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船出、取り憑き、巨大イカ

さあ、船が手に入った。なんか前世紀のRPGみたい。


 船が完成した。5人で島を目指すには十分なサイズだ。たぶん15人ぐらい乗れる。ユラが珍しそうにフワフワとマストのてっぺんまで飛んで行った。いっしょに行く気なのか?いや、行きたいなら別にかまわないけどさ。いや、いかん。狭い船の中で抱っこなでなで欲が抑えきれなくなったら最悪の地獄だ。悪いが留守番してもらおう。でも、待てよ。海図もコンパスもない船出で島を目指すとなると、上空から偵察する役目が必要になるな。ユラかエラ...ここはユラ一択だな。ライツたちはエラに対する悪感情をまだくすぶらせている。


挿絵(By みてみん)



「ユラ~!」俺は空に向かって叫んだ。「いっしょに船に乗って行かないか?」


「連れて行ってくれるの?」ユラはフワフワと降りてきて微笑んだ。


「ああ、空から周囲の状況を確認して欲しい。」


「わかったわ、フレッセン。」そう言うと俺の背後に回って絡みついてきた。ライツが不審そうな目で見ている。うう、気まずい。


挿絵(By みてみん)


「何か最近ボディタッチが増えたわね。触れるようになって嬉しいのかしら?」ライツではなくてツァルトが冷静に観察して言った。


「はい、触れるようになってうれしい...」ユラは消えるような笑顔で呟いた。


「まさか取り憑いたりしないわよね?」ライツが真顔で尋ねた。


「悪霊じゃないので取り憑いたりはしません。でも...」ユラが言葉を濁した。なんだよ、そこで言葉を濁されると気になるじゃないか!


「でも、取り憑かれに来る人がいる場合は、取り憑きが成立してしまうかも知れません。一応これでも幽霊ですから。」


「取り憑かれに行くとはどんなこと?」ライツが重ねて尋ねた。俺はいたたまれない。


「抱っこしてとか頭なでなでしてとか言って近づいてくる人のことです。」


 全員の視線が俺に注がれた。気まずさで汗が噴き出した。


「あなたはそれを受け入れるのね?」ライツは俺の能動よりユラの受動が気に入らないらしい。


「ええ、幽霊ですから...」ユラはどこ吹く風といった体で理由にならない理由を述べ、そして俺への絡まりを一段階強めた。これはもう恋人たちのバックハグだ。


「つまり幽霊は来る者拒まずということなの?」ツァルトがユラに尋ね、それからミルトを睨んだ。なんだよ、これ、エラと同じサークルクラッシャーじゃないか。こんなことなら2人とも連れてきて話をもっと複雑にすれば...良かったわけないだろ!


「そうですね、基本的にそちらから来られる場合は受け入れることになると思います。」


「それで、取り憑きが成立したらどうなるの?」ライツが語気を強めて尋ねた。


「私から離れられなくなります。それだけです。」


「それだけって...」


「まーあまあ!」俺は割って入った。「要するに俺が近づかなければ良いだけだろ?」


「できるのですか?...」ユラが俺の耳元で呟いた。ゾッとした。今のは10代の男性の「ゾッとした」ではなく、幽霊を感じてゾッとしたのだった。


「あなたから離れられなくなって、最後はどうなるのかしら?」ライツは険悪な目をして詰問した。


「もし私が消滅することになれば...そのときは一緒に...」


「ちょ...ちょっと待ってくれ!俺も死ぬってこと?それ困る。すごく困る。だからもう金輪際ユラには近づかない。距離をわきまえた友だちとして接する。」俺は文字通り命がけで宣言した。


「ぼくはツァルト一筋だから大丈夫だよ~!」ミルトが言わなく良いことを言った。


 そのときユラがフワリと上昇した。何かを感じたのか?


「前方に渦巻きがあります!回避しないと危険!」


 やばい!俺は舵を持って思い切り右に回した。面舵?取り舵?わからないときはサブモニターのAIに質問だ。はい、面舵でした。...てのんきなことを言っている場合ではない。渦巻きが近づいてくる。波が高くなる。すんでのところで渦に巻き込まれそうになったが、危機一髪で渦の外縁に逃れ出ることができた。ほっとしたのも束の間、空からユラがまた叫んだ。「海中から何か出てきます!」


 大きなイカだった。クラーケンか?ドラクエかよ!これはしかしライツとジュースのハープーンガンの良い的になる。モリが2本深々と突き刺さった。しかしイカはまだ動ける。


挿絵(By みてみん)


 やばい!このままでは船がひっくり返される。俺はマシンガンを撃ちながら焦った。そのときユラが炎の魔法を放った。


挿絵(By みてみん)


 イカは、皮膚は焼けただれたため苦しみながら海に沈んだ。ああ、今度こそほっとした。ユラ、GJ!


ユラが取り憑いちゃうの?幽霊だから仕方がないの?何かそのあたりは謎だけど、でも存在が怪しくなってもやっぱりユラが頼り。

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