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44 錬金術師と新しい従者⑪

「マスター、エーテルとミサイルの補充をお願いします」

「主、魔力の補充を頼む、それと、その、着替えも欲しいのだが」

「セーナ、と。え?」


 フルアーマーセーナから飛び降りてきた妙齢の獣人。

 キツネの耳と尻尾以上に、小さなメイド服を無理やり着込んだその女性に目を剥く。


「イリーナか!」

「主、イリーナ大きくなった」


 はだけた服を手と大剣で身を隠し、恥ずかしがりつつも報告してくれるイリーナ。

 イドはまだ余裕なのか、前線で戦っているままらしい。


「うあああああ! 見たかった! こういうのって主人公の前で起きるイベントじゃねえの?」

「ご主人様、メタ発言はやめてよね」


 セーナも地面に足をおろし、背中を向けてくる。

 エーテルボトルはほぼ空だ。ギリギリまで戦闘をしていたらしい。


「右手のガトリング砲、魔力の消費が激しいわ」

「ああ、そうかもな」

「主、早く服をくれ! その、下着も弾けてしまって」


 尻尾でまくり上がっているスカートを必死に抑えるイリーナ。後ろに回りたい。


「あー、まずイリーナの魔力を補充だな。服もあれだしそのまま背中に手を付けるぞ」

「う、うむ」


 血まみれの大きい世界樹の木剣越しにイリーナが背を向けたので、手を付けて魔力の補充を行う。

 覗き込みたい気持ちを抑えて。

 魔力で強化される農具の鍬を使ったくらいで実は魔力をほとんど使ってないから補充も容易だ。


「あ、くっ。はうっ」


 艶めかしい声を上げるイリーナに魔力を補充すると、魔法の手提げから組み立て済のテントを引っ張り出して地面に置く。

 その中に体格が近いであろうリアナの予備のメイド服や下着をいれてあげる。

 イリーナはそのテントに逃げ込む様に入る。


「どうしてこんなに育った?」

「あ、ああ。イド様から教えて貰っていた身体強化を使っていてな。それを試しているうちに、このくらいのサイズなら効率がいいなと思ってたら」


 テント越しに話を聞く。


「大きくなったと。それならすぐに戻ってきなさいよ」

「すまぬ主、この状態でどれだけ戦えるか試したかったのだ」

「そうか。体に変調は?」

「ないぞ。しっくり来ている。小さい頃には少し大きいと感じていた剣が手足の様に動かせる」

「少し?」


 かなり大きいと思うが。

 肉体強化を使って戦う事を前提としてあの武器を選んだのだろうか?


「イド様には負けるけど、イリーナもすごかったんだから! まあ一番すごいのはセーナだけどね」


 そりゃセーナは空から敵をピンポイントで狙えるからな。そもそもイドもセーナもイリーナもゴブリンなんかワンパンなんだ。攻撃可能範囲の広いセーナが一番効率がいいに決まっている。


「そうか、セーナも頑張ったんだな。ありがとう。セーナは魔力の補充は?」

「ボトルの魔力しか使ってないから大丈夫よ!」

「わかった」


 オレはエーテルボトルを追加で2つ取り出してリアナに渡した。

 フルアーマー時はセーナの手が後ろに届かないので、他の人間がボトルの付け替えを行うしかない。

 それが終わるころに、イリーナも着替えが終わりテントから出て来た。


「セーナ、分かってると思うが一斉照射は無しだぞ」

「分かってるわよ! イド様やイリーナを巻き込んじゃう」

「ならいい」

「ふんっ」


 セーナの背面の空っぽになったミサイル格納庫を外して新しい物を取り付ける。

 ボムボムジュエルと呼ばれる魔物の素材を弾頭に使ったミサイルだ。魔力を推進力に飛び出すこいつは細かい敵を倒すのには便利。一度上空に飛び上がってから地面へと進むので遮蔽物を飛び越えて攻撃出来る優れもの。


「イリーナ、今回みたいに体に変化が起きるなら戻ってきなさい。ちゃんと検査をするから」

「了解した。主よ」

「セーナ、イドに疲れたら休憩するように言ってくれ」

「はい」

「イリーナ、剣を清めておきました」

「ありがとう、リア姉」

「ふふ、頑張って。しっかり働いてマスターのお役に立つのですよ?」

「もちろんだ!」


 木剣を肩に担いで、笑顔で返事をするイリーナ。

 セーナもボトルからエーテルの補充を終えて再び空中に浮かび上がると、イリーナはセーナのバックパックに飛び乗った。


「「 いってきます! 」」

「ああ」

「気を付けて」


 セーナが加速すると、再び二人は戦場へと戻っていった。


「あの姿のイリーナ、尻尾の触り心地とか変わるんでしょうか?」

「あ!」


 そういうのも気になるね!






 浄化石も魔王軍との戦闘の際によく使っていたものだ。

 魔王軍の魔物の毒や呪いに侵された水源や川を浄化したり、魔王領で安全な水を確保するのに多く使用した。

 手のひらサイズの石で、これを沈めておけば半年は効果がもつ。

 湖が広いのもあるが、滝が流れ込んできているので舟を浮かべて投げ込むのはやめた。

 ハクオウが体を洗いにくる湖とはいえ、湖の中にはどんな魔物がいるかもわからないからね。

 リアナのクロスボウに浄化石を取り付けて100個近く投げ入れた。

 オレは適当に撒いてといったが、リアナはきちんと等間隔で飛ばしてくれた。ホムンクルスマジ優秀。

 湖の底にも死体が沈んでるかもしれないが、そこまで責任は持てないのでそっちの死体は放置だ。ウッドゴーレムは水に浮けるが、潜る事は出来ない。

 ゴブリンの集落というか、街というか国というか。

 途轍もなく広かったので、酸の穴を合計で5つも用意しなければならなかった。

 その為ウッドゴーレムも大量だ。

 ゴブリン以外にも、ゴブリンの食料になっていたのか、それ以外に使われていたのか様々な魔物の死体が酸の穴に投げ込まれているのを眺めていると、魔王軍との戦闘を思い出す。

 こういう光景を見て、気分を悪くしていたクラスメートの女子が一人いたな。


「ウッドゴーレム、集落の家も破壊して投げ込むんだ。再利用させないようにな」

「ライト」

「ああイド、お疲れ様。ほれジュース」


 集落は片付いたが、周辺には逃げたゴブリンや元々集落におらず難を逃れたゴブリンがいるはずだ。セーナは上空からそれらを狙い撃ちしにいっている。

 完全に根絶やしにする必要はないが、あれだけの規模の集落だ。外にいるゴブリンも相当いるはずである。

 小柄なゴブリンはセーナの行動範囲から逃げられない。


「イリーナ、面白い」

「ああ、すごいだろ」

「ん、わたしの剣の技。どんどん覚える」

「剣が絡まない攻撃魔法とかはどうだ?」

「そっちは苦手みたい。風の魔法を撃たせるより斬撃を飛ばさせた方が効率がいい」

「そうか、大型の魔物とは戦えそうか?」

「力も強いから問題ない」


 剣聖の血が色濃くでてるのだろう。

 しかしエルフの血はどこにいったのだ? 力の強さか?


「でも強化魔法はすぐ覚えた」

「肉体操作系の魔法なら適性は高いだろう、前衛が任せられるなら問題無い」


 セーナはあらゆる武器の扱いに秀でているが、斥候役も兼ねている為、純前衛とはいえない。その穴を埋められるように設計したのがイリーナだが、少々尖がった性能になってしまったようだ。

 戦闘状態から抜けると、自然と元の大きさに戻るようで、今は再びちみっこイリーナに戻っている。


「ご主人様、戻りました。近辺にゴブリンの反応はありません。魔物自体も少ないです」

「良くやった、もう武装を解除していいぞ」

「はい。リアナ、手伝って」

「ええ、こちらにいらっしゃい」


 セーナは展開していた武装を収納すると、リアナにエーテルボトルやバックパックを外して貰っている。

 イリーナも手伝うようだ。


『道長、終わりかの?』


 なんだかんだで一番やんちゃしてたヒトが帰って来た。

 集落やらゴブリンやらその上位種やらを倒すのはいいが、気軽に地形を変えないで欲しい物だ。


「ああ、浄化石も大量に撒いておいた。2、3週間も経てば元通りだと思う」


 浄化石の力だけではない。

 元々滝から大量の水が流れ込んで来ていたのだ。地下へと水は流れて最終的に海にいくのだろう。流れがあるならばすぐに元の湖に戻るはずだ。


『助かった、感謝するのじゃ。戻ったら報酬は渡そう』

「ああ、そう言えば戻るんだった……」


 また籠に揺られて酔いながら戻らなければいけないのか。

 辛すぎる。

後ろからペロンてしたい。パートⅡ

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こんな作品を書いてます。クリックするとそれっぽいところに飛びます
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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