弟くん養分とお姉ちゃん養分の交換、そしてエラの正体がまさかの...
コンカフェ通いがやめられないあなた...それは偽りの...
「フレッセンさん、元気ないですね?」ユラがフワフワ漂ってきた。
「そう見える?」
「はい、どうかしました?」
俺は藁にもすがる思いで現状を説明した。お姉様の館で弟くん養分にされていること。ライツがそのせいですっかり冷たくなったこと。このままでは寿司屋も出禁になりそうなこと。
「まあ、大変ですね。で、その弟くん養分ってどうやって補充するんですか?」
「頭を抱っこされてなでなでしてもらう...」
「あらあら...こうかしら?」
なに、これ?ひんやりして気持ちいい。弟くん養分と引き換えにお姉ちゃん養分がどんどん入ってくる。虜になりそう...
「私で良かったらいつでもしてあげますよ、抱っこ。」ユラは微笑んだ。慈しみの笑顔だ。これこそ本物のお姉ちゃんだ。エラじゃダメだユラだ、字面は似ているけど。
「ああ、ユラお姉ちゃん...」
俺はその夜コンカフェに行かなかった。コンカフェに行かずに寿司屋へ行った。
「へい、いらっしゃ...なんだ、フレッセンか...」ライツの顔がこわばっている。
「今夜は弟くん養分を補給しに行かなくても良いの?」
「いや、もう良いんだ。気づいちゃったんだ、俺。あれは嘘のお姉ちゃんだ。」
「そ、そうなの?」ライツは訝しげな顔で俺におしぼりを出した。
「卵握ってくれ、卵。今日の俺は卵の気分だ。生まれたばかりの卵くんだ。」
「はい、お待ち!」ジュースが卵を2貫出した。
「なんかツヤツヤして嬉しそうね?」ライツの目が尋問官のそれになった。
「ああ、偽りの悦楽から逃れ出た解放感だ。次は穴子ね。」
「きっかけは何だったのかしら?」ライツはなぜこうも鋭いのか。「逃れ出た」というところに何らかのイベントを察知した。言葉を慎重に選ばないと。
「ほ、本当の愛は何かなって考えまちて...」いかん、急に敬語になった上に噛んだ。
「ねえ、弟くんはいるかしら?」突然エラが入ってきた。
「あら、いらっしゃい、エラさん。」ライツが目だけ笑ってない笑顔で迎えた。
何なの、これ?いわゆる修羅場ってやつ?
「ねえ、弟くん、今夜はどうして来ないの?」エラはライツの存在を無視して直球を投げてきた。これは打ったほうが良いのか、それとも一球見送るか?どうしよう...助けて、ユラ姉ちゃん!
「もう行かないってよ。あれは嘘のお姉ちゃんだって。」ライツも直球で投げ返した。
「あら、じゃあ本当のお姉ちゃんに出会ったのかしら?」く、エラも鋭いじゃないか。「嘘のお姉ちゃん」の対極に「本当のお姉ちゃん」がいるに違いないという論理の整合性。俺の出口はどこにある?
「お姉ちゃんじゃないけど、私が全部引き受けるわ。」ライツはどこまでも正義だ。眩しい、眩しすぎるぜ。ここは全部引き受けてもらって、それを俺の出口にしよう。
「お願いします,ライツさん、俺のすべてを引き受けてください。」
ここでエラの表情が一変した。表情だけでなく纏うオーラが一変した。店内が微妙にピンク色に染まった気がする。
「困るんだけどな~、私の大事な養分を横取りされると...」
「あなた...まさか...」ライツとジュースは身構えた。
「そうよ、人間じゃないわ。ふふふ、人間だったらあんな洞窟でヴァンパイアと一緒にいられるわけないわ。私はサキュバス。洞窟であのヴァンパイアおやじの精気を吸っていたのよ。」
なんと!俺の弟くん養分は精気だったのか。だからみんなに元気がないって言われていたのか。
「フレッセンから離れなさい!」ライツとジュースの手にはハープーンが握られていた。
「あらあら、乱暴ね。私そういうの好きじゃない。弟くんは返すわよ。」
「コンカフェはどうするの?」ジュースが尋ねた。
「もちろん続けるわよ。繁盛してるし。」
「村の男たちから精気を吸っているのね?」
「そうよ。あなたたちだって毎日ご飯を食べるでしょ?それと同じ。」
ご飯、そうか、ご飯だ!元祖食える男として俺は思いついた。
「エラ、おまえもご飯食えよ。」
「いやよ、太るもの。」
「いや、食い過ぎなければ大丈夫だって。ライツもジュースも、そしてオリヴィアさんとミナモさんだって、ご飯を食べて仲間になったんだ。仲間で食う飯は美味いぞ。最初からご飯は無理だと言うなら、スパイスマンゴーはどうだ?みんなそれで人間になれたんだ。仲間になれたんだ。」
「私...帰る!」エラはピンクのオーラを残して外に飛び出した。
「大丈夫かしら、あの子...?」ライツが心配そうに外を見た。
まさかのサキュバス!サキュバスって強いの?




