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ラストバトル、ユラの最後...

ユラの最後..って、どうなるの?


 ラストバトルの前に、海に沈めたヴァンパイアの処置を考えよう。処置と言っても、血の池に落として魚の餌にする選択肢はない。みんなつい先日までは普通の人間だったのだ。不死の呪いから解放してやるしかない。いま海に沈んでいるのはランクダウンした第2階層の関西ヤクザ1体だ。あんまり喋りたくない。誰か代わってくれないかな?関西ヤクザが心を開く相手...「龍が如く」だとどんなタイプかな?


「私に任せて♡」とエラが手を挙げた。ですよねー、ヤクザと言えばスナック。お任せします。


「はい、いらっしゃい。塩水いっぱい飲んだの?」


「うっさいわ、我ぇ、なれなれしくすんな!」


「あらあら、荒れてるわね。溜まってるのかしら?ちょっと吸って楽にしてあげるわね。」


「良かったっすね、お客さん。ママに吸ってもらえるなんて珍しいっすよ。」ヴィガーが笑ってない目の笑顔で声を掛けた。


「って、おい、力が抜けるやないか!」


「無駄な力は放出して楽になったほうが良いのよ。何か飲む?」


「若い姉ちゃんの生き血...」


「あらあら、ダメよ、ヴァンパイアみたいなこと言っちゃ。」


「そうですぜ、旦那、スナックに来たら酒を飲まなきゃ。」ヴィガーが少し圧を掛けた。


「昔は飲んでたんだがな...」


「ヴィガーちゃん、サッキス(Suckiss)をお願い。」


「かしこまりました。サキュバスのキス、サッキス入ります!」


 関西ヤクザの前にピンクのカクテルが出された。


「俺、血しか飲めない...」とヤクザが言いかけたとき、エラの瞳が怪しく輝いた。この村に来てから封印していたサキュバスの固有スキル、ピンク・テンプテーションが発動した。


「いただきます。」関西ヤクザはピンクのカクテルを飲み干した。そして完全にエラの虜になった。


挿絵(By みてみん)


「ママ、綺麗やな...俺、足洗ってカタギになる。せやな、工務店やるわ。」


「あら、良いわね。真面目な人、好きよ、うふふ♡」


「事業が軌道に乗ったら...その...」


「はいはい、いつでも遊びに来てね♡」


「お、おう...来させてもらうで...いつでも...」


 元ヤクザの工務店、絶対ブラックなやつだろうが、たぶん厳しい納期でもきっちり守る便利な会社になりそうだ。労務環境が村の倫理を逸脱するようなら、たぶん法務班が動いてくれる。まあ、たぶんゴタゴタにはならないだろう。なにせエラの一言ですべて片が付く男になったのだから。


さて、始祖との決戦だ。もうグズグズしてはいられない。シュロマンスと場所まで告げられたのだ。こちらから攻めなければ、向こうは長距離破壊兵器のような超強力魔法をぶっ放す可能性もある。なにせ敵が本拠地としたのは、元魔法学校のシュロマンスだ。マナが充満しているし、古い魔道書もたくさんある。


「みんな、聞いてくれ!」俺は呼びかけた。「ダークビューティが奪われて、敵は3人の花嫁を揃えた。彼女が完全に復活する前にこちらから攻め込んで殲滅する。3人の花嫁は、たしかに最近まで人間だった第2階層だが、花嫁として始祖に絶対の絆を築いている。魔法も使う。ふつうの第2階層と思ってはいけない。だが...」俺は青い島から持ち帰った魔道具を出した。「俺たちにはこれがある。魔法を完全に封じる青いエーテルが詰まった魔道具。これさえあれば恐れることはない。最後の戦いだ。悔いのないよう全力で戦おう!」


 集まった全員から鬨の声が上がった。士気は100%だ。討伐隊のメンバーは、ライツとジュース...


挿絵(By みてみん)


ツァルトは青いバラの鏃、ミルトは青い砂から鋳造した青い弾丸を装備している。スナイピングの要だ。


挿絵(By みてみん)


エラと彼女を守る2人の騎士...


挿絵(By みてみん)


魔道士3人組は、魔法が無効化されるので村で待機だ。風の魔法で飛ばしてもらう予定だった青い砂は、すべて弾丸に鋳造してもらった。救済の弾丸だ。ヴァンパイアにとっては破滅の弾丸になるが。


そして今回の作戦に欠かせないのが、ラメントダガーで始祖にとどめを刺すユラだ。


挿絵(By みてみん)


「みんな、準備はできたか?ではあまり気負わず平常心で出発しよう!」


 ユラが命を落とした温泉に着いた。もちろん入浴して英気を養う。そして読者にはサービスショットだ。


挿絵(By みてみん)


 「ラストバトル」という言葉がプロンプトに入っていたせいか、Soraの許容度が上がってこんなギリギリ画像を作ってくれた。気合いが入る。


 シュロマンスに到着した。マナの充満がすごい。魔道士でない素人の俺にもビンビン伝わる。こんな状況で魔法をぶっ放された全員揃って一巻の終わりだ。俺は扉を開けると同時に魔道具を掲げた。青いエーテルが流れ出て周囲を青く染める。平穏と優しさが洞窟に満ちて行く。同時に俺たちの戦意も急激に低下した。そうだった、忘れていた。青い島や青の洞窟では戦うことができなかった。青の洞窟と同じ状態になったシュロマンスでも戦闘行為は不可能になったのではないか?ラストバトル、まさかのステイルメイトか?いや、そうはさせない。きっと突破口はあるはずだ。考えろ、俺!


 いや、とりあえず敵も攻撃ができないのだから、こうなったら先へ進むしかないだろう。突然魔法が使えない状況になって敵も慌てふためいているだろう。その様子を見てみたい。得意の軽口を叩いてみたい。軽口ぐらいしか得意技がない俺って...自分で言っておいて急に惨めな気持ちになってきた。魔道具から流れ出る青いエーテルはますます濃くなって、洞窟の壁が青くキラキラ輝いている。形も似ているし、ここはまるで青の洞窟のようだ。待てよ、青の洞窟とシュロマンスってパラレルツイン?黒魔法とネクロマンシーの本家と平和と救済の源泉、正反対の二重性。ということはシュロマンスにも悪の結晶があるのか?始祖がいるとすればそこに違いない。


「待って!」前方にフェアビューティが現れた。なんか様子が前と違う。「この青の輝きは何なの?」声も違う。ふつうの美人さんの声だ。


挿絵(By みてみん)


「これは青のエーテルです。平穏と救済の輝きです。魔法も使えません。攻撃もできません。ここは穏やかな場所になったのです。」俺は説得できるのではないかと期待しながら答えた。


「そう...なのね...私、なんだか記憶が曖昧になって...」


「あなたは始祖に噛まれてヴァンパイアになったのです。でも、その気になれば人間に戻れますよ。」


「え?始祖?...イヤ、イヤ、助けて!」女性は何か恐ろしいことを思い出したように取り乱した。エラとユラが彼女を支えて慰めた。ユラとエラのなでなでが彼女を落ち着かせた。


「俺たちの村に来れば人間に戻れますよ。ほら、あそこに浮かんでいるおじさんたちもヴァンパイアから人間に戻ろうとしているんです。」俺はヴィガーと、えーと名前聞いていなかったわ、ヤクザを指差した。


「お願い、連れて行って。」彼女はフワフワとおっさん2人に近づいた。急にモテたような気になった勘違いヤクザが「任せんしゃい、姉さん!」といって彼女の手を取った。美人さんは、ひっと言って手を引っ込めた。


「あとの2人の美人さんは?」ツァルトが冷静に尋ねた。


「1人はまだ動けないので、カルラが介抱しています。あ、まだ名乗っていませんでしたね。失礼しました。私の名はレア、傷ついている子はソニアです。」


「ではその2人も救出しましょう。」ライツが力強く言った。


美人さんの、いやレアの導きで俺たちはカルラとソニアがいる場所に到着した。カルラは一瞬警戒したが、レアの姿を認めて安心したようだ。ソニアは、救出されたときよりはずいぶんと傷が癒えているようだが、毎日うちの女たちに痛めつけられた後遺症がまだ残っているらしく、喋るのがやっとのようだった。


「カルラさん、あの、村では酷いことして悪かったわね。ごめんね。」ジュースが明るく声を掛けた。ごめんねをこんなに悪びれずに言えるのはある意味才能かも知れない。


「本当にごめんなさい!」女たちは声を揃えて謝り、深々と頭を下げた。


「いえ、良いんです。あのときは私、始祖の花嫁で邪悪の権化でしたから。恥ずかしい...」ソニアは力なく笑った。


「動けへんのならわしが担いでやろか?」にへらにへらと元ヤクザが手を出しそうになったので、エラが耳を引っ張って制止した。


「俺たち、これから奥で始祖と決着を付けてくるので、3人はここで休んでいてください。すべてが終わったらいっしょに村へ行きましょう。もし良かったら...」俺は黄色い果実で作ったグミを渡した。「もし良かったら、これ食べて待っててください。でも、無理しなくて良いですからね。」


挿絵(By みてみん)


 俺たちは最奥部の祭壇の間に到着した。始祖がいるとしたらこの中だ。おそらく祭壇の中に悪の結晶があるのだろう。俺たちは扉を蹴破った。青のエーテルですべての罠も無効化されているので何も恐れるものはない。


 いた、始祖だ。だが圧倒的なオーラは全く感じられない。拍子抜けするほど平凡で普通だ。ラスボスがこれで良いのか?


「おい、始祖!」俺は静かに声を掛けた。いや、青のエーテルの影響で静かにしか声を掛けられない。


「何でしょうか?始祖とは私のことなのですか?」


 え?何これ?ラストバトルなのにこの緊張感のなさ。ゲームだったら炎上案件、いやアニメでも、昭和のTV版エヴァンゲリオンの最終回と同じくらい炎上案件だぞ。


「そうですよ、あなたはヴァンパイアの始祖なのです。」くっそー、俺も軽口で嘲り倒すことができないじゃないか。何だこのお上品な口調は?


「そうですか。だとすればあなたたちは私を討伐に来たのですか?」


「はい、討伐しに来たのですが、討伐できそうにありません。戦意が全く湧かなくて。」


「ならばどうしましょう?どうやらここでは自ら命を絶つこともできないようなのです。」


 ユラがふわふわと降りたって始祖に近づいた。


「私を覚えていますか?」


 始祖はしばらく目を細めて思い出そうとしていたが、思い出せないようだ。


「申し訳ありません。たぶん何百年も前に知り合った方なのでしょう。思い出せません。」


「あなたは私の命を奪ったのです。眷属にしてやると嘘をついて...」


 これを聞いて始祖ははっとした。どうやらその瞬間が蘇ったようだ。


「あのときの...あなたでしたか...ごめんなさい...嘘はついていないのです...ですがあのときはヴァンパイアに成り立てで...眷属にする方法もわからず...本能の衝動に負けて噛みついてしまいました...謝って済む問題ではないのですが...本当に申し訳ない...」始祖はハラハラと涙を流しながら深々と頭を下げた。


「あなたは...あなたはどうなりたいのですか?」ユラが決然とした声で尋ねた。青のエーテルの中で出せる声ではなかった。


「私は...私は平穏の中へ滅したい...」


「ならばその望みを叶えましょう。」ユラは始祖にゆっくりと近づき冷たく微笑みながらラメントダガーをその胸に深々と刺した。


「あ...」始祖は一瞬驚いたような顔をしたが、やがて柔和な笑顔になってユラの手を取った。「ありがとう...」始祖の身体が塵になるかと思ったが、そうはならず青い輝きの中にエーテルと一体になって薄れて消えていった。そしてユラも...「ああ、これでやっと...」同じく青い輝きの中にエータルト同化して....


「待ってくれ!ユラ...」俺は涙が止まらなかった。こんな別れ方ってないだろ...


 泣き崩れた俺をライツが優しく抱きしめて支えてくれた。「これで、これですべて終わったのよ。村へ帰ろう。」


 村へ帰還した俺たちを村人はみんなで出迎えた。祝賀ムードだ。もう災厄は消えた。これからは穏やかな日常が待っている。ゆっくりと時が過ぎ、子どもが生まれ、寿命を迎えた者は穏やかな死を迎える。日々の労働をこなし、夜は酒を飲み、そして美味いものを食べる。そう、食べられるようになったことで始まったこの物語、最後は豪華な宴会で終わることにしよう。


 まず俺たち...


挿絵(By みてみん)


 エラと2人の騎士...


挿絵(By みてみん)


オリヴァー/オリヴィア兄妹とウンピ/ミナモ夫妻...


挿絵(By みてみん)


そして3人の元花嫁たち...


挿絵(By みてみん)


 他にも素敵な仲間がたくさんいるけど、ここまでにしましょう。みなさん、ごきげんよう


はい、ようやく最終回を迎えることができました。最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。しっかりした構想を立てずに気の向くまま書き進めてきたので、進行がダレてイライラさせてしまったかもしれません。お許しください。はあ、でもようやく完結できて、肩の荷が下りた気分です。また新作を書くことになるでしょう。今度は「なろう」の定番、転生ものです。これまでの作品に登場したお気に入りキャラも参戦させる予定です。またお目にかかれる日を楽しみにしております。

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