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青のエーテルと白骨死体

試練を乗り越えさらに洞窟の奥へ進みます。

 俺たちはユラの導きで先を急いだ。心なしか青い輝きが濃くなってきたようだ。植物の葉もキラキラ輝いている。そして群れをなした青い蝶が道ばたで舞っている。森の木々は蒼生の輝きを発し、道ばたを流れる小川からは月光を反射した青白い光の炎のようなものが煌めき立った。


「あった、あそこ!」


 頭上のユラが指差す先にその洞窟はあった。よし、慎重に進もう。まだ何か試練が待っているかも知れない。まあ試練と言っても。この島ではあらゆる攻撃が無効化されるのだから、痛い思いをすることはないだろう。俺たちは洞窟に入った。入り口と比べると中はかなり広く、シュロマンスと同じような構造だった。


「ダンジョンと言っても敵が出ないならね。」ジュースが軽口を叩いた。


「待って、そこ!」ツァルトが指差す先に白骨死体がいくつか転がっている。平和なはずの青い洞窟に似つかわしくない光景だ。


挿絵(By みてみん)


「なぜここで死んだのかしら?」不審そうに骸骨を調べていたライツが、「あっ、これ人間じゃない!」と声を上げた。


「人間じゃないわ。ヴァンパイアよ。見て、この牙!」


 ヴァンパイアの白骨死体は全部で4体あった。しかし、妙だ。元ヴァンパイアだからわかるが、ヴァンパイアは白骨死体にならない。滅するときは塵になって消えるし、そうでない場合は時間が経てば復活する。一体これは何だ?まあ、考えても埒があかない。無害なのなら無視して先へ進もう。


ヴァパイアの白骨死体という奇妙な光景に首を傾げつつも、俺たちは奥へ進んだ。洞窟の奥へと進むにつれて、青い輝きは一層強さを増していく。足元には、月光のように青白く煌めく小川が流れ、壁面には見たことのない文様が刻まれている。時折、頭上から水滴が落ちる音が響き、そのたびに青い輝きが揺らめいた。

「ねえ、この文様、どこかで見たことあるような…」


ライツが壁に触れながらつぶやく。その指先が触れた部分から、じんわりと青い光が広がり、文様が浮かび上がった。それは古代の文字のようにも見えたが、もちろん解読は不可能だった。。


 さらに奥へ進むと、開けた空間に出た。そこには、中央に巨大な青い結晶が鎮座しており、その周りには、先ほど見たものと同じようなヴァンパイアの白骨死体がさらに数体転がっていた。


「おかしいわね。この結晶から何かを感じる...」


挿絵(By みてみん)


ユラが結晶に近づくと、その体が青白い光に包まれた。ユラの周囲に、まるで生前の姿を再現するかのように、ヴァンパイアたちの幻影が浮かび上がる。幻影は苦しそうに身悶え、やがて白骨死体は塵となって消え去っていった。


「これは...ヴァンパイアを塵に変える力?」ジュースが驚きの声を上げる。


 ヴァンパイアたちはこの結晶を目指して進み、途中で力尽きたのだろうか?この結晶の力で不死の呪いから解放されようとしていたのだろうか?結晶の周りにも白骨死体が転がっていたということは、ただ結晶に近づいただけでは解放されなかったということか。だとすれば、ユラがトリガーとなって解放の力が発動したのだろう。


「なあ、みんな。もしヴァンパイアたちがこの結晶によって不死の呪いから解放されたがっていたのなら、俺たちでその望みを叶えてやらないか?俺たちも元はヴァンパイア、その苦しみはわかる。」俺はみんなに提案した。


「そうね、戻ってさっきの4体の白骨死体もここまで運んであげましょう。」ライツが頷いた。


挿絵(By みてみん)


 やはりそうだった。ユラが結晶に触れると、その周囲に青い光の渦のようなものが発生し、その中にヴァンパイアたちの生前の姿が幻影のように現れ、そしてそれが消えると同時に白骨死体は塵となった。ヴァンパイアたちは解放された。


「合格です。」


 青い結晶の上に泉の精が現れて、厳かな声でそう告げた。


挿絵(By みてみん)


「この洞窟を訪れる人間は少ないのですが、たまにヴァンパイアが不死の呪いから逃れようとやって来ることがありました。でも青い光は汚れた彼らの存在に壊滅的なダメージを与えます。まさに正と負、相容れない組み合わせだからです。そのため彼らは途中で倒れ、塵となることもできず、ヴァンパイアなので死することもできず、あのように惨めな姿を晒し続けなければなりませんでした。あなたたちはそれを救ったのです。それは救済というこの島の理念に適った行為です。なので、あなたたちに青のエーテルを託しましょう。その魔道具をこちらへ。」


 俺は魔法使いから受け取った魔道具を渡した。泉の精は、持っていた本を開き、その一節を読み上げたが、それは人間の耳には言葉であるとさえ判別できない不思議な音だった。その音に反応するように、結晶の青いエーテルは魔道具に吸い込まれていく。


「これでエーテルは満ちました。この魔道具は、あなたたちが必要とするときがくれば、この結晶と同じような効果を発揮するでしょう。お行きなさい。あなたたちの救済を果たすのです。」


 そう言って泉の精は幻のように消えた。


 洞窟を出て俺たちは魔法使いの家に向かった。困難なミッションが成功したことを報告するためだ。魔法使いは、まるで俺たちが来ることをわかっていたかのように、家の外で待っていた。


挿絵(By みてみん)


「無事に青のエーテルを持ち帰ることができたようですね。」魔法使いは嬉しそうに優しく微笑んだ。


「はい、おかげさまで。これで始祖の魔法も封じることができます。」


「健闘を祈っていますよ。はい、これはお土産。青い小石よ。青の結晶ほどではないけれど、少しは救済の力があるの。お守りとして身に付けると良いわ。」魔法使いは俺たちみんなに1つずつ小石を渡した。


「何から何まで本当にありがとうございました。」俺たちは深々と頭を下げた。


本業が忙しかったので、ながらく更新できずに申し訳ありませんでした。物語もそろそろ大団円ですね。

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