かないでね?」
「?」
凛が服を拡げたら肩の部分が黒くなっていた。そしてその部分を触ると手に何かついた。
「灰?」
「今日は今着てる服貸してあげるからもう帰っていいよ。……帰れたらね」
「…どういう意味ですか?」
「もう、薄々気付いてるんじゃないかな、自分の家が分からないのが」
「そっそれは家の中だからです!外に出たらすぐに帰れます」
凛は急いで外に出た。目の前に学校があった。急いで帰ろうとしたが足が止まった。
(下校の道が思い出せない…)
「これで分かってくれたかな?家に帰れないでしょ?」
「何で……?」
凛の顔から物凄い量の汗が出てきた。
「前にも言ったように君は記憶を抜かれたんだ、その記憶は今抜いた奴が使っている」
「それじゃあ家の道も…」
「そいつが使っている」
「そんな…何のために?」
仁は少しためらったが、すぐに答えた。
「それは捕食するためさ、君を殺さずに記憶だけを抜いた理由は、君一人を食べるよりも家族の方が人数が多いからだよ」
「そんな…今、家にはお父さんとお母さんと弟がいるんです!助ける方法は無いんですか!?」
「あるよ…一つだけ」
凛は少し表情が和らいだ
「何ですか!?」
「今の記憶の持ち主に返してもらうか、殺して奪い取る」
「えっ…」
凛は仁から目線をそらした。
(あんな奴が素直に返してくれるか分からない、もし返してもらえなければ殺さなければならないなんて…でもやるしかない!)
凛は仁の方に目を向けた、仁は真剣な眼差しで凛を見つめていた。
「私やります!例えどんなことが起こっても後悔しません!」
凛がそう言うと、仁は微笑んだ。
「分かった。取り戻そうか!」
凛たちは学校へと向かった。