58 金欠の錬金術師④
「とりあえず100くれ」
「300でしょう。街の外にでる依頼を受けるDランク以上の人間の全員に渡しておきたいくらいです」
「早いなオイ。や、早いと助かるけど」
スピードリーとおっさんの二人に声をかけてみたところ、高評価であった。
「どのパーティでも、斥候職ってのは不足してるんだよ。それとソロの人間にもな」
「私が現役時代もそうですけど、魔物の奇襲と言うのは怖いものなのですよ」
「魔物の奇襲は怖いかもだが、これは別に奇襲が防げる訳じゃないぞ」
あくまでも魔物が近づくと分かる魔道具だ。
「野営の時は交代で見張りを立てるが、斥候役の人間以外は魔物の気配を感知するのがやはり苦手だ。ほとんどの人間が目や音を頼りに魔物の接近を察知するんだ」
「それはそうだろうけど」
「野営の時は見晴らしのいい場所で野営が出来る訳じゃない。見晴らしのいい場所では逆に魔物から発見される危険性もあるからだ。だが慣れていない人間が見張りをする場合、そういった場所で野営をせざるを得なくなる」
オレが野営をする時なんか見張りは人任せだったからなぁ。
「そんなこんなでこの魔道具、あればあるだけ嬉しい」
「腕輪自体は1つあたり4万ダランくらいか? 魔道具の魔石の魔力が切れたらこっちの加工した魔石と入れ替える。一ついくらくらいがいいかな」
「あんま高くしないで欲しいのだが」
「それは何の魔石を使うんだ?」
「魔法が使える魔物ならなんでもいいけど、腕輪のサイズがこれだからあんまり大きい魔石じゃダメだな」
「そうなのか? それじゃあゴブリンソーサラーとかどうだ? この間の討伐で腐る程手に入ってるが」
「いけるいける。あとは手軽なところだとハードアントとか」
「いやいや、それBランクの魔物だぞ! 基本的に群れるんだから!」
まとめて手に入った魔石で重宝したのだが。
「単体だとDランクですね。それでいえばこの辺りの魔物だと、キュローキャロットでしょうか」
「どんなの?」
知らない魔物だ。
「根が二股に分かれた人参の魔物だな。スピードアップの魔法を使う魔物だ。魔石はこれ」
どこからともなくおっさんが魔石を取り出してきた。
「ああ、これくらいが丁度いいかな。出来れば1個あたり5000は欲しい」
「まあ、それくらいなら許容範囲か? それでも高いが」
「使用済みの魔石、500で買い取るか? 再加工出来るし」
「ポーションの瓶の回収と同じ方式ですね」
「なあ」
「うん?」
「その加工、ミーアにも教えられないか? 本体じゃなくて魔石の方」
「んー、教えられるけど……難易度は高くないから」
「頼みたい。あの子はポーションで生計をたてられているがいずれは錬金術師の学校に通うなり、どこかの錬金術師の弟子になるんだろう? 今のうちに経験と資金を手に入れておいた方がいい。父親の遺産だけでは学校に入れても、それだけで終わりだ。どうせ王都にいくならもっと余裕がある方が良いし、人より優れた部分が一つでもあった方が良い」
確かに魔石の細かい加工を任せられるなら任せたい。
「お前のそれが錬金術師の秘儀の一つというのなら教えなくてもいいが」
「技術的な面で言えばそこまで特殊な技は使わない、でもなぁ」
「だめなのか?」
「あの家にある加工道具では作れないから、錬金道具を追加で買わせないといけない」
「そ、そうか。高いのか?」
「高い。それと高温になる魔道具だ。更に生きたスライムも使うから子供には任せられない」
「そうかぁ」
がっくり来ているおっさん。
「オレの工房でやらせてもいいけど、なんか弟子入りさせるようでヤだな」
「弟子入りさせろよ」
「ヤダよ、第一オレは領主のソフィア様の命令でここにいるんだ。また移動する事だってあるかもしれん」
そんな事はないけど、いろいろ理由を乗せておいた方がいい。
「それもそうか、難しいもんだな」
「やり方だけでも見せておいてあげてください。それこそライトさんがいなくなってからでもミーアちゃんやクリスさんが出来るように」
あ、余計な事を言った気がする!
話の切り方が下手すぎるっ




