表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/51

青い島、人魚の幽霊、青の魔法使い

命が果てるときに青い島に行って魔法使いに看取ってもらう人魚さん、間に合わないと幽霊になってしまうのですね。ユラを連れてきて良かった。

 イカを沈めてしばらく進むと、日が落ちて暗くなってきた。眠りを必要としないユラに見張りをお願いして、俺たちは船室で寝ることになった。簡易型ではなく船室を備えた立派な船を作ってもらったのは正解だった。人間になったので、食事と睡眠の質はパフォーマンスの質に影響する。うつらうつらしていると、甲板の上のほうからユラの歌声が聞こえてきた。


「ねえ、どうしたの~?♪寂しそうよ~♪」


 ん?人魚さんと話しているのか?俺は甲板に出てみた。夜空に人魚さんたちがたくさん浮かんでいた。



挿絵(By みてみん)



浮かんでいるだけでも不思議なのだが、みんな半透明のエーテル体になっている。


「間に合わなかった~♪」人魚さんたちがコーラスで続ける。「間に合わなかった~♪」


「何に間に合わなかったの~?♪」ユラが訪ねた。


「島に着く前に死んでしまった~♪なので魔法使いのお婆さんに会えなかった~♪綺麗な真珠にしてもらえなかった~♪」


 そうか、人魚さんは命が尽きそうになると、青い島へ行って魔法使いのお婆さんに最期を看取ってもらって、死んだら綺麗な真珠にしてもらうのだった。島にたどり着く前に命が尽きると未練が残って幽霊になるのか。俺はユラに声をかけた。


「なあ、ユラ、人魚さんたちに島まで一緒に行こうって言ってくれ。」


「人魚さん~♪私たちは青い島に行く途中なのよ~♬一緒に連れて行ってあげるわ~♪」


ユラの綺麗な歌声が人魚さんたちに希望を届けた。みんな半透明の笑顔を浮かべている。


「ありがとう~♪ありがとう~♪」


人魚さんたちの幽霊が次々と甲板へ降りてきて、ユラと手を取り合って喜んでいる。俺は人魚さんたちをユラに任せ船室へ戻った。しばらく眠ると外が明るくなった。甲板に出ると前方に島がある。青い島だ。とうとう到着した。人魚さんたちの、そして俺たちの希望の島だ。



挿絵(By みてみん)



 上陸してみると、島は思ったより小さく、海岸から魔法使いの家に続く一本道があるだけだった。そこを進むとすぐに魔法使いのお婆さんの家に到着することができた。



挿絵(By みてみん)



「あらあら、たくさん来たね。かわいそうに、間に合わなかったのね。」


お婆さんとはとても呼べない、美しくて優しそうな魔法使いが人魚さんの幽霊たちを迎えた。彼女が触れると幽霊たちは次々にキラキラ輝く真珠になって宙に浮いている。全部真珠になると、魔法使いは青い球のついた杖を一振りした。すると杖から淡い光が広がり、真珠の集まりは風船のようにふわふわと海に向かって流れて行き、パラパラと海へ落ちた。綺麗な真珠になれてよかったね、人魚さん。



「で、あなたたちは何の用なの?」魔法使いは優しそうに微笑んでいる。


「教えてもらいたいことがあるのです。」緊張して敬語が安定しない。「強力な魔法を使う敵が攻めてくるのです。」


「その魔法を封じる方法を知りたいのね。」


「そうです。戦う力は見つけることができたのです。しかし戦う前に魔法で全滅させられてしまっては...」


「なるほど、無詠唱の魔法で奇襲されたら打つ手はありませんね。それが広範囲を攻撃できる魔法ならなおさらのことです。さて、どうしたものか...」魔法使いは顎を撫でながら考えている。


「俺たちにできることなら何でもします。」


「わかりました。文献を調べる必要もあるので、明日まで待っていただけますか?」


「わかりました。明日の朝また参ります。あ、そうだ、忘れるところでした。」俺は土産に持ってきた大量のスイーツを渡した。「甘いものがお好きだと聞きましたので。」


「まあ、うれしいわ!」魔法使いは少女のように目を輝かせて喜んだ。「今夜はこれを頂きながらじっくり考えることにしましょう。」



 さて、船に戻って寝るか、海岸で野営するか、それぞれに利点があるだろうが、相談の上、俺たちは陸地での野営を選んだ。不思議な青い植物や青い岩や石に囲まれて寝ると気分が上がる。ツァルトは特に喜んで、青い昆虫をたくさん採集している。それにしても、この島はなぜすべてが青いのだろう?しかも、ただ青いだけではなく、かすかに輝いているように見える。暗くなるとそれがよくわかる。島自体がほんのりと青く輝いている。安らぎの青だ。


挿絵(By みてみん)



 ミルトが青いバラを慎重に掘って鉢植えに移し替えた。そういえば最近はもっぱら銃器をぶっ放す役ばかりだったが、こいつは花言葉の吟遊詩人だった。


「青いバラの花言葉は、奇跡、不可能を可能にする、夢が叶うだよ。」花言葉の吟遊詩人が言った。


挿絵(By みてみん)


 この島の青い色に打開策の秘密が潜んでいるのではないだろうか?ぼんやりと奇跡に期待しつつ、俺たちは安らぎの夜を過ごしたのだった。


 朝が来た。俺たちは魔法使いの家に向かった。魔法使いはもう戸口に立って俺たちを待っていた。


「皆さん、おはようございます。よく眠れたようですね。」


「はい、この島が発する青い穏やかな微光に包まれると不安や焦りが消えてよく眠れます。」


「この島ではすべての悪意や不安が消えるのです。争うこともできません。」


「ということは...?」俺は捜しているものに近づいている気がした。


「そうです。皆さんが望んでいる攻撃魔法の無効化は、この島には最初から備わっています。ここではいかなる攻撃魔性も効果がありません。争うことができないのですから。」




青い島の青にはどんな秘密があるのでしょう?「青い鳥」、「青い花」、詩人たちは青に特別な意味を認めていましたな。あ、そういえばぼくも「青い水」でした。

ところで、これから一気にラストへ進みそうなのですが、実はリアルの週末に○会があるので、更新はしばらく先になります。申し訳ありませんが、しばらくお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ