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50 ダンジョンへ行く錬金術師⑤

「角兎ばっかだな」

「まだ第1階層ですから」


 遺跡の様な建物の入り口を入り奥に進むと、大きな扉が口を開いていた。

 中に入ると、そこは全く別の世界。見渡す限りの草原が広がっていた。

 子供でも倒せる魔物、角兎だ。

 人を見ても、逃げようとする弱い魔物なので基本的に害はない。

 こちらから攻撃すると、後ろ足で蹴りをしてくる魔物だ。角使えよ。


「第2、3、4階層までは攻撃しないかぎり襲ってくる魔物はいません。罠も10階層を超えないとないのでサクサクいきましょう」

「ああ、頼む」


 『烈火』の4人から案内を受けつつ奥に向かう。

 途中でお店を利用していたと思われる冒険者達に挨拶をされる(主にセーナが)そんな連中が多いな。

 セーナを口説こうと近づく連中もいたが烈火によってシャットアウトされていた。これも護衛の一環だと笑っている。

 草原を抜けると、再び遺跡の出入り口のような大きな扉。

 あれが2階層への道らしい。

 2階層も同様の草原で、角兎の他にもウーリーという小さなイノシシの魔物が出てきている。

 葉っぱをむしゃむしゃ食べてるのが遠目で見える。

 3階層も草原だ。角兎がいなくなり、ケロッグというカエルの魔物が出始めた。人気のない階層なのか、人もまばら。

 うん、スルー。

 4階層も同様、今度はウーリーが消えてガーゼラルという鹿のような魔物が出て来る。狩人っぽい人が多い。あと新人の冒険者だろうか? が指導を受けている風景が見える。


「次の5階層も草原です。ゴブリンが出るので注意してください」

「了解、イリーナに戦闘をさせるから手を出さないでくれ」

「わかりました」


 5階層に入ると、軽装ながらも装備が整った冒険者がゴブリンを圧殺していた。

 ここは薬草が取れるらしく、そこそこの数の冒険者がいる。


「ミーアちゃんの為に!」

「「「 ミーアちゃんの為に!! 」」」


 ヤバイ掛け声が聞こえたが気のせいだろう。

 ただ草原を歩いているだけなので基本的に安全だ。視界に入ったゴブリンも、積極的に近づいてこない様子。たまに進行方向で待っていたゴブリンも、セーナが弓で片付けていた。


「セーナ」

「あ、すいません。つい癖で」


 ホムンクルスに癖ってつくのか?


「まあイリーナもゴブリンは嫌という程相手をしてるからいいか」


 既に一生分のゴブリンを倒しているからね。


「ざんねんです」

「ごめんなさい、イリーナ」

「せーねぇはおっちょこちょいです!」


 そんな事を言いだすイリーナの頭をセーナが撫でていた。

 そんな事をしていると、第6層に到達。

 同じ方向に歩いている冒険者もいた為、ゴブリンとはそれ以降遭遇しなかった。


「第7層です。ゴブリンが常に3体以上で行動してきます」

「随分優しい設計のダンジョンだな」


 オレの確保しているダンジョンは、クラスメート達と中に入った瞬間に大量のゴブリンが湧いて出たのだが。


「まあ人が常に出入りしていますからね」

「らしいな、お。月見草ゲット」

「ゴブリンに注意して下さいよ?」

「イリーナがいるから大丈夫でしょ」


 そんな事を口にしていると、野生のゴブリン達が草むらから飛び出そうとしていた。


「イリーナ」

「はい! せーねぇ!」


 イリーナは手持ちの剣、今日はあのぶっとくとぶっとんだ剣ではなく、普通の剣だ。まあ普通の剣だから子供サイズのイリーナがもつと、身長くらいの長さがあるので長いけど。

 剣が長すぎて鞘から上手く抜けないので手伝ってあげないといけない。

 そんな剣を構えて、草むらごとゴブリンを一閃する。


「すっげえ切れ味」

「腕もいいな。一度に3匹のゴブリンを一撃で片付けている。あれは間合いがきっちり計れていないと出来ない」


 腕もいいと評するのは剣士のカブラだ。

 同じ剣を使うものとして、何か感じるものがあるのかもしれない。

 ちなみに剣はハクオウの牙素材なので、切れ味も耐久力も魔力の通りも世界最高クラスだ。

 ぶっちゃけ稲荷火の持ってた聖剣より剣としては高性能な自信がある。


「ぶったぎったです」

「その調子で頼むな」

「あい!」


 小さいイリーナは可愛い。

 ダンジョンの特性として、ボスルームの存在がある。

 それぞれのダンジョンで違いがあるが、このダンジョンのボスルームは10階層おきに存在している。

 一桁台の階層はイリーナがすべて対応した。9階層のみ、空を飛んで襲い掛かってくる敵がいたのでセーナとケビンさんが弓を使っている。

 イリーナも空中に魔力で足場を作って敵に攻撃していたが、弓の方が効率が良かった。

 大きくなればとボソリとつぶやいていたイリーナだが、人目のある場所でやるのは色々と問題である。

 そもそも、戦う為に体を成長させる種族なんていないし。

 お着換えも必要だしね。






「10階層のボスはファイトワラビーと呼ばれる二足歩行の獣です。人間の様な格闘術を使い、エリア内を縦横無尽に走り周る素早い奴です。一応スキップ出来ますが?」


 初ボスである。

 ちなみにファイトワラビーを単独で倒せる実力があれば、Bランク下位くらいの実力があると言われている。

 話だけ聞くと、大した相手じゃなさそう。近接戦闘のみで遠距離攻撃はないそうだ。

 パーティ内の半数以上がボスルーム攻略済の場合スキップ出来る。

 しかし今後の事を考えると、クリアしておくのが最良だろう。


「イリーナ、いけるか?」

「ばーっといってずばってやるです」


 心強い言葉を頂きました。


「ご主人様、念のためセーナの後ろに」

「ああ、ありがとう」

「我々がいるので危険はありませんが、脱出口の確認だけは忘れずお願いします。突入した扉の横に青い渦がありますので、そこに足を踏み入れれば1階層にランダム転送されます。他の階でも同様なので場所の確認だけは必ずして下さい」


 イリーナが護衛の3人にどういった攻撃をしてくるのかフンフン頷きながら聞いている。

 3人の顔が緩い。それでいいのか護衛達。


「わかったです! いくです!」






「あっさりだったな」

「イリーナなら当然の結果です」

「初見の時、僕達はどうだったっけ?」

「私は魔法を当てるのに苦労した気が……」


 突入、ファイトワラビー登場。首ちょんぱ。

 はい、描写終了です。

 11階層は草原から森のステージに。昆虫系の魔物や森に住む動物の魔物、トレントなどが登場するとのこと。


「とりあえず虫よけスプレーをしてっと」


 ぷしゅぷしゅと自分の体にかける。

 セーナとイリーナにも。ホムンクルスにも寄ってくる虫はいるのである。


「みんなもいる?」

「それは?」

「小さい虫が嫌う匂いの液体」

「あ、あたしは欲しいです!」


 斥候役のケビンさんは感覚が変わるかも知れないからと固辞。それ以外のメンバーに振りかける。


「あー、痒み止めでも作るかなぁ」


 蚊とかいるっぽいしね。

 そんなこんなで森林地帯を突き進む。

 途中途中で素材になる物もあるから回収しながらだ。

 そういうのを見つけるのはセーナが得意。


「ご主人様、暗闇茸です」

「おお」

「ご主人様、ミラートレントです」

「切るなよ? 殴り倒せ」

「ご主人様、顎虫です」

「つかまえろー!」

「罠です。中に毒矢がありますね」

「解除して~、毒矢は回収だー」


 そんなこんなで大量の素材を手提げに詰め込む。


「なあ、あのバッグどれだけ物が入るんだ?」

「ハンターコング群れごと入れてたよな?」

「トレントって殴り倒せるのか……」

「本職の俺より、罠の発見が早いメイドだと?」

「てかメイド服でダンジョンとか舐めてんじゃねえ?」

「今更かよ」


 他にも素材に使える木の実や木の根、昆虫に魔物。

 月見草も群生地を見つけて大量ゲット。相変わらずマナポーションには苦労をしているので大助かりだ。

 ダンジョン内では群生地で根こそぎ獲ってもまた再生するので遠慮なく頂けるのだ。


「てか進みがおせえ! 日が暮れるぞ! 店長! いい加減にしろよ!」


 あ、すいません。

「ひゃっほー! 素材だ素材!」

「いい加減にしろ!」


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こんな作品を書いてます。クリックするとそれっぽいところに飛びます
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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[一言] 角使えよは草
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