団結の力、増える仲間、そして迫り来る恐怖
仲間が増えます。革命勢力が拡大します。
海地獄と第2血の池地獄が完成した。ウンピとミナモは、積極的に導きのフルーツバイトに参加して,特に第4階層をスカウトしようとしていた。第5階層のほとんどが食えるヴァンパイアになったいま、第4階層は最下層の辛酸を舐めているので、誘いに乗りやすい。たとえ説得に応じずバトルになっても、こちらは2人でタッグを組んでいるので負けることはない。拘束して連れ帰り餌を与えなければ、エネルギー切れで衰弱し反抗心が潰える。こうして2人は、13人の「食える化」に成功した。こうして仲間の第4階層は15人になった。これは大きな戦力の増加である。15人の第4階層は、7人の第3階層に匹敵する。そもそも各階層の下に5人の下位階層が従う構造は、下部が団結すれば上部を潰せるということを意味する。このまま行けば第3階層の取り込みにも成功するかも知れない。革命は、搾取する少数のものを搾取される多数が倒すことなので、仲間の覚醒を促すことが大切だ。
そんなとき、村の浦山側の入り口で騒動があった。2人のヴァンパイアがやってきて、食えるようになった第4階層たちとにらみ合っている。俺はライツとともに駆けつけた。
「何があった?」
「こいつら第3階層です。」新人の食える第4階層が戦闘態勢のまま答える。
「待て、戦いに来たわけじゃない。」第3階層と呼ばれた女が言った。「ここはかつて私たちが住んでいた村だ。」
「おまえたちはまさか...」俺は闇金のおっさんを思い出した。
「そうだ、ここで第2階層たちに襲われて眷属にされた。」
「ここに何をしに来た?」新人の第4階層が厳しい声で問うた。
「またここに住みたい。」女の連れ合いとおぼしき男が答えた。
「何だって?」俺は反射的に大声を出した。「この村を取り戻しに来たのか?」
「違う。ただここに住まわせて欲しいだけだ。」男は静かに答えた。
「ここにはたくさん人間が住んでいる。血を吸う種族と共生はできない。」俺は毅然として答えた。
「もう吸血はやめたい....」女は俺の目を見つめて言った。
「その意思は本物か?もし強固な意志でなければ身を滅ぼすことになるぞ。」
「試してくれてかまわない。」男と女は同時に答えた。
「良いだろう。なら付いて来い。」俺は2人を連れて温泉広場に出た。
「この道をまっすぐ行くと道が分かれる。左右どちらへ行っても,おまえたちの飢えは満たされるだろう。好きに選べ。」
右に行けば第2血の池地獄、左へ行けば居酒屋。右へ行けば青イソメになって魚の餌、左に行けば料理を食べて食えるヴァンパイアになる。どちらに転んでも俺たちの勝ちだ。
「待ってください!」新人第4階層の女が飛び出してきて2人を遮った。「わが主オリヴァー様、オリヴィア様!血の池に行ってはなりません!あなたたちは変わらなければなりません。どちらの道に進んでもあなたたちは変わります。でも、右の道に進めば、そしてヴァンパイアの本能は右の道を選ばせようとするでしょうが、そうなるとあなたたちはもう...人間の形を失います。階層が....そう階層が二桁下がることになります。」
これを聞いてオリヴァーとオリヴィアは顔を見合わせた。この第4階層は、2人のメイドとして仕えていた女だった。
「二桁階層が下がるとは?」オリヴァーは不審そうに女に問うた。
「あなたたちは捕食者として人間の上位に位置しています。ですが右の道へ進めば、あなたたちが餌として摂取できるのは腐肉や微生物のみ、そしてあなたたちは魚の餌になるのです。」
「左の道へ進めば?」オリヴィアが期待を込めて尋ねた。
「はい、オリヴィア様。そちらの道を選べば、あなたたちは料理を食べ、人間の姿を保ち、この村で生きていくことができるでしょう。かつての記憶も、理性も失わずに...」
「わかった。私たちは左の道を選ぼう。」
決意して歩き出した2人に俺たちも続いた。これで強い仲間が2人も増える。俺とライツは期待に胸を膨らませた。ライツの胸は...いつも通りだ。そのとき前方から、「ほう、面白いな。」男の声がした。
「ヴァンパイアを辞めて人間に戻るのか?せっかく俺が眷属にしてやったというのに。」
それを聞いてオリヴァーとオリヴィアは恐怖に固まった。男の身体は青黒いオーラを纏っていた。明らかに他のヴァンパイアと格が違う。第2階層だ。
「そんなに人間に戻りたいのなら戻してやろうか?死体としてだけどな。」男は冷酷な笑みとともに牙を剥きだし目を紅く輝かせた。
まずい、このままではせっかく人間に戻ろうとしているオリヴァーとオリヴィアが殺されてしまう。俺は考えた。第2階層の力は第3階層の2倍、第4階層の4倍。ここには15人の第4階層がいる。だが人間化が進んだに違いないウンピとミナモは除外しよう。13人の第4階層なら、犠牲を出しながら戦えば第2階層を押さえ込める。俺は第4階層たちにやつを取り囲んで押さえ込むように指示を出しながら、とどめを刺すための槌と杭を取りに走った。自分を取り囲んだ2段階格下のヴァンパイアの群れを見て第2階層は鼻で笑った。
「数で勝てると思っているのか?おまえたちなど触らなくても吹き飛ばせるぞ。」男が纏う青黒いオーラが竜巻のように膨らみ、第4階層たちを次々に吹き飛ばした。まずい、このままでは...俺は焦った。そのときオリヴァーとオリヴィアが状況を悟って我に返った。
「待ちなさい。むざむざと殺されるわけにはいきません。私たちはここで人間としてやり直す覚悟を決めたのです。できる限り抗わせて頂きます。無傷で帰れるとは思わないでください。」
オリヴァーとオリヴィアが戦闘態勢に入ったのを見て、俺は吹き飛ばされた第4階層に退却を命じ、ライツに目配せした。2人を援護しなければ犠牲者が出てしまう。ヴィルトとツァルトとジュースが新兵器を持って駆けつけてくれた。ヴィルトは銀の弾丸のリボルバー、ツァルトは銀の弓を射る弓、ジュースは銀のハープーンだ。町の図書館でヴァンパイアは銀に弱いということを知った俺が鍛冶屋に発注して開発させた新兵器だ。
第2階層が冷酷な笑みとともにオリヴァーとオリヴィエに迫ろうとしてとき、ヴィルトの銃が火を噴き、ツァルトの銀の矢が射られ、ジュースの銀のハーブーンが投げられた。いずれも第2階層に命中し、「グハッ!」とうなり声を上げて魔物は怯んだ。その瞬間、オリヴァーとオリヴィアはだ2階層に飛びかかり抵抗を封じた。俺とライツはそのチャンスを見逃さず、第2階層の胸に銀の杭を打ち込んだ。「貴様等...!グハッ!」第2階層は鬼の形相で睨みながら白い煙とともに塵になって消えた。
最初は新規参入の第3階層を恋人か夫婦にしようと思っていたけど、名前を考えているうちに兄妹にしようと考え直しました。以後のカップリングの可能性も広がるしね。




