恋する2人のラブラブライブ、熱気に当てられ人口爆発?
一挙に人口が増えたクーエル村。しっかり食っていくためには...?
新しい村の建設が始まった。100人もいると仕事が早い。森から木が切り出され、家屋が建設され、井戸が掘られ、共同浴場もいくつか設置された。海では漁が開始され、約束通り俺たちの漁場と被らない水域で釣りや素潜りで魚が捕られている。陸上では緑の丘陵地帯で獣や鳥が狩られ、手際よくジビエとして市場に出回るようになった。とりあえず、初期の経済活動としては漁業と狩猟が中心のようだ。そのうち農業もそれに加わるだろう。だとすれば、購買層の人間の数が一定ではいつか過剰供給となり俺たちは苦境に立たされる。これを打破するためには、人間を増やす以外にない。俺は一計を案じた。
「なあ、ミルト、ポエムは順調か?」
「うん、花を見ているといくらでも湧いてくる。」
「ツァルトとは上手くいってるのか?」
「えへへへ...幸せすぎて少し怖い...。」
「そ、そうか...(うろたえるな、俺!)...それは何よりだな。」
まあ良い。こいつは一押しすればやってくれそうだ。やはり現実については女と話したほうが良い。
「ツァルト、養蜂業は順調か?」
「うん、女王蜂が順調に卵を産んでる。」
「なるほど、クイーンが元気だと労働者が増えるわけか。良いサイクルだ。」
「私も赤ちゃんが欲しい...」
「おふ...今何と?」
「赤ちゃんがたくさん欲しいの。」
「作り方はご存じで?」
「書店で『家庭の医学』を買ったから。」
「お、おう。がんばれ。」
「でも元ヴァンパイアのせいなのかわからないけど、ちっともできない。」
あれれ?聞きたくない情報を頂いちゃったよ。でも、お願いしたいことと方向性は一緒だ。ここはもう一押し。
「なあ,ツァルト、ミルトといっしょに歌ったりしないのか?」
「歌を聴かせてもらってばかりで,私がいっしょに歌ったことはないかな。」
「恋は2人の繁栄の歌だぜ。2人で歌えよ。デュエットだ。」
「デュエット...」ツァルトの目に希望の光が点った。
さて、盛り上げるか。俺たちもバックバンドの練習をしよう。人類繁栄祈願のラブラブミュージックフェスだ。セットリストは、「神様、教えて!」、「愛の力で人類繁栄!」、ツァルトのソロ「ひとりぼっちの夜が怖いの」、ミルトのソロ「決めてやるぜ,今夜こそ」、デュエット「生まれてくれてありがとう」、うん、完璧だ。そうだ、ついでに何か精力が付きそうな商品も用意するか。
俺はライツと一緒にワオを連れて裏山に出かけた。犬は嗅覚が鋭いので見つけてくれるだろう。絶倫の秘薬「山芋」。これは売るより花束や蜂蜜のおまけにしたほうが良いかな。歌を聴いてその気になって山芋パワーで人口爆発。うん、これは上手く行く。歌は何と言っても人間が人間になる前からそういう機能を果たしていた。鳥はなぜ鳴く?つがいになって子孫を残すためだ。
人口爆発計画の傍ら、俺は100人の村の防衛戦略を考えていた。敵が攻めてくるとしたら、出現箇所は一箇所だけ、森の出口だ。海から攻撃することは考えられないし、海岸線は左右とも岸壁に守られている。敵の弱点は、そう聖水と聖餅だ。俺は100人の村の代表と話し合って、村のトイレと聖水聖餅の保存について細かく詰めた。特に、聖水と聖餅が混じり合った状態だと効果が限定的になるので、それを分離して保存する方法について議論を尽くした。100人分なので大規模工事が必要になる。幸い100人村には土木建築に詳しい人材が揃っていたので、高性能の聖水聖餅工場が完成した。ふふふ、いつでも攻めて来い。
子作り推奨ライブの日が来た。俺たちはビラを撒き、客を集めた。ミルトとツァルトは緊張...しておらず、いつものアハハウフフ状態だ。これなら行ける。俺たちバックバンドも気合い十分だ。行くぜっ!
すごい熱気だった。客は顔を紅潮させてやる気満々で帰って行った。ふっふっふ、増えた子どもを対象にしたビジネスも考えないと。まずは保育所だな。その次はさまざまな習い事と塾。100人村で人材を育成しないと。
ライブのあとは打ち上げだ。打ち上げのためにライブをするバンドもいるくらい打ち上げは大事だ。町の居酒屋に繰り出したいところだが、帰路が遠い。村に戻ってからにしよう。ともかく酒だ。人間になってから酒が美味くてしょうがない。酒には美点しかない。酔うと気が大きくなる。笑いの沸点が下がる。いろいろ面倒くさくなるので後回しにできる。風呂に入る気も失せるのでライツとジュースへのサービスもお休みになる。とはいえライツとジュースは酒が入ると抱きつきキス魔になる。応じないと容赦なくパシンパシンが来る。かつてはライツのお家芸だったが、最近はジュースも姉御の真似をするようになった。ハーレム?そんな良いものではないぞ。
物語を書いているうちに山芋が食べたくなってスーパーに買いに行ってしまいました。あと釜揚げしらすも。




