オタクの遠足
※軽く雑なお試し投稿です
続きはありません(予定)
大都会「東京」
ここにはあらゆる”最先端”が詰まっている。
日本のアニメ文化もまた、東京にあるその”最先端”のひとつだ。
知り合いもいないのにまたこんな酷いところに一人で来てしまった…
好きなアニメのポップアップストアを観て、写真撮影を済ませ、欲しいクリアファイルやアクリルスタンドなどを購入する。
「わーがちでかわいい!本当はタペストリーが欲しいがせめてクリアファイルは永久保管用に絶対入手せねば!!」
どうせまた、そんなくだらない買い物が終わったら何もない田舎の実家にトンボ帰り。
そういえばかれこれ秋葉原や渋谷には何度来ただろうか?
何度来ても面倒で汚い街だなと思ってしまう。アニメグッズがあったり、芸能人に会えたりしなければ絶対にこんな所に用事などない人生のはずなのに…
金もないしできれば早く家に帰りたい!
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この男の名は「」
24歳、実家住みニート。
何の取り柄もないただのアニオタだ。
今日も今ハマっているアニメのグッズを欲して一人東京の街をうろつく。
ただしこのオタク、言うまでもなく体力がない。どこにいっても階段の上り下りを強要される上下に凝縮された窮屈な街に、早くも足の筋肉が悲鳴をあげている。
用が済んだら日帰りでさっさと自宅に帰還しようと先を急ぐ彼に突然の想定外が訪れようとしている。
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「全く何回階段を上り下りすればいいだよ…」と、秋葉原の雑多な電気街にはすっかり目が回るような思いであった。
その少し疲れた足で、秋葉原の北にある末広町駅から地下鉄銀座線1本で終点の渋谷にたどり着く。
「渋谷と秋葉原、この微妙な距離感いい加減なんとかならんのかねぇ…」
そんな些細な不満を抱えながら、見慣れたスクランブル交差点で信号が青に変わるのを待つ。いつもならひとつまえの表参道駅で半蔵門線に乗り換えてシブチカ経由でSHIBUYA TSUTAYAのB2に出る。
このスクランブル交差点の人混みと観光客のカメラ、信号待ちが嫌いだからだ。
今日はなんとなく久しぶりに地上の様子もみていこうかとそのまま銀座線でハチ公口に降り立った。
相変わらずの人の多さに若干の後悔をしつつ、信号が青に変わる。
日本一有名なそのスクランブル交差点の白線に足を進めたその時、自分の目の前に黒い入り口のようなものが現れ、自分をその闇の入り口へと無理やり押し込むように力強く突風が吹いた。
「いってぇ…」
謎の空間へと放り込まれた自分は突風の力でその場に倒れ込んでいた。
「なんだここは…!?」
どうやら痛みを抱えた貧弱な脚力の足を、自宅のベッドでゆっくりといたわることができるのはだいぶ先のこととなりそうな予感がした。
「意識があるようだな。立ち上がれ」
誰かの声が響き渡る。
とりあえず聞こえた通りに立ちあがろうとした。
「いてて。なんなんですか?これは?」
ゆっくり立ち上がった自分はどこから聞こえたかもわからない声にそうたずねる。
「君を保護した。通り魔に刺される寸前で」
「は!?通り魔!?」
「よって君の命に別条はない。大きな恩ができてしまったな」
「…!」
驚いて反射的に後ろを振り返った。
しかし何も見えなかった。
「犯人なら君たちと同時にここと同様の別空間にとばし、警察に届けている最中だ」
「…」
「君の他にあと2人保護している。君の左右にいる人物たちがそれだ」
左右を確認した。2人はまだ目を覚ましていない。自分だけ気絶しなかったようだ。
「犯人は複数犯ということですか?」
「そうだ。君たちには我々に命を救われた恩を返してもらわなければならない」
「いきなり勝手に救っておいて、恩を返せというんですか!?」
「事件というのはいきなり起こるのだから、救うのもいきなりということになる。理不尽だが理解してほしい」
「そんな…」
「君たちには今後我々の指示に従ってもらう。悪い事はない。恩を返してもらうだけだ」
「家には帰れないんですか?」
「詳しくは2人が起きてから別の場所で、また説明する」
「え!?」
しばらくして左右に倒れている2人が目を覚ました。
「ここは…?」
まず左に倒れていた女の子が不思議そうに口を開いた。
「はじめまして。どうやら自分たちは謎の人物によって通り魔から助けられたようです」
「え!?どこですかここは?」
高校の制服を着た女子高生が戸惑いを隠せない様子でこの空間に対して答えを問う。
右でもう1人が起きた。
「いってぇ、どこだここは?」
全員の意識が戻ったタイミングで突然別の空間へと強制的にワープしたようだ。
「ようこそ、人命保護団体”?”へ」
「2024年11月29日金曜日17時46分渋谷駅西口スクランブル交差点にて通り魔グループ3人組による殺人未遂事件に巻き込まれた君たちを犯行寸前で我々が保護した。同時に犯人も全員我々が捕らえ、身柄を警察に引き渡した」
「これによりたった今、君たちは我々に救済された恩ある命となった!命ほど重い恩をこれから返してもらわねばならない!」
「えー!?」
「はー!?」
まだ初耳であった左右の2人がそう叫ぶ。
自分はただ茫然として何も言えなくなっていた…