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60 金欠の錬金術師⑥

「金は冒険者ギルドが払ってくれるってさ。その代り、お前には依頼が出るから受けてくれって」

「冒険者ギルドが僕に?」


 眉を顰める、オレはこっそり視線で誘導すると、クリスが眉どころか表情を曇らせる。


「さあ、ミーアちゃん。今日はもう終い。セーナがご飯を作ってくれてるから食べてから帰るといい」

「ごはん! セーナさんのごはん美味しいです!」

「ああ、クリスは今回使ってなかった魔道具で気になるものがあるらしいから少し話してから行くよ。ご飯前にお風呂にも入っていきなさい。リアナにお願いしているから」

「はいです!」


 ご飯につられてあっさりと工房から出ていくミーアちゃん。

 何度かセーナに遊ばれて家でご飯を食べているので慣れたものだ。


「僕に師匠なんて無理だぞ? 大体君の方が腕がいいじゃないか。なんだこの工房、広さもそうだが設備も頭おかしいぞ」

「Aランクだからなオレは。でもオレは指導役には向かないよ」

「上手く教えてくれたじゃないか」


 ふん、と鼻から息を出すクリス。


「そりゃお前が錬金術の基礎を知ってるからだ。ミーアちゃんにはチンプンカンプンだったと思うぞ」

「そんなに難しい工程じゃなかったと思うが?」

「出てくる単語単語は理解出来てないだろうよ」


 素材の名前や相性の良い素材などは、数をこなして覚えるしかない。


「お前一人で今は店と工房をやってるだろ。そろそろ従業員が欲しいんじゃないか?」

「う」

「ミーアちゃんは錬金術師を目指している。父親と同じ薬を得意とする錬金術師になりたいそうだ。お前もそっち系統だろ?」


 一人の錬金術師が極められる系統には限りがある。そして主にその系統は3つ。

 薬品などを生産する薬学系錬金術師。

 武具などを生産する鍛冶系錬金術師。

 魔道具などを生産する魔具系錬金術師。

 オレやジジイみたいにビルダーと呼ばれる職業の人間と違い、錬金術師はそれぞれの得意分野に特化するものだ。


「同じ系統だからって、教えられるとは限らない」

「オレよりはマシだろ、学校に行ってないからな。簡単な錬金術は素材の良さと錬金具と魔力の量によるゴリ押しだ」


 繊細な作業をする時は慎重にやるが、基礎の部分は力づくだ。


「学校に行って学んだ分、お前の方が適任だし。上を目指すなら弟子がいた方が時間が取れるぞ」

「それはそうかもしれないが、だけど彼女は家も遠いし」

「片道1時間くらいだろ? そのくらい移動して働きに出る人間なんて珍しくない」


 街中で馬車や馬を走らせている人間はそうはいない。子供でも普通だ。


「クリスの作った薬はいくつか見せて貰った。正直丁寧に作られていると思うし、効果もピカ一だ。同じ素材、同じ設備で同じものを作ったらお前の方がオレよりもいいものを作るんじゃないか?」

「……店を手伝わせるだけならお前にも出来るじゃないか」

「オレの店にはリアナとセーナがいるし、イリーナも勉強中だ。ミーアちゃんの入る余地は無い」


 錬金術師の扱う錬成物は危険で高価な物が多い、そこら辺のおばちゃんにお店をお願いとは言えないのだ。

 信頼できる相手でなければならない。オレには優秀で確実にオレを裏切らないホムンクルス達がいるが、普通の錬金術師は中々そう言った相手に巡り合えない。

 家族に頼んだり、同じ場所で学んだ錬金術師同士で店を持つことも少なくないのだ。


「ミーアちゃんは本気で錬金術師を目指しているし、応援したくもなる。でもオレじゃ彼女の成長を促す事は出来ない。この街でそれを頼めるのはお前だけだ」


 他に錬金術師がいないのもそうだが、クリスはミーアちゃんの邪魔にならない様にポーションを卸さなかった過去がある。

 クリスなりにミーアちゃんを心配していたのだ。そこは信用してもいいと思う。


「結構お買い得だと思うぞ?」

「嫌な言い方をするなよ」


 苦笑しながらも、しっかりと受け答えをしてくれてるあたり、真面目に考えてくれているんだろう。


「魔力量は保証する。中堅どころの錬金術師と同じくらいの量は持っているぞ」

「そうなのか?」

「ああ、1か月ほど無茶をしていた結果だろう」

「そうか」

「そして、あの子は今後も無茶しそうな気がするからちゃんと指導してくれる人が必要だ」


 今はポーションばかり作っているが、子供というのは好奇心の塊だ。

 親父さんの手持ちの本なんかを読んで、変な錬金術に手を出しかねない。

 オレの方から口酸っぱく言っておいたが、何を拍子にそういった奇行に走るか不明だ。


「少し考えてみる。本人とも話さないと」

「ああ、その上でダメそうだったら言ってくれ」

「ダメだったらお前が面倒見てくれるのか?」

「そんときゃオレの伝手を使って王都送りだな」


 最終兵器ジジイである。

 クリスの中で良い結論が出るといいのだが。


「話は終わりだ。お前もメシくってけよ」

「それよりも先ほどから気になってるんだけど、この錬成具って……」

「ああ、それは魔石の加工時に……」


 この後リアナが呼びに来るまで延々と錬成具から始まった錬金術の話をし続けていた。

 ご飯が片付けられませんと怒られました。

 ミーアちゃんはとっくに帰っていましたとさ。






「売れまくり!」

「マスター、もっと交換用の魔核を作って下さい」

「ご主人様、新しい布を買ってもいいかしら?」

「おかずを一品追加希望」

「えーっと、えーっと、おめでとうございます?」


 感知アイテム、大人気でした。

 街の兵士や領兵の分まで増産決定っ!

うれまくりっ!

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こんな作品を書いてます。クリックするとそれっぽいところに飛びます
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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