表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/51

秘密兵器だ、くらえっ!熟成の聖水と聖餅だ!

強敵登場。そして彼には意外な過去が...

「だから、試してみる価値はあるって...!」俺はライツを説得していた。


「あんた、自分で否定してたじゃない。自分の身体から出た時点で...とか言って。」


「あのときは俺たちの身体がスキルで変異したということを忘れていたんだ。」


「海辺のトイレを使わないで、こっちの廃屋に作った溜め込み式トイレを使うの?絶対イヤなんですけど。」


「奴が火の耐性を持っていた場合の第2の矢なんだ、頼む!」ライツは牙をむき出しにしながらいやいや同意した。


「裏門の罠は完成したわ。」ふくれっ面のままライツが報告する。


「そうか。導線の誘導は上手くいきそうか?」


「バレるのとバレないのの絶妙の組み合わせで、どんな策士でも絡め取ってみせるわ。」


「よし、さすがはライツだ!ところで、第2の矢だが、聖水と聖餅は別々に保管するように。」


パシン、パシン、パシパシパシパッシン!


「あふう!しょうがないだろう!大事な二の矢なんだから最良の状態で用意しないと。」



迎撃準備を整えてから4日経過した。俺たちは毎日毎晩たらふく食った。すべては矢数を確保するためだ。特にニンニクましましトン丼、これは美味い。



「おのれら、こんなところに隠れとったんかい!ずいぶん探したでぇ!」ゴールドのネックレスを付けた小太りでパンチパーマの男がすごんでいる。廃村の裏手だ。

「おのれら,知らんだろうがな、ここはわいらが人間だったときに住んでいた村や、つまりわいらの故郷っちゅうわけや。そこに土足で上がり込んで、ままごとやって乳繰りおうとるんかい、自分らは?」


 なんとこの村が第3階層の出身地だったとは!俺は冷静を装って尋ねた。


「何で廃村になったんだ?魚も良く捕れるし、平和な良い場所じゃないか。」


「眷属に成り立ての第2階層の奴らが血の衝動を抑えれんと、この村を全滅させたんや。村人は500人ぐらいおったんやぞ。そしてその中で死なずに眷属として残ったのが12名いたってわけや。わしもその1人や。」


「そしておまえも血の衝動を抑えきれずに多くの人々を殺めてきたのか?」


「何ヒーローみたいな口の利き方をしとるんじゃ,ボケ!この腐れ最下層ヴァンパイアが!ここでの事件のあとで、始祖様が厳格な規則を作られたんや。おまえもヴァンパイアの端くれなら知っとるやろが。勝手に眷属を作ってはいけないってな。ここの事件みたいなのがあちこちで起こったら、世界中がヴァンパイアだらけになって大変なことになるでえ。始祖様はな、環境保全と持続可能な社会を提案なさって規則と血の盟約を決めてくださったんや。おまえら最下層には理解できへんやろがな。」


 俺はこのヤクザかぶれが自分の演説に酔いしれてるのを見て取って、ライツに目配せした。ライツは鉤爪のついたロープを投げた...が、スウェイで避けられた。「甘いわ!」と男の口が叫びそうな形になったとき、左右から特殊合金でできた蜘蛛の巣のような投網が、ちょうどスウェイで上半身を後方に反らした第3階層の身体を絡め取った。いったん空中につり上げられた男は、今まで自分が立っていた場所に口を開けた落とし穴に落下した。


「火を放て!」俺の指示にライツは大型ロケット花火5本に着火して穴底に投げた。爆発音とともに炎が上がった。「うぉつ!」という男のうなり声が聞こえた。そして...


「てめーら、何てことしてくれたねん!?アルマーニのスーツが燃えてススになってしもうたやないか!どう落とし前付けてくれるんや。待っとれや、今登って行って、いてこましたる。」


 いかん、やはり不安的中だ。火に耐性があった。これはヤバイ。こうなったら...


「ライツ、二の矢だ!」


「イヤよ、臭いし汚いもん。自分でやって!」


「はい、失礼しました。」


俺は穴にめがけて聖水をぶちまけた。「フギャア...!!」さっきとは明らかに違う声色で男が悲鳴を上げた。もう毒づく言葉も出ないようだ。よし、ありったけの聖餅で穴を封じてやる。俺は聖餅を園芸用スコップで掬って男の身体に塗り込めるように落としてやった。少し痙攣してから男は動かなくなった。あたりは聖水と聖餅の臭いが充満した。


「うまくいったな。」俺は微笑んだ。


「臭いんですけど!汚いんですけど!」ライツは後ずさりして逃げてしまった。



「おーい、待てよ。」俺は逃げたライツを追って砂浜に来た。


「あいつ、どうすんのさ?!」ライツは安堵と怒りが混じり合った複雑な顔で尋ねた。


「第4階層と同じさ。エネルギー切れを待って、拘束して海に沈める。」


「あんたひとりでやってね。私、あんな臭くて汚いもの触れないから。」


「無茶言うなよ。あんな重いもの1人で持てるわけないだろ。」


「くっ、じゃ、じゃあ、終わったらお風呂で身体をすっかり綺麗に洗ってちょうだい。それが条件!」


「わ、わかったよ。」



撃退できて良かったですね。誰ですか、「勝負に勝って人間性に負けた」と思っている方は?聖水も聖餅も聖なるもの、決して邪なものではなりません。アーメン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ