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外伝 工房内大会議

「では、これより会議を開催いたしますっ」

「なんでここだよ……リビングでいいじゃん」

「こっちのが雰囲気出るじゃない!」


 ぴかりんの作った来賓室。でも姫様とかとよく作戦会議をする時とかに使っていた。会議といえばここってイメージがあたしにはあった。

 あたしが声高に主張すると、リアナとセーナとイリーナから拍手が起きる。

 うむ、良きにはからえなのだ。


「……それで? なんの会議なんだ? 店は順調だし、素材も取りにいって貰えてるからオレとしては現状で十分なんだが」

「そう、その現状の事なのだよ光道長君っ!」

「なぜフルネーム……」


 あたしはぴかりんの横に立ってぴかりんの腕を取って立ち上がらせる。

 意味は分かっていないみたいだけど、付き合って立ってくれたので横に並ぶ。


「これなのだ!」

「わかんないよ……」

「何?」

「なんで、しょ?」

「まずあたし、お店の制服です!」

「そうだな」

「うん、私も」

「お似合いですね」

「シオリは可愛いもん」

「えへへへへ」


 リアナとセーナは隙あらば褒めてくれるから好きだ。


「そしてぴかりんです」

「パジャマね」

「部屋着ね」

「普通、じゃないか、な?」


 初めて会った時と比べて背の伸びたこの男。どうにも並ぶとあたしは兄妹にしか見られない苦行に立たされているのだ。


「ぴかりん。背、伸びすぎ」

「知らんがな……」

「わ、私達はその、止まってたし……」

「ふ、甘いわエイちゃん」

「ふぇ?」

「エイちゃんのバストサイズの情報をあたしが持っていないとでも?」

「!?」

「こう、こうなんていうか……ボリュームが違うのだよ……更に、更に大きく……」

「そんなバカな……」


 ふ、たまにお風呂でエイちゃんのボインを揉んでいる専門家としては、あたしが見逃すわけがないのである。

 そして、あたしの情報に驚愕の表情を見せるのはイドリアルさんだ。

 分かってくれるか!? 同士よ!


「まあ、エイちゃんのボインの話は置いといて」

「ボイン言わないで……」

「ぴかりんの制服も用意すべきよね」

「いらんよ。接客しないし」

「急患の対応たまにしてるじゃない」

「上から白衣を着れば十分」

「待って、しおり」

「はいはい、イドリアルさん」

「ダボったいライトのままのがいい、ライトが恰好良いのがばれてしまうと、人気が出る」

「そ、それは!!」

「ダ、ダメだよ!?」


 イドリアルさんの真理にあたしとエイちゃんは驚愕する。確かにそれは不味い。


「そんな悲しい事言わないでくれ、イド……」


 それに対し、項垂れるのはぴかりん。


「錬金術師はな、モテないんだ……」

「え」

「ああ……」

「そ、そうなの?」


 ぴかりんモテモテだったのにね。


「そうなんだ?」

「ああ、基本的に一般人から見ると薬屋さんだからな……」

「よくわかんないけど?」


 本当に良くわからない。


「錬金術師は、ときたま家で爆発を起こしたり、毒をまき散らしたりするイメージがある。進んで錬金術師の家に嫁ごうとする女は中々いない」

「ああ……」

「そういえば」

「爆発のイメージ、この領は特にひどい」


 それは実際にゲオルグおじいちゃんが爆発を起こしてたからかな?


「でも、あくまでもイメージ。ライトは凄腕と既にこの街では認識されてる。凄腕の錬金術師は金持ちが多いから、見た目も合わされば……」

「え? オレ、モテモテ? や、姫様と……まあモテ期あったなそういえば」


 その空欄にはイドリアルさんが入るのかな? 誤魔化しても視線でバレバレだよ? あたし達の前でキスされてたって本人に言ったよね。


「満場一致で、ぴかりんのお洒落は却下されました」

「「 異議なし 」」

「い、意義を申し立てます!」

「却下です」


 ぴかりんはこれ以上モテなくていいのだ。


「ではもう一つの議題です」

「まだあるの?」

「まだあるのです」


 イドリアルさんが疑問を持っているが、この議題は通さなければならないのだ。


「お互いの呼び方を、変えたいと思いますっ!」

「!?」

「こちらに並んでいるあたしとぴかりんですが……」


 ぴかりんを見上げると、ぴかりんと目が合う。ちょっとはずい。


「あたしがぴかりんをぴかりんと呼ぶのがそろそろアホな子っぽいと思うのです」

「是非変えよう。そもそもオレ当初に文句言ったよな?」

「聞きましたが却下しました。それもこれも今という時の為の布石だったのです!」


 嘘だけど。


「ぴかりん……と呼んでたけど、一緒に住んでるし。下の名前で呼びたいかなって」

「別にいいけど?」

「えっと……み、みちち、みちにゃが! ……やだ! なんかハズイ!」

「人の名前呼んどいてハズイとは何事だ。あと噛むな」


 両手で自分の熱くなった頬を抑える。

 そんなあたしの頭に、こつん、と小突いて来るぴかりん。こういうやり取りが気軽に出来るのは嬉しい。


「ライト」

「はいはい?」

「しおり」

「はーい!」

「エイミー」

「は、はい」

「変えなきゃ、ダメ?」

「イドリアルさんはそのままでいいと思う!」

「うん」


 問題はあたしやエイちゃんだ。


「みち……みっちー!」

「明穂と被ったな」

「くぬぬぬぬ」

「ちょっと待って、アキホ? 女?!」


 イドリアルさん、立ち上がらないで下さい。


「明穂ちゃんは、私達と一緒にこの世界に召喚された子。光君と、えっと時巻君と仲良かったよね」

「家が近所だったんだよ。小太郎と明穂の家なんか並んでるぞ。まあ古い道場だったから明穂の家の敷地広いからってのもあるけど」

「ちゃんと帰れたんだよね?」

「ああ、女神様がそう言っていた。元の服装に戻して成長前の姿に縮めたらしいな」


 ダランベール王都の屋敷に保管してた衣服と交換されてたらしいね? 代わりに着てた服とか装備とかが転がってたってドリフィスおじさんが言ってた。


「もういない女なら、いい」

「えっと……」


 あたしは綺麗な顔のイドリアルさんを見る。

 イドリアルさんはあたしの視線を受けても表情を変えない。


「いどりあるさん……いどりある、さん……イドっち!」

「いいんじゃない?」

「構わないわよ」

「へへー! じゃあイドっちね! よろしくイドっち!」

「ええ、しおり。よろしく」

「エイちゃんはエイちゃんでいいよね?」

「うん」


 リアナ達は元々呼び捨てだからそのままでいいや。


「じゃあエイちゃんね!」

「ほ?」


 可愛い。


「光君じゃなくてみちながくんとかみちながさんとか」

「え? えええ!? わ、私も!? 栞ちゃん!!」

「うん。イドっちもイドちゃんとかイド姉とかいーどんとか」

「イド姉はなんか違くないか?」


 でも心なしか、みっちーもエイミーに期待してる目線をしているわ。


「同い年だし、呼び捨てでもいいくらいだけど」

「エイミーとライトは同い年なのね?」

「あたしもよー」

「しおり、嘘は良くない」

「うそじゃないもん! 泣くぞ!?」


 どこを見て言ったぁ!?


「イド、さん……本当、です」

「エイミー?」

「イドさん。イドさん。うん、みんなと同じようにイドさんって呼びます。へへ」

「何この可愛い生き物」

「エイちゃんなのだ!」

「エイミーだったわ」

「はう」

「じゃあその調子で! さんはいっ!」

「みちなが………………くん」


 聞こえないくらい小さい声でつぶやいただけなのに、すんごい真っ赤になってるわ。


「が、頑張って呼びます。みちながくん、みちながくん、みちながくん……」

「お、おう。別に頑張らなくてもいい事だからな?」

「が、がんばるんだもん! だから、だから! み、みちながくんも、私の事名前で呼んでね!」

「お、おう。了解した。エイミー」

「ひゃう!」


 なんとなく、エイちゃんの魂の叫びを聞いた気がした。


「栞もだな、よろしく」

「えへへへへ。よろしくみっちー」


 やった! 名前で呼ばれちった!

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おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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