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未踏の地の大探索旅行、見つけた温泉で仲良く混浴

生活も落ち着いてきたので、周辺一帯を領土とすべく探索に出発だ!

 猫を買った。犬がワオなので猫はミャオと名付けた。命名には一貫性がなければならない。理由は...、うむ、思いつかないか...、そうだ!新しいのが来たときにすぐ名前が決められるじゃないか、それだ。ミャオは三毛猫だ。ミャオは三毛猫だ?そういえばワオの特徴を紹介していなかった。犬は猫以上に千差万別だ。単にイヌとだけ紹介したのではまるでイメージが湧かない。ワオは柴犬系の大きめの雑種だ。賢くて機敏で忠誠心が強い。


 これも紹介していなかったが、3人が加わったとき住居を増築して、各人に個室が与えられた。廃材で家具もこしらえ、それぞれが好みのインテリアで部屋を設えた。みんな個性が良く出ている。そして、ミルトとツァルトは、趣味が合うせいか、最近とても仲が良い。静かな恋人たちのように見える。それはとても良いことなのだが、恋愛話は拗れるのが世の常だ。面倒なことにならなければ良いのだが。


 もうヴァンパイアではなくなったので、「豊かで文化的なヴァンパイア生活」ではなくなったが、生活はますます豊かで文化的になってきた。ということで、裏口から出た丘陵地帯のこれまでまだ探索していない地域を探索することになった。俺たち全員とイオ、ヒン、ワオ、ミャオの大所帯の探索隊だ。2食分の弁当とキャンプのためのテントも持った。なだらかな緑の丘陵を過ぎると植生が変わり、低木や灌木に混じって松の木が生えていた。ずっと上り坂だったので、山間部になったのだろうか。岩がゴロゴロある岩山のような風景になった。俺たちの風呂に水を供給している川の上流がある。ライツとジュースの海女魂に火が付いた。今回は山に行くということで彼女たちは水着を持ってきていないが、そんなことはまったくお構いなしに全裸になり川に入った。流れが急だったので止めようと思ったが、思ったときにはもう水の中だった。川は浅いところと急に深くなるところがあって、一般的にとても危険だと言われている。良い子は真似しないほうが良い。ライツとジュースは元ヴァンパイアという下地の上に十分な訓練を積んでいるので、あくまでフィクションのこの物語で川に入ったのである。全裸海女の2人は、やがて腰のびくにたくさんの川魚を入れて戻ってきた。鮎、ヤマメ、ニジマス...サワガニもいる。


「料理しておいて!サワガニは素揚げね。私たちは大物を狙ってもう一度潜る!」


 大物?なんだろう。とりあえず俺たちは火を起こし、魚に串を通し、サワガニの素揚げの準備をした。戻ったら冷えた身体を暖めてやろうということで、お茶も用意した。


「捕れた!」モリの先に大きなサケを刺してライツが凱旋した。それに続いてジュースも大きなマスを持って登場した。


 結局その日は持ってきた弁当に手を付けることもなく、川魚の宴で幕を下ろした。標高が上がったので肌寒い...と思ったが、狭いテントでライツとジュースに挟まれているので,ぬくぬくと暖かかった。人間になったライツとジュースの寝顔を見ていると、思わずニンマリとしてしまうほどかわいい。これもまた人間になって得られた眼福という新しい感情なのだろう。



 鳥獣がいたら狩りもできると思って弓と矢も持参していた。しかし俺はほとんど練習をしたことがないので、狩りが成功するとは思えなかった。そもそも魚と違って獣は、たとえ仕留めたとしても簡単に食べられるものではなさそうだ。市場でウサギや鹿などが店頭に吊り下げられて売られているが、どう捌いて良いかわからない。今度店主に聞いてみよう。鳥なら羽をむしってしまえば食えそうだ。矢が当たればの話だが...という考えに耽っていたら、ツァルトが弓を取って矢をつがえて射た。矢が放たれた方向を見ると、矢が刺さったキジが横たわっていた。何と、ツァルトは貞潔の女神アルテミスの化身か。月と狩猟の女神アルテミス、純潔を守り淫蕩を嫌う鋼の処女...脳内で月明かりに照らされて弓矢を構える鋼の処女のムービーが再生された。しかし...ツァルトは獲物の記事を持ってミルトのもとに駆け寄り、なんだかアハハウフフの良い感じになっている。アルテミスじゃないな、こいつ。


「どうする、このキジ?」ジュースが尋ねた。いや、俺にではなく、姉と慕っているライツに。


「キジご飯とキジのスープ、どちらにもキノコが必要だからキノコ狩りスタート!」料理となればライツ様がシェフだ。一同揃って、「ウィ、シェフ!」と返答した。


 キノコか...いっぱいあるが...どれが安全かわからない。間違って毒キノコを食べたら、せっかく手に入れた人間の命が一瞬にして消えてしまう。慎重に選べと言われても、そもそもの知識がないのだから選びようがない。あっ、ミルトが毒々しい紅い傘の見るからにやばそうなのに手を伸ばそうとしている。ツァルトも白に斑点の、いかにも「触るな、危険!」と書いてありそうなキノコを興味津々で見ている。ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!!俺はライツに声を掛けた。


「ライツ、俺たちはこんなところで朽ち果てるわけにはいかない。キノコ狩りは書店でキノコ辞典を手に入れてからにしよう。今日のところは確実に安全な椎茸だけを狙おう。」


 俺の悲痛な願いは聞き入れられ、毒キノコで全滅するエンディングは避けられた。ライツとジュースは火を起こして鍋を2つかけた。ひとつはスープ用、もうひとつはキノコご飯用である。こうして野菜と調味料を加えて山中で食べる最高のキジ料理が完成した。



 ここから山頂までは近い。今回の探索は山頂と川の源を探るという目的があったので、それはほぼ達成しそうだ。食事を済ませたが、まだ日没まで時間がある。俺たちはここにキャンプを設えてから山頂を目指すことにした。山頂に「クーエル村」の旗を立てよう。俺たちの領土だ。


「ねえ、気になっていたんだけど、川の源ってどうなってるの?」ライツが尋ねる。


「実は俺も知らん。それをこれから確かめよう。」



 しばらく歩くと、水が噴き出して小さな流れを作っている場所が見つかった。どうやらこれが川の源のようだ。俺たちに風呂を提供してくれるありがたい川の。俺は深々と頭を下げた。「何してるの?」ライツが訊いたので、俺はお風呂の礼をしていると、俺がおまえとジュースにサービスを施しているお風呂の水を毎日ありがとうと頭を下げていると答えてやった。それを聞いてライツとジュースも頭を下げ、それから俺にも、「いつもありがとうね」と言って極上の微笑みを見せた。


 山頂に旗を立てて、みんなで万歳をしたあとで、キャンプに戻る道すがら、小さな洞窟を発見した。何だろう?灌木に覆われていて気がつかなかった。異世界じゃあるまいし、魔物が出てくるはずもない。俺たちは軽い気持ちで洞窟の奥に進んだ。曲がりくねった一本道で、150mほど進んだろうか。周囲の気温が上昇している。湯気が見える。何だ、これは?「フレッセン、こっち来てこれ見て!」水と見ればすぐ駆け寄るライツとジュースが、お湯の池を発見していた。


「何、これ?お風呂みたい。」ライツはそう言いながらすでに全裸になっている。


「お風呂だね、これ。」もちろんジュースも全裸になった。


 他のメンバーも集まってきた。気持ち良さそうに湯船に浸かるライツとジュースをうらやましそうに見ている。


「なんかいつものお風呂より気持ち良いかも!」ライツがうっとりした声で言う。


「ホント、身体の中にじわじわ入ってくるみたい。」ジュースは湯船の中で両手両脚を全開にして満喫している。



 俺たちは我慢できなくなって、全員で服を脱いで湯に飛び込んだ。いや、飛び込んだと言ったが、実際に競泳のように飛び込んだわけではなくて、これは一種の比喩だ。うれしさの勢いがそれだけ強かったということだ。いや、本当にこの湯はすごい。栄養とは違う何かが身体にじわじわ浸みてきて、活力が得られる。歌いたくなる。この湯が村の近くにあればなあ。


挿絵(By みてみん)




温泉ですよ、温泉!キジ料理を堪能して温泉!もう何も言うことはありません。

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