強敵登場!第3階層が11人!でも、なぜか人魚も登場!
敵をフナムシにしてほっとしていたら、なんと強敵登場です。
敵があらかた片付いたところで、背後に控えていた第3階層の部隊が現れた。血の池地獄に部下たちが次々に飛び込んでフナムシになった様子を見ていたので、本能を抑えて池に近づこうとはしない。フナムシ第1号になったあの闇金1人にも苦労したのに、11人もいる。これはヤバイ。南無三、俺が囮になってあの清水聖餅トラップに落としてやる。俺はトラップを操作する防衛班に目配せすると、イオにまたがりやつらの背後から煽った。「オーイ、鈍足の腐れヴァンパイア!こっちに来たら殴ってやるから覚悟しとけ!」奴らはすぐに反応して俺を追いかけてきた。だがロバの速度が勝っている。トラップの位置を目測し、背後のヴァンパイアとの距離を確認し、ベストタイミングで俺はトラップを飛び越えた。「ハイヨー!」着地すると同時に背後でヴァンパイアたちがトラップに落ちた。しかし...落ちたのは5人だけでまだ6人残っている。もうトラップは使えない。血の池地獄もバレている。絶体絶命だ...、とそのとき、「待った!聖水と聖餅の使用をしばし中止してくれ!」とウンピが叫んだ。ウンピの背後には300人の食えるヴァンパイアが従っている。
「ここは俺たちに任せてくれ。」息を切らしながらウンピが言った。
「任せろと言われても相手は格上だぞ。」俺は半分期待しつつも気遣った。
「俺たちはまだヴァンパイアだ。不死者だ。だから死なない。第3階層は俺の2倍の力だというが、それはすなわち俺と2人の第5階層とイーブンということだ。もうひとり第5階層を加えれば,俺たちの勝ちだ。第5階層は300人もいる。倒されても倒されてもあとからいくらでも攻撃できる。倒されたら静かなところに埋葬...じゃなくて安置して、復活したら美味いものを食わせてくれ。ともかく俺たちであいつらを組み伏せて押さえ込む。その間にあんたはあいつらの胸に杭を打ち込んでくれ。」ウンピは今まで見たことがない気迫のこもった顔でそう言うと、第3階層に突っ込んでいった。ウンピに従う300人も次々に突っ込み、まさに人海戦術で第3階層の動きを止めた。
俺たちは言われた通り槌と杭を持ってきてヴァンパイアたちにとどめを刺した。そして一匹だけ試しに血の池に放り込んでやった。果たしてフナムシになるのか、それとも...はい。出ました!大量の青イソメでした。なるほどね、階層が上がると餌のグレードも上がるんだ。
ウンピを始めとする尊い犠牲のヴァンパイアたちは、温泉広場に安置された。復活したら美味い酒でも振る舞ってやろう。
彼らが復活するまで俺たちは海釣りを楽しんだ。あれだけ大量の餌を流し込んだので、入れ食いで次から次に釣れた。俺たちは岩場にいけすを作って釣った魚を放した。だがすぐに一杯になったので、さらにいけすを3つ作った。餌が変わったせいか、今まで見たことがないエイやタコやサメも釣れた。サメは食う気になれなかったので,試しに血の池地獄に放り込んでみた。変身するか...?しません。ふつうに死んだ。仕方がない、解体して干して畑の肥料にしよう。
「なあ、ライツ、こんなのが釣れるってことは、海の中に目新しいものがいるかも知れないぞ。」
それを聞いたライツとジュースは水着を取りに戻るのももどかしかったのか、その場で全裸になって300人を楽しませた...じゃなくて、海に飛び込んだ。300人は心の中で拍手喝采を送った
しばらくするとジュースが大きなカメを連れて戻ってきた。そして、さらにしばらく待っていると、ライツがとんでもないものを連れて戻ってきた。自分とそっくりの人魚だ。
「人魚で~す♩ごきげんよう~♩」なぜか歌って挨拶だ。ちゃんと隠すところは隠している人魚と並ぶと全裸のライツは生々しい。何だろう、この感情?誰にも見られたくないという思いに目覚めてしまった。と思っていたら、なんとそれを小さく呟いてしまっていた。「私は良いのね?」とジュースがすべてお見通しだという顔で訊いた。
「人魚さ~ん♩ かわいいね~♩」ミルトが歌って人魚に手を差し伸べた。やめろ、ミルト、アルテミスの矢が飛んでくるぞ。
「人魚で~す♩さようなら~♩」人魚は海へ帰った。ミルトの浮気は未遂で終わった。
3日後に犠牲者たちは復活した。みんな飢えていた。ヴァンパイアの復活とルールは同じで、復活したと同時にすごい飢餓感に襲われるらしい。空腹に酒はよくないので、とりあえずおにぎりを食わせた。連中がおにぎりをむさぼり食っている間に、板長のライツと弟子のジュースが見事な腕前で魚を捌き、豪華な舟盛りが300人分できあがった。壮観だ。よし、とっておきの大吟醸を開けよう。なあに、居酒屋の酒蔵には酒が売るほどあるんだ。待て、売り物を勝手に飲んで良いのか?俺は30秒逡巡したが、勇者たちをもてなさない罪は盗み飲みより重いと即決し、大宴会が始まった。
「なあ、ウンピよ、おまえかっこよかったな~!」いかん、少し絡み酒になりそうだ。
「フレッセン、その、悪かったな,昔...」ウンピは頭を下げた。
「良いってことよ、ノーサイドだぜ!」俺は酒で上機嫌だ。ジュースとライツも隣に来て飲み始め、宴席の笑い声が華やかになった。
「こんな美味いもの、食べたことがない。」ウンピがウルウルした声で呟いた。
「そりゃ、おまえは黄色い果実しか食ったことがなかったんだから当然だな。これからいっぱい美味いものを食わせてやるから楽しみにしてろ!」おれはなんだか上司のおっさんみたいな気分になっていた。
人魚さん、何で付いてきたのかな?ライツがそっくりだったから生き別れの姉だと思ったのかな?まあそういうやりとりを書いても良かったんだけど、あまり痕跡を残したくなかったので、あっさりと「さようなら~♩」で海に帰しました。




