プロローグ・俺ノニチジョウ
「行ってきま~す…」
俺は、台所で食事をのんびりと取っている両親に力なく呼びかけて、愛用のスニーカー(メチャメチャ高かった)を履き、玄関のドアを開ける。遠くの方でお袋が「行ってらっしゃい」といっているのを確認し、俺は外へと一歩、また一歩と踏み出す。
…いつもと変わらない、朝の一コマ。
空には雲一つと無く、真っ青だ。だというのに、吹き抜けていく風は、体中刺さる様に痛い。吐く息はもう既に白くなってどこかへと消えていく。朝食をとりながらなんとなく見ていた朝のニュース番組でやっていた天気予報では『今日は気持ちの良い空が広がり、陽気も昨日よりは良くなるでしょう』なんて言って微笑んでたけどさぁー、昨日の方が暖かかったよ?全然。
「さぁむ…」
当てにならない天気予報はもう脳内から消し去ろう。………(処理中)………よっし、完了。
そんなバカなことを考えながら見慣れた通学路を歩いていると、不意に後ろから声がかかった。
「そこのおにいさーん!危ないよおおおお!」
振り返ると、そこには前髪を上げ、学ランの下にyシャツ、その下に深緑のTシャツを着て、自転車を走らせてこちらへ迫ってくる、親友の姿があった。
親友は、とびっきりの笑顔でこちらへやってくるが、親友が乗っている自転車は、どんどん俺に近づいているというのに勢いは衰える気配すらない。このままだと…正面衝突ッ!!
「流星!!おまッ、チャリ止めろおおおおおおおおおお!!!」
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…
とっさに迫りくる自転車を叫びながらよけた俺は、息を切らしながら親友を睨んだ。
「流星ッ!またお前かああああああああああ!!!!!!!」
「お、潮、おはよー」
「おはよーじゃねーよ!!!!」
朝から思いっきり叫んでいると、周りにいたおばさんやサラリーマン、女子高生、小学生、中学生、八百屋のおっちゃんまでこちらを見てくすくすと笑って去っていく。
「ほらー、潮が騒ぐからみんな笑ってるじゃん。おれっち恥ずかしいよおおー」
「俺のせいじゃねーよ!!」
これも、いつもと変わらない朝の光景。
これが俺の毎日。
これが俺の日常。