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遊楽生活@異世界にて  作者: YaTaro
5/12

第5話 夢の楽園はいずこ

 ああ。天よ。


 ワシは、この世で一番見てはいけない空間に立ち会っているのではないだろうか?

 光源の逆方向に目を向けると、既に忍者の半蔵が血を流して倒れていた。


 否、鼻血を流し、倒れていた。



 目を背けないといけないような背徳感に苛まれながら、ワシは覚悟を決めて、目を隠していた両手をどけて、瞼を開ける。


 徐々に、網膜に光が差し込んでくる。


 その眩しさに、目を思わずつむりそうになったが、男の意地で。そこは男の意地で。


 ぬぉぉぉぉぉおおおおおおおおお。


 踏ん張る。


 踏ん張ってみせる。


 ぐあぁ。

 その光を、全身で受け止める。規制など知るものかと。



 **********




 ワシは、元の世界に戻ったら、もし、息子がいたら大いに自慢しようと思う。

 一国一城の主のままでは、遭遇できやしなかった戯れを。


 神々の戯れを。


 エロい身体欲しさに群がってきた、野獣共に一泡吹かせてやろうぞ。

 そう高らかに宣言して、始まった牝馬撹乱作戦。


 作戦は、着々と進行していた。


 牝馬ケンタウロスの寝床に忍び込み、枕元でサキュバスたちは、甘い香りを漂わせる。

 そして、足を畳んで、首を横にしている牝馬には、睡眠時間が短いためにすぐに対応。

 立ったまま、寝ている牝馬には、文字通り馬乗りになって、対応していた。


 そして、その作業を横で見ながら、密かに想う。


 ああ。ワシも夢にかけてもらいたい。と。


 横になっている馬の中には、膝枕をしてもらっている者もいて、なかなかの百合じゃのと。関心に思う。


 そして、サキュバスたちは、馬を催眠に陥れながら、ニヤニヤ笑い、談笑を始める。


「この子。すぐに引っかかったわよ。相当、欲求不満だったのね。雄のフリをして、近づいたら、早々に釣れたわ」


「私も、夢の中では、ケンタウロスに化けで、どこかわからないけど、肌をチラつかせたら、イチコロだったわ」

 クスクス笑っている。


「男も女も、単純よね。特にこんな戦場の最中じゃ。情事なんて二の次だものね。」


「たしかに、そうよね。不謹慎ですもんね」

 そんな言葉を聞いて、ワシの世界も戦場だらけで、まともに満足した営みは送っていなかったと振り返る。



「あーあ。やだやだ。戦なんて、この仕事終わったら、ゆっくりしたいわ。」

 そういう、彼女がちらっとワシを見る。


 服の合間から、肌をチラつかせる彼女は、暑い暑いと言って、ワシに聞こえるように呟く。

 太ももの柔らかそうな合間を覗かせて、汗を書いて、ぐだっと倒れ込む。

 うーん。と背伸びをして、髪の毛をまとめるために、うなじを覗かせる。


 もしかして、ワシ誘われてる?


 彼女に一歩近づこうとして、着物の裾をミレイに掴まれる。


「あなたも、催眠に掛かりますよ」

「ひっかかるのも、本望」


 バカ。

 ミレイにちょんまげを、ひっぱたかれる。

「ワシも掛かりたい」


「だめよ。あなたは」

 ミレイは裾を更に強く引っ張り、抵抗する。


「なぜじゃ。」


「あなたは、シオンお姉ちゃんの為に、温存しておいてもらわないと、困るの」

 ぬぬぬぬ。


 その名前を出されると、抗えない。

 抗えないが、抗えないが。。。


 くぅ。悔しい。

 ワシは煮え切らない想いを、発散するために、何気なく手を振る。



「きゃあ」

 つい、勢い余って、柔らかいものに触れてしまった。

 包み込まれるその感触に、ワシの知覚は飲み込まれる。


 意識を集中しろ。

 意識をこの一点に。


 ゆっくりと、指先を動かす。ピアノで旋律を奏でるように。

 子守唄を歌うように。

 やさしく、触れるか触れないかの絶妙な空間感覚を呼び覚まして、触れるという行為に及ぶ。


「なにすんのよ」

 ブヘ。


 横から、正拳突きが飛んできて、ワシは仰け反り、思わず、野営用のテントの支柱に寄りかかるように倒れてしまう。



「なにごとだ。ん?女性用のテントが倒れたぞ。まさか、抜け抜けと出し抜いたものがおるな。だれだ」

 ケンタウロスが走ってくる音が聞こえる。


 まずい。


 わしは冷や汗を書くが、天幕が倒れ込んできて、前が見えない。


「こっち」

 ミレイのか細い声が聞こえる。


 ワシは、その声がする方向へ、ゆっくり、ホフク前進を行い、なんとか暗闇に逃れた。


 気がつくと、ワシの周りには、ミレイと半蔵しかいなかった。


「美女たちは。」

 ワシが、ミレイに尋ねると答える

「彼女たちは、牝馬に催眠をかけたあとに、魔法で、城へ戻ったわ」


「そうか。。。」


 少し、、

 少しどころか、とても、残念である。


 うむむむむ。

 とても、とても。。無念。


 できれば、もう少し、あの空間に身を起きたかった。


 急いで、森の奥、木々と木々の切れ間を塗って、暗闇に身を隠したために、今、自分がどこにいるのか。迷う。


 後ろを振り返ると、ミレイが、城へ帰る準備をするためか、なにか小言を唱えている。


 そして、置いてきた家臣たちのことを考える。

 目下、最大の難関は右翼と左翼に展開する巨人級のゴブリン2体。

 そして、徐々に方位を確実なものにするように、囲い込みをしている。小ゴブリンの軍勢と、先陣を切って、駆け抜けるケンタウロスの部隊。


 長老の興隆の弓矢は、ケンタウロスの兵団長の頭を撃ち抜いて、しばし、足止めをしてくれている。

 小ゴブリンの軍勢には、古株の力自慢の文太が、対応してくれている。


 ゴブリンと人間、どちらが力が強いのかは、はかりようがないが、多勢に無勢。


 せめて、対等なくらいに戦力差を縮める必要がある。


 ワシはしばらく、歩き回って、思案を続ける。

 遠くの方からは、ゴブリンたちの笑い声が聞こえる。


 こんな時間まで、起きているのか。

 夜行性なのか?

 体力が有り余っているのか。


 むしゃむしゃ、食べ物にありつく音が聞こえる。

 硬いものを噛むときの勢いのよい食らいつく音。

 歯茎に力を入れて、引きちぎる際の漏れる息。


 これがいわゆる。共食いというやつか。



 ぐぅぅぅ。

 そうだ。ワシ。こちらに来てから、ご飯食べてないのだった。

 腹の居所が悪いのか、それから、複数回、腹が鳴る。


 はぁ。ワシはため息をつく。

 あんな、豆は食ったうちに入らんよ。


 城で渡された、ミレイが作り出した豆がポケットに入っていたのを思い出し、口の中に放り入れる。


 苦い。


 ちゃんとした、飯を探さんと、勝つ戦にも勝てぬな。


 そんなことを考えていた際に、ふと、耳に心地よい聞き慣れた音が入り、耳を凝らす。

 なにか、を折る音。


 茎がポキっと折れる音だった。


 短く折られたそれを、むしゃむしゃ食べる音が聞こえた。


 そして、ワシは、疑問が湧いた。

 なぜ、こんな不毛な土地に野菜を食べる音が聞こえるのかと。


 城から5里分は不毛な大地が広がるこの地にから、そんな音が聞こえているのが想定外だった。

 地図を見たときの違和感。それは、一つだった。

 なぜ、不毛な土地の北側にか細い河川があるのかということだった。


 この事実から推測される現象は、自然の耐力はあるはずなのに、人為的に水資源がコントロールされているのではないかということを示唆していた。



「ありがとうございます」

 か細い、女の子の声が聞こえた。


「ほら、帰るわよ」

 ミレイがそんなことも、つゆ知らず、ワシに話しかけてきた。


 んんんん。

 ワシは衝動的に、彼女の口をふさいで、そのか細き声に耳を傾ける。


「ほら、食べ物もらえたよ。」

「あ、ありがとう」


 暗闇の中、周囲に無数に広がる炎の灯火に目を凝らし、その居場所を特定する。


「ミレイ。ワシはもう、この距離からだと見えないんじゃが、お主は見えるか?」

 ん?

 ミレイは、やっと自由になった口元を動かし、ワシに少し体を近づけて、ワシの指差す方向に視線を合わせる。


「見えるわ。。あれは」

 ミレイは、その声の主を確認するための、特徴を探し出す。


 ボロボロの服に、金属の腕輪。

 髪の毛は、切り取られ売られたのか。

 雑に裁断した痕があり、そのまま、その特徴的な耳の形を確認して、ワシに告げた。


「あれは、エルフね」


 ミレイの息を呑む音が聞こえる。


 エェェェルゥゥゥゥフ


 そう、織田信長様にお会いしたときに、頂いた。かの洋書に書いてあった。

 自然現象を操作する妖術を用いることができる種族。


 百歳まで生きる長寿もいながら、その姿は、老いることなく娘の状態で、生をまっとうする。夢のような種族。


 そんな娘達が、こんな場所で、囚われているというのだ。


 ワシは居ても立っても、居られなかった。

「ちょ。ちょっと。」


 ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。


 そして、気づいたときには駆け出し、牢屋の前にいるゴブリンの顔面を殴り倒し、エルフッ娘が驚くのを知りつつ、緊張をほぐすために、日本古来の登場を演じる。



「ワシ・村上幽連がそなたたちを助けるために、参上つかまつっっった!!!」

 ワシは見得を切り、ここに宣言した。



 エルフを虐げるなんぞ。許さんと。






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