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昇天~ゴッホ「星月夜」より

挿絵(By みてみん)

De sterrennacht 星月夜ほしづきよ 1889年

Vincent Willem van Gogh フィンセント・ファン・ゴッホ

(著作権フリーの画像を掲載しています)


─────────────────────────



病室の窓からは

街並みが見下ろせた


波打つ屋根は 広がる海原

彼方に

東京スカイツリーだけが

地上と空を結んで立っている


「すごくいい景色だよ」

話しかけても

ベッドに横たわる古びた体は

バグを起こして繰り返す


どこ?

なぜ?

かえる


迫る死を認めず

最後まで抗うのが正しいのか

苦痛を経て ようやく

安寧が訪れるのが定石なのか


私は

枯れてゆく花を見たことがなかったのだ

果てる蝋燭(ろうそく)の炎も

波に吞み込まれ 崩れ去る砂の城も


なおる?


治るわけないだろう

誰も真実を口にしない病室で

一人だけ 生きようと闘う姿は

やはりよくある光景なのだろうか


ただ昇って行け

あのツリーに沿って

空へ


瞬く星と月は

もはや光を失っている瞳に

どう映っているのだろう



─────────────────────────



「ポスト印象派」



フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)

『星月夜』ニューヨーク近代美術館(MoMA)収蔵


「ポスト印象派」の名作として高く評価されています。


見たものをどう感じたか。

光の変化は?

空気感を捉えろ。

瞬間的な印象を描くんだ。

それが、印象派。


その技法を継承しつつ、批判的に発展していったのが、この「ポスト印象派」。


じゃあさ、それを見て、自分は何を感じたの?

それを表現するんだ。

感情を。思想を。

描くべきは、自分の「内なる世界」なんだ。


そうすると、象徴的な表現にも傾いていく。

この「星月夜」も、ちょっと抽象画みたい。


結局、ポスト印象派は、フォーヴィスム、キュビスム、表現主義などに繋がっていく。

20世紀の前衛芸術の礎となったわけです。



ゴッホは精神的な苦悩を抱えていたことで知られています。

画家としても、ぜんぜん評価されなかった。

生前に売れた絵は、たった一枚だけ。


精神療養中だった1889年に制作されたのが、この「星月夜」。

フランスのサン・ポール療養院に入院し、そこから見える風景にインスピレーションを得て描いたと言われています。


渦巻く夜空は、ゴッホの葛藤や感情の嵐を。

輝く星々と月は、天上への憧れ。

静かに眠る屋根の下には、穏やかに家族と暮らす人々が眠っている。

だけど、自分はこの病室で、こんなにも孤独だ。


巨大な糸杉の木が、この世界に生えている。

広がる枝が、あまねく天上へと伸びている。


哀悼を表し、墓地に植えられる木よ。

死に一番近い場所で、人々を見下ろす木よ。


この私も、苦しみの無い天界へと橋渡ししてもらえるのだろうか……。



「星月夜」に描かれた、ゴッホの感情。思想。

何が正解なのかは、本人にしか分かりません。


でも、死を含めた自分自身の「内なる世界」。

それを真正面から凝視し、全てを描こうとする画家の気迫を感じるのです。

また毎週土曜日に投稿していきます。

どうぞよろしくお願い致します!

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