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外伝 相良エイミーの小さな幸せ

「こんなところがあったんだ……」

「すごいっしょー! 頑張ったんだから!」

「ここのご飯はおいしい」

「頑張ったのは慎太郎と海東とオレだけどな」

「魔物の駆除とかしたもん!」


 今日は元気に稲刈りである。

 元々よく食べるイドがいたのもあったが、栞とエイミーの蘇生もあり、我が家のエンゲル係数は爆上がりだ。

 特にお米の消費量。

 復活し、しばらく経ったエイミーだが、栞と違い日本食に飢えまくっていたのである。

 お前ハーフじゃなかったっけ?

 まあ日本育ちだから米が好きか。

 エイミーが死んだ頃はまだここの開拓前だったから驚くのもしょうがない。


「取り合えず、季節が合わないから魔法で無理矢理育てるぞ? 味が落ちても文句言わないでくれ」

「BooBoo!」

「だ、大丈夫だよ」

「我慢したくないけど、カレーが食べれないのはそれ以上の拷問」


 カレーライスにハマってるイドが口を尖らせる。


「でも魔法で育てるって、そんなこと出来るんだね?」

「魔法というか魔法薬だな。所謂成長促進剤の即効性の高い奴」

「そんなの作れるんだ? すごいね」

「おう!」


 素材を集めるのが大変だが、作る事は難しくない。

 その素材もジジイの整備したクルストの街の近辺であれば比較的容易に集まる。


「ああ、最近行ってこいされてたのって、この薬の素材だったんだ?」

「妙に植物系の魔物が多いと思った」

「ごくろーさん」


 集めるのはこの人たちである。


『おお、ちょうど良いところにきたな、ミチナガ』


 呼んでもないのに飛んでくる偉い人、竜か。ハクオウだ。


「よ、久しぶり」

「はくはくー! 復活したぜー!」

「ご無沙汰しております」

「は、初めまして! エイミーです!」

『おお、栞か。久しいな。先日は助かったぞ』

「えー? どれのこと?」

『なに、ミチナガに頼みがあってな。栞の言う通り女の姿で行ったら一発だったぞ』


 そう言いながら、体を光らせて人の姿を取るハクオウ。

 前回学んだオレは後ろを向ける紳士だ。


「おお! 相変わらず美人だねぇ! あれ? 服は?」

「破りたくないからの。待ってくれ、今着る」

「ちょ、道長くん! 見ちゃ、見てないね」

「前回は食い入る様に見てた」

「ふーん?」

「エイミーさん、見えてなくても冷たい視線なのは分かりますよ?」


 オレは背中で気配を感じ取れる男なのだ。


「ちょっと、なんで服から着るのさ。下着下着」

「いらんじゃろ」

「いるよ! ちゃんとしないと型崩れするって……するって……するらしいって……」

「毎度新しい形になるんだ。問題無い」

「グスン。でもスカートだからパンツは履いて」

「どうした? 栞、我の乳を揉んでも何もでぬぞ」

「にくいっ! エイちゃんばりのボインがにくいっ!」

「待て、くすぐったいぞ、わはははは」


 早く着替えてくれませんかねぇ!!


「それで、どした?」

「うむ。近い海から魔物が多く集まってきてのぅ。オーガ達が魚が取れなくて困っておったんだ。我が行っても水中な上に小さい相手だから倒し切れん。あのホムンクルスのメイドを借りれればと思ったのだ」

「ああ。確かにセーナにうってつけの相手だな」

「セーナのあれね? すごかった」

「あれ?」

「フルアーマー」

「え? あの頭の悪いの作ったの? 確か海っちが考えたあのイラスト!?」

「そうだよ」

「確か素材とか、使うエーテルとか考えると効率悪いって言って途中でやめたんだよね」

「稲荷火とか海東とかの範囲攻撃持ちがいなくなったからな。その穴を補うにはセーナに頑張って貰うしかなかったんだよ」


 考え方も悪いが燃費も悪い。

 ただしその燃費の悪さと引き換えにとんでも攻撃が行えるスーパー装備である。


「見たい! 連れてくる!」

「あ、じゃあ店舗閉めさせて。リアナの補助がいるし、イリーナだけ置いていくのもアレだからな」

「了解!」


 素早くかけて行く栞。

 そんな姿をエイミーと一緒に眺めていた。




「展開許可」

「はい! 展開します!」


 目を輝かせる栞に見守られている中、セーナが武装を展開させる。


「リアナ、接続」

「了解、セーナ」

「ええ」

「私やりたい!」


 エーテルボトルの取り付けをリアナの代わりに栞が手を上げる。リアナは笑顔で代わってあげる。大人だ。


「エーテルボトルより注入を開始してください」

「ここのボタンかな? お、入った!」


 栞がウキウキ顔でリアナの代わりにセーナの展開を手伝う。

 エイミーもなんだかんだで興味があるのか、覗き込んでいる。


「エーテルの供給を問題無く確認、両腕部より武装展開、続いて背面バックパックより下部武装をベルトに固定。栞様、エイミー様、少し下がってて、危ないから」

「分かった」

「ええ」


 二人が飛びのくと、その近くから長い大口径の砲身が伸びる。


「ターゲットスコープ起動」

「長距離武装の展開を確認しました。マスター、成功です」

「ご主人様、許可を願います」

「よし、成功確認。フルアーマーセーナ戦闘行動を許可。ハクオウと一緒に近海の魔物を討伐してきてくれ」

「了解だわ!」

「ん、わたしも行く。弓貸して」

「どーぞ。でも相手は水中だぞ? 当てられるのか?」

「魚釣りは久しぶり、矢に紐付けて刺して引っ張る」


 本当に釣りって表現でいいのか?


「リアナ、ボトルの追加を渡して置くからセーナから見える位置でフォローしてくれ」

「かしこまりました」

「あたしも手伝う! 海中の敵に攻撃は出来ないから見るだけだけど」

「ええ、宜しくお願いします、栞様」

「イリーナはリアナと栞の護衛な」

「はいです!」

「エイミーはどうする?」

「私は別にいいかな」

「そか」


 海中とはいえ、魔物と相対する訳だからね。エイミーには向かない仕事だ。


「じゃあいってらっしゃい」

「え? みっちーはいかんの?」

「今日の目的忘れんなよ」


 米育てんと。


「わ、私は手伝うから」

「ああ、ありがとうエイミー」






「タコとれた! タコ焼きやろう!」

「あー、じゃあたこ焼き用の鉄板作らんとなぁ」

「ホントに食べれるの、それ?」

「オレ達の故郷でなら普通に食えてたな。刺身にしても美味いぞ、酒にあう」

「それは興味深い」


 道長くんと二人で作業だ! そう喜んでたらオーガさん達が手伝ってくれました。二人きりにはなれなかったです。

 でも、いつもよりいっぱい喋れたし、いっぱい一緒にいられたから嬉しい。

 そんな事を思っていたら、みんなが帰って来ちゃいました。


 お米は大豊作です。道長くんはやっぱりすごい。


「ってお酒!? ダメだよ道長くん!」

「硬い事言うなよ。オレ、18だし」

「2個足りてないよ!」

「あたしも呑むー」

「栞ちゃん!?」

「大丈夫だよー。たまに兄貴達と向こうでも吞んでたし。エイちゃんもちょっとくらいなら、ね?」

「まあ全員戦いやら畑仕事やらで汚れただろ。工房戻って風呂入ってきなよ」

「あ、はーい」

「せっかく色々持ってきてくれたし、こっちでバーベキューしよう」

「「「 賛成!! 」」」




 さっぱりとした私達が戻ると、道長くんがハクオウさんと並んでエプロンつけておにぎり握っていた。

 なんかずるい。


「おかえり」

「ただいまー」

「お手伝いします」

「じゃあセーナ、リアナ、焼き始めちゃって」


 串にささったお肉や野菜なんかがたくさん並んでいる。

 イドさんの目が輝いていた。


「ハクハクはなんでおにぎり?」

「我も食べるのだ。ならば我が手伝っても不思議でなかろう? とはいうのは建前で、やってみたかったのだ」

「中身は何?」

「鮭っぽい焼き魚と、梅っぽい果物の梅干しもどき、昆布とか明太子もどきもあるぞ」

「いっぱい作ったね! てかどんだけ早いの!? 手が見えないよ!」

「モノづくりはオレの本職だからね」

「道長くん、そういえばお菓子とかも作ってたね。すごい手際。でもなんか……」


 多くない?


「手伝ってくれたオーガ達の分だよ」

「なるほど」


 そういう気遣いの出来る道長くんだから、みんな手伝ってくれるんだよね。


「私も手伝うよ!」

「あたしもやる!」

「イリーナも!」

「助かるよ。イリーナは海苔を巻いてくれ」

「はいです!」


 イリーナちゃんは手が小さいからね。こういう小さい気遣いも素敵だと思う。

 私は道長くんの横に、ちょっとだけいつもより近くに寄って、一緒に並んでおにぎりを握る。

 ふふ、なんかいいな。今度一緒にご飯作ろうかな。


「どした?」

「なんでもなーい」


 今日はいつもより、いっぱい道長くんとしゃべれたし、道長くんが作ってくれた美味しいご飯も食べれたし、なんか途中でフワフワした気分になったと思ったら道長くんに抱きあげられたりしちゃった!

 こんな日が、ずっと続けばいいな。


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おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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