表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/51

DIYショップとロバと風呂

最下層だったのにだんだん充実してきましたね。生活を充実させるとき、やはり女の力は頼りになります。


 夢スパイス亭を出た俺たちは、まず変装を完璧にするためメガネとウィッグを買った。スパイスマンゴーの代金で財布は重い。次に俺たちが向かったのは、生活改善のための道具を揃えるDIYショップだ。廃村なので廃材はたくさんある。俺たちはのこぎりやトンカチなど大工道具、ペンチ、ニッパー、ドライバーなど工作道具、そしてキッチンを充実させるため、食器、カトラリー、鍋やフライパンも買った。


 風呂はどうするか?俺はショップの店員に相談した。「こんど企画で島のサバイバルするんだけど、風呂は作れませんかね?はい、ドラム缶はないんですよ。」何の「企画」かわからないが、とりあえず勢いで設定を成立させた。「風呂ですか?ならば風呂釜を買って行かれると良いと思いますよ。木材で湯船を作って、それに設置して薪を焚けば風呂になります。こちらのDIY本、うちの店で作ったのですが、風呂の設計図も入っていますよ。こちらもお求めになりますか?ありがとうございます。」


 

 第4階層は安堵の息を継いでいた。あの関西のヤミ金のような第3階層にようやく上納することができたからである。配下の3人が餌を持ってきてくれたので助かった。3人が持ってきたのは小さな老婆や子どもばかりだったが、第4階層は叱責しなかった。むしろ感謝し労った。そして、できるだけ遠慮がちに吸血して下僕に多めに残してやった。彼は気づいたのだ。下僕あっての自分だと。下僕がいなくなったら野垂れ死にするしかない。いやアンデッドだから死にはしない。野垂れるだけである。なんだ「野垂れる」って?まあともかく、第5階層がいなくなったら、にっちもさっちもいかなくなって弱り果てて動けなくなるだろう。なので、離反されないよう、できるだけ下手に出るしかないのである。



 俺たちはDIY屋に併設してあるカフェでDIY本を読んで、まだ買いそろえるべき品がないかチェックした。防水布、鉄パイプ...、なんだ、これは?鋤と鍬、シャベル、ツルハシ。そうか、土仕事もしたほうが良いな。畑を作って野菜を植えようか。ならば種も必要だ。収穫が楽しみだな。おっと、水を撒く漏斗だ。ファンネルだ。うーむ、なぜか遠隔武器が欲しいという気持ちが急に芽生えたぞ。第4階層が攻めてきたときに迎え撃つ武器、これは男の夢だな。「こんなこともあろうかと!」と言ってみたい。


「なあ、ライツ、第4階層が海まで攻めてきたときのために何か武器が欲しいんだが。」


「それならスポーツ用品店に行けば弓とか木刀とかフェンシングの剣が売ってるよ。」



 スポーツ用品店で弓と矢、木刀とフェンシングのサーブルを買った。廃村に戻ったら練習しよう。あと、釣具店で竿とリールと本格的な釣り糸と針、そして海に潜った時用のモリと網も買った。さてと、こんなに買ったら持ち運べないな。馬車は森を通り抜けられないし、そうだ、ロバを買おう。ペットがいる生活は心が豊かになる。まあ、落ち着いたらもっと動物を増やそう。


 俺たちは大量の荷物を二頭のロバに乗せて町を出た。廃村に着くのが楽しみだ.途中の森で少しスパイスマンゴーを採っていこう。ひょっとしたら他の果物も見つかるかも知れない。豊かな暮らし、初めての経験だ。精霊さんやセレナさんたちとの出会いに感謝だな。


 廃村に戻った俺たちは、何はともあれ風呂の建設に取りかかった。廃材はたくさんある。木材を切り大きさを合わせて釘でつなぐ。木の板がだんだん大きな木の箱に変わって行く。どうせならと、2X3メートルの大きな湯船にした。箱の内部には防水布を貼って水が漏れないようにする。一カ所に鉄パイプを刺し込んで排水栓を作った。これで買ってきた風呂釜を設置すれば露天風呂のできあがりだ。問題は給水だな。井戸から汲み上げるとなると、大きめに作ったことが徒になる。近くに川があれば良いのだが。ロバに乗って探索に行くか。まだこの付近の探索が済んでいないし。


 体調も戻ったし上納も済ませた第4階層は、今度こそ本格的に追跡を再開しようとしていた。3人の下僕からの上方は、市場で黄色い果実を売っていたということだけ。そしてようやく捕まえて話を聞くことができた住民が語った、これまで食べたことがないがこの上なく美味しかったという言葉。困った。「美味しい」ということがわからない。まあ良い。果実だな。果実はどこから持ってきた?この界隈で果実が採れる場所というと森しか思いつかない。森で果実を捜してみよう。何か手がかりが掴めるかも知れない。



 ロバで付近を散策した俺たちは、たくさんのものを発見した。まず、風呂に水を供給する小川だ。ただし1kmほど離れた場所にあるので、板で水路を作らなければならない。まあ2人でボチボチ作ればそのうち完成するだろう。次に見つけたのは、さまざまな木の実や果物だ。これらは生で食べる以外の使い方もあるのだろうけれど、おいおい開拓して行こう。昆虫や獣、空を飛ぶ鳥など、食べ物になりそうな生物もたくさんいた。そのうち狩りに来よう。


 森の中を調査する第4階層は、落ちている果物を見つけた。黄色い。どこから落ちたのか?樹上からか。しかし第4階層は木に登れなかった。まあ良い。ここを通ったことは確かだ。この先に進めば何かわかるだろう。夕闇が近づいてだんだん森の中は暗くなってきた。しかしヴァンパイアなのでそれはむしろ好都合だった。ヴァンパイアは、昼と比べて夜のほうが燃費が良い。つまり消費エネルギーが少ない。


 しかし最後の血液摂取からもう半日が経過している。エネルギーの計量メーターがあるとすれば、針はもう真ん中を過ぎている。この先に餌がなかったらどうしよう?第4階層は不安になった。人間の生き血以外、栄養分として何も受け付けないということがこんなに不便だとは。始祖はかつて、ヴァンパイアは食物連鎖の頂点に君臨すると語った。それはヴァンパイアのピラミッドの頂点に君臨しているから言える言葉だ、と現在の第4階層は反発した。


 村に戻った俺たちは、かねてよりの懸案だったトイレ作りに着手した。これまでは後始末が楽なように、波打ち際で済ませていた。終わったら波が洗い流してくれるからである。しかし、広々と広がる大海原を前に堂々と尻を出すのはなんとも気まずい。これは羞恥心と言うより動物の本能かも知れない。なぜなら排尿や排便の態勢は、外敵に対して最も無防備な状態だからだ。なので俺たちは、波打ち際から3メートルの場所まで橋を架け、その先に小さな窓付きの小屋を建てた。これで、満ち潮のとき小屋が洗浄されて気持ちよく使える。


第4階層は廃村まで押し寄せるのでしょうか?ところでガンダムでお馴染みの「ファンネル(Funnel)」は漏斗という意味なんですね。キュベレイのサイコミュ兵器の形が漏斗に似ているからだそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ