51 ダンジョンへ行く錬金術師⑥
20階層の階層ボス、紫鳥という毒を吐く恐竜みたいなサイズの地面を走る鳥もさっくり討伐し、21階層以降の山岳地帯も突き抜ける。
山岳地帯は魔物素材は多いが、鉱物素材が中心らしい。
流石に地面を掘っていては時間がかかってしまうので諦める。
イリーナも様々な魔物との戦闘に慣れてきたので、戦闘時間も短くなる。
空を飛ぶ魔物も多いが、なんだかんだと言って空中戦にも慣れて来たし、数が多い時は護衛のメンバーやセーナも戦闘に参加してもらっていたので効率がいい。
結果として移動速度も速くなってきた。
「到着です。30階層のボス部屋がここです」
やはり遺跡の様な扉が赤く染まっている。
これが白くなると、中が無人の証だ。
その扉の近くには何組かの冒険者が待機している。
ボス部屋が空くのを待っているようだ。
ケーシーは既に中か、終わらせたか。いない。
「あら、錬金術師の」
「やあ、オレも火竜を狩りに来たよ」
「依頼見たぜ。あんな無茶苦茶な依頼、普通は受けねえ」
「怒る前に一気に倒すか、怒り始めたら逃げ回って怒りが収まるのを待つのが普通だからな。あの中で攻撃に移るなんて普通じゃ考えられねぇ」
「烈火の連中が受けたのか。死ぬんじゃねえぞ」
「お、セーナちゃんじゃん! お茶しよ?」
「こんな子供をダンジョンに連れて来たのか!」
「やめとけ、その子オレより強いぞ。20階層の化け鳥を一人で倒したんだから」
「マジか!」
「あ、見た事ある! エルフのイドリアルと外で訓練してた子だ!」
「エルフの弟子か!」
「そいつはすげえな」
「耳と尻尾触りたい」
ここまで来る冒険者パーティは中級の上位から上のパーティが多い。
そしてそういう連中はオレの店に世話になっている人が多いので、見た事のある人間が結構いる。
「順番待ちか? どのくらいで次いけそうだ」
「あー、前のパーティは見ない顔が多かったな。場合によっては全滅もある」
「そうなんか?」
「あんたの依頼を見て息巻いてた連中だ」
それはそれは。
「あれの苛烈さを知った上で入るんなら問題ないんだがなぁ」
「腹の中身が空っぽになるんじゃねえかってレベルでブレス撃ってくるからな」
そいつはすごいな。
順番が来るまでまだ時間がかかりそうなので、オレは手提げから簡易のキャンプセットを取り出す。
セーナと一緒に野菜や肉を切って煮込んで簡単なスープを作る。
物欲しそうにしていた他の冒険者達にも器があるならと配る。
器が無い人はごめんなさいだ。誰かに借りてくれ。
他の冒険者達と雑談しつつ、手持ちの素材でいいのがあったら買い取ったりハイポやマナポと交換したりした。
ダンジョン内での休憩場所にしている冒険者もいるため、実際に火竜と戦う為に待機している人以外もいる。
ダンジョン内の出入り口付近は魔物が来ない安全地帯らしいのだ。
ダンジョンは闇の女神ディープが人間の成長と、力ある人間の魂を回収する為に作ったシステムらしい。
月神教の本拠地で管理しているダンジョンの最奥は冥界に繋がっているとの噂もある。
実際にダンジョンで繋がっている場所を知っているから本当かもしれない。
「さて、次はオレ達の番だな」
「ああ」
「退却の渦の場所、必ず確認してくださいね。お前達、対火の魔道具、起動させるぞ」
「起動確認」
「同じく」
「おっけーだ」
ウチのメンバーは特別緊張していないし、烈火の4人も落ち着いたものだった。
扉をくぐると、山岳地帯と同様に岩肌の荒野が広がっていた。
そして上空から、真っ赤な鱗に覆われた竜が翼をはばたかせながら降り立って、こちらを睨みつける。
『グラアアアアアアアアア!!』
強烈な咆哮をあげた火竜に、カブラさんが回り込む様に走って接近する。
早い。
「だああああああ!」
長い首の動きだけでカブラさんを追っていた火竜が尻尾を振り回す、それをジャンプ一つで飛び上がりよけつつ、その尻尾をカブラさんが斬りつけた。
火竜の尻尾から鱗がいくつかはじけ、小さな出血が広がる。
少なくとも、火竜の鱗を斬りさける程度には良い武器のようだ。
『グルルルル!』
火竜が地面に降りたカブラさんの方に体を向ける、その時、火竜の顔にその反対側から矢が放たれた。
ケビンの矢だ。
強弓とは言わないが、火竜の注意が削がれる。
『ガアッ!』
そのケビンさんに向けて火竜が火球を口から吐き出した。その火球をドワーフのグリンさんが盾を構えて防ぐ。
グリンさんの盾に当る直前に火球は破裂し、爆発が起きる。
爆煙が晴れた先、グリンさんは勿論、その後方にいたケビンさん、ジャックさんも無傷だ。髪の毛一本たりとも焦げ付いていない。
その更に後方にいるオレの所には熱気も何も届かない。
「効果的!」
「予想通りっ!」
「想像以上だろ! まさかの無傷!」
「いいから援護を頼むっ!」
口から火球が放たれた瞬間に、ケイブさんが火竜に接近を果たしていた!
「はああああ!」
ケイブさんが全力で飛び上がり、火竜の顔の先を攻撃した。
胸部や腕部、脚部の鱗と比較すると頬や腋付近の鱗は柔らかい。ケイブさんはそういう部分を的確に狙えている。
「アイシクルダイバー!」
「フロストスネーク!」
ジャックさんの氷の魔法に合わせて、オレも杖の先から氷の魔法を地面に這わせる。
ジャックさんの放った氷は地面を突き進み、火竜の足元に達すると地面と右足を氷でつなぎとめた。
オレの放った氷の蛇も同様だ。地面を高速で這いずり、左足に絡みついて地面に繋ぎとめる。
「「 今だ! 」」」
「任せろぉ!!」
「はいっ!」
火竜は自分の足元の氷を破壊するべく、尻尾を振り回し腕で大地を削る。
その振り回す腕にピンポイントでセーナの矢が刺さり、うめき声をあげて上がった顔の首元にケビンさんの放った矢が突き刺さった。
『グラウッ!!』
「なんであんなところに矢を刺せるんだろうな!」
ケビンさんが唸る様に声を上げた。
「アイスランス!」
火竜にジャックさんの放った大きな氷の魔法が何度もぶつかる。
先端の尖った氷の魔法ではあるが、速度が矢の様に早い訳ではない。鱗に阻まれて衝撃だけが火竜の体に伝わり揺らす。
足が固定されている為、その衝撃が全身に伝わり火竜の表情が苦悶に
そして火竜の顔が火竜自身の氷付いた足に向かった。
自身の足が凍り付いてる事を認識すると、自身の足に炎を放つべく口元より炎が漏れ出す。
火竜の意識がはずれた隙を見て、背後から背中を走り、ケイブさんが剣を閃かせた。
『グロオオオオオオ!!』
火竜の口から苦悶の咆哮が放たれる。
そして、ケイブさんの攻撃により翼の片方が見事に斬り落とされた。
モン〇ンのリオレ〇スのイメージっすねぇ




