表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/51

文化ヴァンパイアに俺はなる!そして海に沈むかつての上司。

第4階層、夕陽に沈む...君のことは忘れない。一同、敬礼!

 第4階層は廃村に到着した。もう想像上の燃料計は残り25%を切っている。ここで奴らを仕留めても帰れない。ここで朽ちて永遠を生きるしかなくなる。ちなみに朽ちたヴァンパイアが復活するためにどうすれば良いのか彼は知らない。朽ちれば動けない.動けないので吸血できない。善意の第3者が鮮血を流し込んでくれれば復活するのだが、彼はそれを知らない。それに知っていたとしても善意の第3者を手配できない。


 一方、俺たちは望遠鏡で状況を察知していた。無防備に砂浜に佇んでいる。周りには何も遮るものがない。ここから矢の雨を降らせてやろうか。それとも武器を取って2対1の有利な白兵戦に持ち込むか。相手は丸腰、こちらには鋤や鍬など百姓一揆で使う武器がたくさんある。待てよ、あいつはこのままだと日干しになるんじゃないか?町からここまで歩くとエネルギー残量は30%以下だろう。しかも町を出発するときに満タンだとは考えにくい。あいつはいまカツカツの生活のはずだ。俺たちは焼き魚を囓りながら作戦を練った。


「ねえ、フレッセン、直接殴ったり蹴ったりするのはちょっと抵抗があるな。いちおう顔見知りだし、私、セクハラは受けたけど殴られたことないし。」


「俺はあるな。グーじゃなくてパーだったけど。まあ確かに暴力はかっこ悪い。もっとエレガントに始末を付けたい。」


「だったらこうしようよ。こっちは2人いるから、上手いこと連携を取ってやつを拘束するの。拘束したらエネルギーが空っぽになるのを待って海に捨てる。」


「お、おお、なんだか殴るよりエグいけど、ライツがそうしたいならそれで良いぜ。」


「じゃあ決まりね。あんたが囮になってやつに追いかけさせる。私は罠を張ってイオちゃんと協力してあいつをグルグル巻きにする。」


「だれだ、そのイオちゃんって?」


「ロバの雄よ、イーオーって鳴くから。ロバの雌はヒンちゃん、ヒヒーンって鳴くから。」


「良く区別が付くな。」


「愛情かしらね。」



 作戦開始だ。やつは警戒していたが、俺が手を振って声をかけたらすごい剣幕で走って近づいて来た。俺は間合いを取りながら後方へ逃げた。横の物陰に隠れて罠を張っているライツに目配せしたら,彼女は指でOKマークを示した。俺は最後の煽りを入れた。「俺が怖いのか?かかってこいよ!」


 奴は猛然と迫ってきた。そして罠のロープに足を取られて転んだ。ロープの一端はライツ、もう一端はイオちゃんだ。ロバの走るスピードは人間の倍近く。ライツの走るスピードもふつうの人間の2割増しだ。第4階層はあっという間にロープでグルグル巻きになった。


「さーて、これでお終いっと。廃屋の柱に縛り付けておきましょう。」


「腹が減ったら言ってくれよな。焼き魚食わせてやるからよ。」う、俺はなんて性格が悪いんだ!


「ねえ、フレッセン、こいつを海に沈めるために筏を作りましょう。浜辺からだと沈められない。」ライツは徹底的だ。頼れる女だ。嫌われないように気をつけよう。


 夕方近くになって水平線に太陽が沈みそうだ。奴にとっては地上で見る最後の夕陽になる。俺たちは筏を漕ぎ出した。浜辺から100メートルの沖合で、俺たちはロープに岩を結びつけられた第4階層を海に沈めた。「運が良ければ魚の血を吸えるかもだぜ!」と声をかけながら。



 平和な日常が戻った。俺たちは前回の買い物で買い忘れたものを買いに,再び町へ向かった。俺はイオちゃん、ライツはヒンちゃんにまたがって。途中の森で、夢スパイス亭のためにスパイスマンゴーを補給した。ライツに尋ねたら、不思議なことに収穫した分が復活しているようだとのこと。まあ数が多いのではっきり確認はできないのだが。


挿絵(By みてみん)


 夢スパイス亭にスパイスマンゴーを納品したあと、俺たちはユニーク呂へ行き、下着と普段着を見繕って買った。これで洗濯中に裸で過ごす必要がなくなった。ちなみにライツは、俺の前で裸になることに1ミリも羞恥心を感じないようだ。海に潜るときは最初から裸だったし。まあ人間じゃないからそのあたりの感覚は違うのだろう。俺?ふつうに恥ずかしいよ。でも手で隠すのもかっこ悪いし、できるだけ角度で見えないように工夫はしているが、そのせいで動きが少しキモくなっているという自覚はある。



 次に俺たちが向かったのは、スーパー・ヨコヅナだ。今回の買い出しの最大の目的は、食生活の大幅な改善だ。今まで俺たちには料理の概念が乏しかった。カレーはおろかおにぎりも作れない。ただ切って焼いたり煮たりするだけでは文明人とは呼べない。豊富な食材と豊富な調理法が揃って初めて文明人の食卓だ。俺たちは文明ヴァンパイアになる。まずは肉だ。牛、豚、鳥、全部買う。次に野菜だ。あとでわからなくならないようにメモしながら買う。キャベツ、タマネギ、人参、ブロッコリー...、種類が多いので今回はこれで打ち止めだ。



 最後は書店だ。ここは料理本を買いに来た。ジャンルが違うのを5冊買った。これでもう怖いものはない。次に興味を引いたのは、ヴァンパイア関連のファンタジー小説だ。単純に読んで面白いだけではなく、対ヴァンパイア戦のヒントが掴めるかも知れない。これで本が揃ったので、カフェで作戦会議だ。料理本を見て、調味料など必要になるものを買い足すことにしよう。俺たちは紅茶の他にケーキを注文した。こういうスイーツも文化の産物だ。実にエレガントだ。そして初めて口にしたケーキは....マーベラス!思わず横文字が出るほど衝撃的に美味かった。旨さ以外の要素が何もないほど味覚を甘やかすレシピの魔法。いかん、わけのわからんポエム系の食レポみたいなことを言ってしまった。



 カフェを出て,俺たちはヨコヅナで必要な調味料を大量に買い足した。調味料の大人買いだ。なにしろ文化ヴァンパイアだからな。特にニンニクに興味が引かれたので、ありったけ買ってやった。


食品には賞味期限があるということをフレッセンとライツは知っているのかしら?あ、読者の皆さん、何か感想でも呟いてもらえると,作者は喜びますよ。気に入ったらお友だちにも勧めてください。1日のPVが100未満なので、今なら古参になれますよ、って。いや、アイドルじゃないから「古参」とか意味ないです、はい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ