#2 ありすの密会
- ケンタウルスが待っているあの場所へ -
ありすは14才の女の子。
雪がチラつく寒い冬空の下、フード付きの温かなコートを着込み、
ミトンの手袋にブーツを履いて待ち合わせ場所へ向かっています。
ありすの住む村は、イギリスの片田舎で古くからの村のしきたりが多く残っていました。
村長の娘だからか、いつも村人達に注目されてしまう。
みんなの目
「みんなが見ているから、きちんとしなさい」と親に言われて育ちました。
ありすはそんな生活を「窮屈だな」と思っていました。
ありすには、秘密の友達がいます。
初夏に森を散策していたときに、
泉で水浴びをしているケンタウロスを見かけたのでした。
その美しさに見とれてしまい、一瞬で恋に落ちたことは誰にも言えませんでした。
そのケンタウルスとは、年に2回冬至と夏至にしか会えないため、
会える時間は特別な時間となりました。
森の小枝を折るのが合図となり、ケンタウルスはいつのまにか泉に現れるのでした。
ケンタウルスは、毎回ありすに不思議な国の話を聞かせてくれました。
ある日、村人達から
「村長の娘が野獣と通じている」という噂が流れました。
それから、ありすはケンタウルスと会うことを控えましたが、
噂は消えずおかしな方向へと向かっていきました。
その夜、ありすが眠っていると枕元に魔女が現れました。
「野獣が人間にに見える薬があるよ」と囁き
魔女はありすに等価交換を持ちかけ、条件はありすの声と交換だと言いました。
夢の中でケンタウルスに相談すると、そんな話には応じなくていいと言われました。
「なんとかするから、きみは待っていて」
「きみは決めるだけでいいから」とケンタウルスは言いました。
「いつまで、待てばいいの?」
「何もしないで待っていて、大丈夫かな」
焦る気持ちを抑えて、夜空を見上げると星が流れました。
翌朝、ありすが外の騒ぎで目覚めると、
遠方で火事が起こっていて、村人達は慌てて火を消しに向かいました。
薬を持ちかけた魔女がいたので近づいていくと、魔女は天を見上げていました。
「そういえば今日は冬至だね、この騒ぎに乗じてお行き」と、ありすの背中を押しました。
「一度不思議な国に入ったら元の世界には戻れないよ、流れる時間が違うからね」
「覚悟は出来てるかい?」
ありすは小さくうなずくと、ケンタウルスの待つ泉に向かって走りだしました。