聖なる武器は臭くてばっちいので銀の武器に変えることにしました
そうなんです。聖水や聖餅と言ってごまかしてきましたが、あれは実はね...。ということで兵装のリニューアルです。
俺は防衛班の兵装をリニューアルすることにした。聖水ピストルと聖餅手榴弾では、戦闘中にまだ完全に人間化していない仲間に飛沫で被害が出してしまう。そして飛沫は人間化した仲間にもとっても不快なものだ。すぐ風呂に入って服を洗濯しないと臭いと汚れが耐えられない。新しく配給したのはもちろん銀の兵器だ。この兵器の最大の問題は、弾丸のコストだ。貴重な銀を弾丸にするので、撃つたびに5バルが飛んで行く。俺は一計を案じた。
「なあ、オリヴァー。第2階層は金銀財宝をたらふく貯め込んでいたんだろ?」
「ああ、家に財宝室を作る程度には。」
「あの塵になった第2階層の家を知ってるか?」
「もちろん知っている。上納に通っていたからな。」
「そうか。じゃあ連れて行ってくれ。戦費が足りない。他の第2階層に取り上げられる前に頂く。戦費が足りないと次の襲撃を受けたときに村を守れない。」
「他の第2階層はまだ奴が消滅したことを知らない。先に気づくのは、私と妹以外で奴に上納していた第3階層3人だろう。」
「そうか、ならば説得できる可能性もあるな。応じない場合は滅するだけだ。」
「わかった。ならば妹も同行させよう。いざというときは連携して戦える。」
滅した第2階層の屋敷は町外れのうっそうと木々が茂る林の中にあった。物音はしない。無人のようだ。俺は用心のためミルトとツァルトも同行させていた。俺の得物はとどめを刺す銀の杭だ。財宝室の場所は上納に通っていたオリヴァーも知らなかった。家捜しが必要になった。ヴァンパイアは食事も排泄もしないので、家の中に生活感はほぼ皆無だった。家具や窓際にわずかなほこりがたまっているだけだ。まさに死者の館。家の中で開けられるドアはすべて開け、入り込める隙間もすべて調べた。
「フレッセン!ここを見て!」
ツァルトが指差したのは、暖炉の裏側の壁だった。一見普通の壁に見えるが、よく見ると、レンガの積み方がわずかに不自然で、継ぎ目が他よりも目立っている。壁を軽く叩くと鈍い音が響き、奥が空洞になっていることがわかった。
ミルトが慎重に暖炉から離れ、リボルバーを構えた。俺は銀の杭を握り直し、壁の不自然な部分を突いて調べた。すると、レンガの1つが奥にずれた。ここだ。俺はできた窪みに手を入れて窪みの下にあるボタンを押した。すると暖炉の隣の壁が横に引き戸のようにスライドして入り口が現れた。現れたのは、薄暗い空間だった。懐中電灯で中を照らすと、目の前に広がったのは、山積みにされた金貨、銀貨、そして宝石類の輝きだった。
「やったぞ!」俺は、思わず声を上げた。これで、当面の戦費には困らない。
「待て!」背後から呼び止める声がした。「コソ泥か?」
振り返ると3人の第3階層が立っていた。まずい戦闘になると戦力はほぼ五分と五分だ。犠牲者が出るかも知れない。
「おい、おまえたち!」オリヴァーが声を上げた。「ここに来たということは、主だった第2階層がもういないということを知ったんだな?」
「ああ、その通りだ。なのであいつが俺たちから巻き上げたお宝を返してもらいに来たわけさ。」
「財宝を持ち帰ってそのあとどうするつもりだ?」
「知れたこと。もう上納しないで済むんだ。好き勝手にやらせてもらうさ。」
「好き勝手に人間を襲うつもりか?」俺は銀の杭を握りしめた。
「ああ、今までは上納された保存血液をすするだけの味気ない食生活だったが、これからは新鮮な生き血を好きなだけ味わえる。」第3階層は舌なめずりをした。
「そんなものよりもっと美味しいものがあるのよ。」オリヴィアは何とか説得しようと話をつないだ。
「は?おまえヴァンパイアのくせに何を言ってる?」男は怪訝そうにオリヴィアを見た。
「それよりなぜおまえはこいつらと一緒にいる?」別の第3階層が敵意をむき出しにしてオリヴィアを問い詰める。今にも襲いかかりそうだ。
「妹に手を出すな!」オリヴァーが彼女をかばって前に出た。
「あー、一応訊いておくが...」俺は平静を装いながらスパイスマンゴーを取り出して尋ねた。「おまえたちはこの美味しい果物を食べてみたいとは思わないか?」
「ほう、どれどれ...」と男は近づいて果物を手に取ろうと....するように見せかけながら俺の手を掴んで引っ張った。すごい力だ。腕がもげるかと思った。「そんなゴミより、こっちを囓らせろ!」男の牙が俺に迫る。
パンッ!ヴィルトの放った銀の弾丸が男の額に命中した。男は俺を放してその場に崩れ落ちた。俺は銀の杭を握って男の胸を貫こうとした。だがそれを阻もうと他の2人が俺に襲いかかる。ツァルトの矢が1人の胸に命中した。それにもうひとりが気を取られているうちに俺は銀の杭を倒れている男の胸に打ち込んだ。矢が刺さった男はまだ動ける。だが形勢は俺たちに有利になった。第3階層のオリヴァーとオリヴィエ、銀の武器を構える俺たち3人に対して無傷の第3階層1人と負傷した第3階層。
「わかった。降参する。」無傷の第3階層は両手を挙げた。
このままでは危険なので、2体の第3階層をロープで拘束して、村に連れ帰って飢えで弱体化させてから餌付けすることにした。餌付けに応じない場合はしばらく海の底で反省してもらおう。
いずれ仲間になる第3階層2名を足すと、俺たちの戦力はずいぶん高まった。銀の兵器も、聖水ピストルや聖餅手榴弾より攻撃力が高い。値段も高いが。俺は持ち帰った金銀財宝を町で換金し、ありったけの銀を買った。これで十分な銀の弾丸を製造できる。
今回の挿絵は、有料版にアップグレードしたChat-GPSに付属するSoraに描いてもらいました。なんか高級感を感じますね。まあそのぶんぼくのお財布が軽くなったわけですが。




