第3話 異世界に来た理由
一国一城の主になった宴会の晩に厠へ向かうと、美少女がいた。
そして、便器から出てきた美少女。
ワシが、出会ったその美少女の名は、ミレイ。
そして、そのミレイに案内され、異世界に参ると、変なピンクの部屋に招かれ。
ワシの姿は、知らないうちに若返っていて、目の前には、魔界の王妃で在られるシオンという、ワシの幼馴染によく似た王妃が立っていた。
ワシはしばし、沈黙を連ねる。
ここは、黄泉の国なのかと。
たしかに、小便の色は黄色かったが、飛び込んだ先は、ピンクの部屋。
そして、ワシが案内された部屋は、応接間のような豪華な部屋だった。
今の状況を理解するには、根気がいるようだ。
おそらく、ワシを含め誰も、理解はできていないだろう。
その自信はある。。。
では。解説をしてもらおうではないか。
そこの便器タウロスに。
「あ、あの。ワシは王妃様の横の席に座るって、どういうことでしょうか?」
「ん?なに?わざと濁していってあげたのに。わからないの?」
「い、いや、なにぶん。そなたも知っているはずだが。ここに来たばかりで、すぐに、王妃の隣に座れと言われましても。ワシもなにをすれば、良いのか。
皆目検討がつかぬのじゃ」
ワシは、便器タウロス改め、ミレイに声をかける。
元はといえば、そなたが、「助けてほしいの」って(第一話)で
わしに、背中から抱きついて、言ったのではないか。
と、言いたかったが、王妃の御膳の前なので、言葉を濁して、問いかける。
「つまり、シオン姉さんと結婚をしてほしいということ」
「姉さん?」
「そう。私の姉さんの婚約者になって欲しいの」
ワシは、しばらく、ミレイとシオンの顔を行き来させ、考える。
確かに、顔の似ている部分は多少なり、感じる。
が、胸が。
全然、違うではないか。胸が。
ワシは、シオンという王妃様の露出度の高い王族の服装を見て、ウットリする。
そして、やんわり、告げる。
「そなたは、ワシの義理の妹になるのじゃが、それでも良いのか?」
「便器タウロスっていう、あだ名。やめてくれるなら、それでイイわよ」
え。それだけ。
私は驚いて、ミレイを二度見する。
そして、咳払いをして、もう一度、シオンへ振り向き、こう告げる。
「ワシで宜しければ、婚約を致しましょう」
しばらく、場内に殺伐とした空気が流れたかと思うと、
シオンの眉間にシワが寄ったことが理解できた。
「嫌だ」
「結婚なんて、嫌だ。いくら、相手が、異世界人で強くたって。異世界人は嫌だ。」
シオン王妃は、頬を膨らませて、そっぽを向く。
「で、ですが、彼らの協力が得られなければ、この国は、ほ、滅びてしまいますぞ」
王妃の周辺にいる家臣がそう言って、狼狽える。
「そんなに、ヤバイのか」
ワシは、家臣の慌てっぷりを横目に、ミレイに尋ねる。
「父上が、生きていた頃までは良かったの。生きていた頃までは。
莫大な魔力を有していて、他国を牽制できていたの。
でも、数ヶ月前に亡くなってから、家臣の離反が頻発して、他国へ寝返ることが増えてきた。私達の国は、この世界では、唯一のサキュパスの国で、とても、世界の男どもから需要があるの。だから、なんというか。
とても、大変な状況なの。わかる?」
家臣の離反どこかで、聞いたような話じゃが、どこの世界でもあることなのだと、しみじみ感じる。
「では、もう一つ、質問じゃ」
ワシは、ひと呼吸、置くと、聞きづらい質問のためか、いつもより間をあけて、続きを話す。
「なぜ?異世界人は、重宝されているのじゃ?」
この回答次第で、ワシのこの世界での立ち回りが決まる。
一国一城の主から、次のキャリアが決まる。
昇格か?降格か?
わしが、どんな扱いを受けるのかが決まる。
「それは、もちろん、あなたの性欲が強いからよ」
そうミレイは恥ずかしげもなく、そう答える。
そして、すぐさま、疑問が浮かぶ。
ワシが、ミレイの前で、何か見せただろうか?
ワシが初めてあったのは、小便をしている最中。
ここで、女性らに囲まれていたとき。
思い当たっても、それくらいだろうか。
「なぜ。わかるのじゃ?」
ワシは疑問を確かめる。
「私達はね、見れば分かるのよ。形を見れば」
そういわれて、おもわず、ワシは自分の股間を触る。
そして、祈る。
神様、仏様。ありがとう。
「形が良いと、何が良いのじゃ。」
「魔力量が桁違いに違うわ。それから、あなたと契約をすれば、契約したサキュバスは、使える魔法の種類が増えるわ」
なるほど、いいことだらけ。
「それでも、シオン王妃は断ると。。。」
ワシは肩を落として、ぼそっとつぶやく。
やはり、リベンジなんて、無理だったのかと。
そのとき、場内の壁際から、強い衝撃音が床に伝わり、足元が揺れる。
「きゃっ」
ミレイはおもわず、よろめく。
「な、なにが起きたんじゃ?まさか、地震?」
ワシは動揺しつつも、横の壁に体を支えてもらっているミレイに話しかける。
「既に、敵に囲まれているのよ。あとは、私達がどこまで、足掻くかが勝負」
現状を把握してそうな、ミレイに対して、なるほど、と僕は頷く。
心配そうに、頭を伏せるシオンを見やって、横にいて焦るミレイに対して、ワシは、ゆっくりと口を開く。
「籠城戦は、得意じゃ。少数勢力でも、勝てることを証明して、ワシは、気に入られて魔王になる!」
ワシは、そう高らかに宣言をして、王室の扉をあけて、廊下へ出た。
扉の両サイドには、家臣がすでに、戦闘の準備をしていた。
「久しぶりの戦じゃ。籠城戦じゃ。気を引き締めるぞ。お前たち」
ワシはそういって、家臣を鼓舞すると、自分の自室に紙と筆を取りに向かった。