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【新天地開拓】最下層ヴァンパイアたちの村づくり始動!

新しい仲間はどんな連中なのでしょう?


 俺たち5人は廃村に向かった。主を失った(というか海に沈めたんだけど)最下層のヴァンパイア5人はここを拠点として開発する。人口が倍以上になったから――といっても2人が5人に増えただけだが――住居やその他の設備も増築や改築をしなければならない。あと、これまでは夢スパイス亭さんへの納品で足りていたが、これからは別の稼ぎも考えなければ,俺の目指す「豊かで文化的なヴァンパイア生活」が実現できない。そういう基盤があって初めて次の一歩が踏み出せる。


「さて、これから町へ買出しに行く。俺は生活基盤の拡充のための材料を買おうと思っているが、新しい仲間の3人はおそらく着の身着のままだろう。何か欲しいものがあったら言ってくれ。」


 3人はポカンとして何も答えなかった。そうか、これまで貨幣経済の埒外にいたので所有と欲望の概念がないんだ。幼児みたいなものか。そういえばライツも、初めて黄色い果実が市場で売れたとき、すぐに後先考えずにこの首飾りを買ったっけ。


「私がいろいろ選んで買ってあげるよ。」


ライツは早速お姉さん気取りだ。それにしても、このままだとすぐにカネが底をつく。どうする?今回の買出しでカネ稼ぎのヒントも探すことにしよう。いや、ちょっと待て。当然イオとヒンは連れて行くが、5人なので乗っていくわけにはいかない。となると往路は空荷になる。これはもったいない。お、なんだ?俺に経営者の意識が備わってきたか?末は社長か?まあそれはともかく、空荷はもったいないので何か積んでいこう。積んでいくものと言ったら、行った先で売れるものが良いな。3人にも良い経験になる。ここですぐ手に入って市場で売れるもの...魚だ!魚をたくさん捕って市場で売ろう。


「みんな、聞いてくれ!これから町へ行く前に魚を捕る。捕った魚を市場で売って買物の資金にする。新しい3人に言っておくが、食っていくということは、基本的に稼いだカネを使うの繰り返しだ。きょうはその第1回目ということで頑張ってくれ。」


 俺たちは釣り竿や網やモリを持って海に向かった。俺は木登りと同じで泳ぎもあまり得意ではないので釣り担当になった。ライツはさっさと裸になってモリを持って海に潜った。ジュースもそれに続いた。どうやらジュースはライツと同じく運動系らしい。裸になると引き締まった筋肉が陽光を受けてキラキラ輝いた。眩しい!いや、女の裸に見とれちゃいかん。俺は頭を振って視線を外した。ミルトとツァルトは釣り竿を握った。うむ、これで3人のタイプが少し判明した。すぐ脱いで飛び込むジュースと、できれば脱ぎたくないミルトとツァルト。俺もどちらかというと後者だ。


 5人がかりだったので、小1時間もすると魚が30匹ぐらい捕れた。これで十分だろう。ライツとジュースが井戸水で潮のべとべとを流している間に俺たちは魚の篭をイオとヒンに積んだ。さあ、出発だ。


 町に到着すると、俺は途中の森で収穫したスパイスマンゴを夢スパイス亭に納品し、あとの4人は市場の一角で魚を売り始めた。ライツが元気に呼び込みの声を上げる。


「さっき捕れたばかりの新鮮な魚だよ!さあ、見ていっておくれ!」板に付いている。


 かわいいイオとヒンが客の目を引き、ライツの巧みな呼び込みが功を奏して、客が次々に訪れ、魚は30分で完売した。ジュースは商売上手なライツを目を丸くして見ていた。うん、これは大きな学びになったようだ。魚30匹で紺鼻荷のおにぎり100個分の収入になった。まあ悪くない。ツァルトとミルトはあまり鮮魚販売には向かないようなので違う部署に...って、なんだこの経営者目線は!


 魚が売れたので,俺たちはまずユニーク呂に行った。着の身着のままの3人に服と下着を買うためだ。ここでライツはお姉ちゃんモード、いやママモードに入って、かいがいしく3人の服を選んでいる。


「このブルーのシャツ、シルバーの髪に映えるからツァルトに似合いそう。こっちのデニムショーツと緑のTシャツはジュースのためにあるようなものだよ、これ確保ね。ミルトにはアースカラーだよ、大地に生える緑という感じで、うーんエコロでナチュラル!」ライツはテンションMAXで3人の試着を手伝い、「それ似合う!」「こっちも見てみて!」と店内を駆け回る。


 いや訂正しよう。ママモードじゃなくってハイテンションなショップの店員だ。俺の苦手なやつ。



 次に向かったのは書店だった。俺は園芸と農業の本を買い、3人には好きな本を選べと言った。ライツは暇そうにマンガを立ち読みしている。ジュースが選んだのは「魚類辞典」。きょうの出来事で漁師魂に火が付いたか?ミルトが選んだのは「花と花言葉」。うーむ、こいつはどんな生産に向いているのか?ツァルトが選んだのは「昆虫図鑑」。えーと、何と感想を述べれば良いかわからない。


 そして最後に本来の目的だったDIY店に来た。まず本格的に畑を作るために必要なもの、たくさんあるので列挙する気にはなれないけど、生ゴミを堆肥にするコンポスト容器、苗を育成するポット、海風対策のビニールシートなどを買った。農業頑張る。お、となると、うちらは農業と水産業という立派な第一次産業の生産者じゃないか。



 廃村、いやもう廃村ではないので何か名前を付けよう。食えるようになった俺たちの村だから、そうだクーエル村!おお、めっちゃカッコいい。略称はQR村、なんちて。俺たちはクーエル村に戻って、さっそく畑を耕した。耕す、良いね、文化だね。俺たち、文化ヴァンパイアになる。


クーエル村、QR村、我ながらよく思いつきました。食えるからクーエル村、何のひねりもない,だがそれが良い!

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