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男という男
男は、男ではない。
股間には膨らみもへこみもなく、穴というものが存在しない。男だろうと女だろうと胸部に存在するべき突起というものも、ない。
それでも男は自らの身体の出来から、性別を求められる場では男として振舞ってきた。
更に正確にいうのなら、男は人ですらない。
しかし実際に男をそうと見抜けるものは多くなく、やはりこれも男は種族を求められるありきたりな殆どの状況を人として振舞ってきた。
そして男には、名前が無い。
そも、例え如何に特殊な存在であっても名前というものは全てのものに境界線を引くものであり、これには性別も種族も関係ない。
それでも男は、自らに名前は無いと考える。彼が過ごしてきた経験から、名前という概念を否定する。
故に男を名前で呼ぶことはできない。否、呼ぶことはできるが、それは名前にはならない。
それが男という男だった。
そうした男は今、異界の地で目覚める。