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外伝 装備、もらっちゃった。

「♪」

「ご機嫌?」

「え、えっと。はい……」

「新しい装備、お似合いですよ。エイミー様」

「ご主人様がエイミー様の為に作ったものだもん! 似合うに決まってるわ!」


 そう。この冒険者装束も、靴も、杖も、光君が作ってくれたもの。

 以前はゲオルグ様が作成された物を装備していたけど、今日からは光君が用意してくれた物。


 光君に、体のサイズを知られてしまうのがちょっと恥ずかしかったけど。

 ふわっとした形の、黄色とオレンジのローブがとてもかわいい。


「わたしも、お願いした」

「イドさんも? イドさんの装備って……」

「エルフの里の。剣はライトに作って貰った」

「剣……」

「この剣は、すごい」


 一緒にダンジョンに入ったメンバーはイドリアルさん、リアナさん、セーナさん。

 イドリアルさんとセーナさんが前衛で、リアナさんが回復役。

 みんな私よりも随分とダンジョンに慣れているみたいで、心強い。


「エイミー、敵」


 イドリアルさんが視線を向ける先には、1匹の大きな赤い獅子がいる。

 まだ結構離れているけど、向こうはこっちに気づいている。


「わたしが抑えるから、魔法を試してみて」

「わ、わかりました!」


 私は光君に渡して貰った、30センチくらいの短い杖から魔法を放った。

 私の魔法は幻術。

 今回は、私達の前にあの獅子と同じものがいると思わせる幻影をイメージして足止めをすることにした。

 自分と同じ獅子の魔物と、突然相対して攻撃を受ける。そういう幻術。


「へえ」


 思ったよりも発動の早い魔法に、イドリアルさんが感心したように声をあげてくれた。

 獅子が足を止めて前足の爪を空中に振るっている。

 私達には見えない敵が、あの魔物には見えているのだ。


『ガルル!』


 獅子の魔物の体が突如傷ついていく。


「何? あれ」

「えっと、あの魔物に、自分と同じ、魔物が、襲い掛かってくる、っていう幻術を、か、かけたんですが……」

「勝手に傷ついて、ダメージ受けてるけど……」

「そう、みたいですね」

「おかしい」

「おかしい、ですか?」


 私の疑問にイドリアルさんが頷いてる。


「普通、幻術って強い衝撃を受けると解けるもの」

「そうなんですか?」


 以前、私が死んじゃった時も同じ感じで同士討ちをさせたけど。


「それに、幻と戦っているのに、傷付いていくのが変。前もこんな感じで使ってた?」

「い、いえ。前は目くらましとか、同士討ちさせたりとか……」

「同士討ち……」


 イドリアルさんがリアナ達に顔を向ける。


「リアナもエイミー様が戦われる姿は初めてみたので」

「セーナも、セーナが生まれた頃にはエイミー様、いらっしゃらなかったです」


 困ったように眉を下げるイドリアルさん。


「エイミー、あの魔物に炎に包まれているような幻影撃てる?」

「でき、ます」


 イドリアルさんに言われた通り、新しい幻術を重ねる。

 次第に獅子の魔物の体から煙があがり、焦げ臭いにおいが辺りに漂い始めた。

 獅子の魔物は、自分と同じ幻影に襲われながら、炎に包まれる。そういう幻影にかかっているはず。


「……戦いながらコゲてる」

「です、ね」

「重ねてかけられる幻術、魔力量もおかしい……」

「そうなん、ですか?」

「しおりもそうだけど、エイミーからもライトの魔力を感じる」

「ライト……光君の、魔力?」

「そう。ライトの魔力に染められてる」

「染められて、る?」

「夫婦になってから、多いとそうなる」


 ふうふ、ひかりくんと、ふうふ? えへ。

 あれ?


「多いって?」

「……営み」

「ひゃう!」


 ななな、なんてことを言い出すんですか!


「これは、由々しき事態……」

「そ、そうですね!」


 何を言っているんだって感じの目線で見られてます! リアナさん、セーナさん! 助けて!


「リアナは、早くマスターのお子様のお世話がしたいです」

「ご主人様の子、可愛いに決まってるわね!」

「ここここどもなんて!」

「そうね、わたしも早く欲しいわ」

「ええ!? い、いどりあるさんって、ひひひ、ひかりくんと、そうなんですか!?」


 そんな! もう光君に恋人が出来てるなんて! ていうか結婚してるの!?


「いずれ、そうなりたいと思ってる」

「いずれ……」


 そうこうしていると、獅子の魔物がコゲ臭い匂いと血しぶきを浴びて倒れてしまいました。


「ベタ踏みって、こういう事なのね……」

「え? え?」

「そんなに魔力を込めなくても、十分幻術は通じる」

「で、でも幻術は、相手に抵抗されやすいから、強く撃てって……」

「エイミーの魔力、幻術は強力すぎる。これは、加減を覚えさせないと大変な事になりそう」

「そう、なんですか?」

「とんでもなく強い。多分わたしでも抵抗出来ない」

「へ? 強い? 私がですか?」


 そんなこと、初めて言われました。


「ええ、あなたは恐ろしい程に強いわ」

「そう、なんですか。強いですか……光君の力になれるかな」


 私の呟きを聞いたイドリアルさんの表情が崩れる。どうしたんだろう?


「そうね。ライトの力には、間違いなくなるわね」

「そっか、ふふふ」


 良かった。生き返らせて貰っただけじゃダメだって思ってたんだ。光君の力になれる、それだけですっごい嬉しい。


「顔、緩んでるわ」

「え、あ。ごめんなさい……」


 ダンジョンの中でした。気を引き締めないとダメだよね。

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おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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