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43 錬金術師と新しい従者⑩

 集落へ戻る途中のゴブリンだろうか? そういうゴブリンが少しずつ出てくる。

 それらは視界に入ると共に、リアナが手に持った魔法の矢を打ち出すクロスボウで的確に撃ち殺してくれた。リアナは戦闘用ではないが、この程度のゴブリンならそっぽ撃ち出来る。


「マスター、いかがなさいますか?」

「んー、あれを使う事にする」

「あれ? ですか?」

「ああ、リアナはそのままオレの護衛を頼む」


 魔法の手提げから鍬を取り出して、地面を耕して畝を作る。

 そこまで大きい範囲ではないが、体力仕事だ。

 リアナに任せてもいいが、魔力を出しながらの作業だ。生身のオレの方が合っている。

 遠くで激しい爆発音やハクオウの咆哮、戦闘音が聞こえるが気にしない。


「さて、次は種を撒いて」


 畝一つ一つに等間隔に指をさし、種を埋めて土をかぶせていく。

 ああ、腰にくる。

 日の光も強いからじんわり汗を掻く。疲れるなぁ。

 時折背伸びをして腰を伸ばし、柔軟をしつつ作業を終わらせる。

 続いて、中に生命の水溶液と赤の水溶液と水を混ぜた液体をジョーロに入れて即席の畑に振りかけていく。

 程なくして、ピョコっと小さな芽が畑から生える。


「ジブリな世界だな」

「?」


 分からない単語にも笑顔で反応してくれるリアナを放置し、芽が育つのを待つ。


「久しぶりの作業ですね」

「ああ、多めに作っておいてよかった」


 魔王軍との戦いの際に使っていたものだ。

 膝上くらいまでの背の低い木が育つと、それらが枝を使い地面に立ち上がった。


「さあ、近くにゴブリンの死骸がある。それで成長してくるんだ」


 ザザッ! と立ち上がったのはゴーレムだ。今の状態はプチウッドゴーレム。

 目も口もないその小さなゴーレム達は方々に散らばって、リアナの倒したゴブリンに根を張って大きくなっていく。


「結構倒してたのな」

「頑張りました」


 作業に没頭している間にリアナが結構な数を倒していたらしい。

 そんなリアナが褒めて貰いそうなので撫でてあげる。

 くすぐったそうな表情をするリアナ。


「育ち始めましたね」

「死体が多いからな」


 プチウッドゴーレムが3mくらいの高さの葉の生い茂ったウッドゴーレムに成長。


「そこに大きな穴を掘るんだ」


 ザザ、とオレの指示に従いウッドゴーレム達が行動を開始。

 手は枝だし、腰もないからしゃがめないウッドゴーレム達は根を使い器用に地面を掘って土をどかす。


「そのくらいでいい」


 オレはウッドゴーレムの掘った穴に入り、穴の底や側面にパテのような特別な泥を塗りたくる。そして杖を取り出し炎の魔石を差して軽く炎を出して泥を炙る。

 ヒビの入ったところ中心に再度泥を塗って炎で焼く。

 自力では登れないほどの深さなので、穴の上にウッドゴーレムに運んでもらう。

 ウッドゴーレムは自力では登れないので、残念な事に1体はここで犠牲になる。

 それが終わったら今度は魔法の袋から水筒を一つ取り出した。


「ビッグマウスの胃酸を流し込んでと」


 先にこの泥でコーティングしないと、地面に染み込んで溶けてしまう。

 ウッドゴーレムは酸に負けてゴリゴリと酸に沈んでいく、南無三、南無酸。

 この胃酸はスーパー強力な酸だ。中々空気に溶け出さないので長期間置いておくのに非常に便利。


「魔王軍との戦いの際によく使われておりましたね」

「ああ」


 魔王軍との戦いで、多くの魔物を屠った時に困ったのが魔物の死体の処理だ。

 素材として有用な魔物は素材として保管していたが、当時のオレの作った魔法の鞄には限界があった。それに回収して周るにもオレとじじい、それと従軍の錬金術師だけではすべて回りきれない。

 すべての魔物が素材になる訳でもないし、今回のゴブリンのように何の役にも立たない魔物も当然多くいた。

 それらの処理をする度に、城から同行してきた兵士や騎士。それと冒険者達に戦闘以外の負担がかかり、進軍も遅れて行った。

 人間、死体処理をやっていると病んでいく。

 この作業が原因で前線から去った人間もいるくらいだ。

 だが死体をそのままにしておくと疫病の原因になるし、水場の近くでは水源を汚してしまう。

 元々何か所かに分けて燃やす作業を行っていたのを、燃やす作業を無くすため溶かす作業に変更。

 その為に色々と試した結果、このビックマウスという大きな蛙の魔物の酸が一番効率が良かった。こいつは自分の大きさ以上の魔物でも、飲み込みさえすればなんでも消化できる魔物だ。胃袋もでかいから一度に取れる量も多い。


「ウッドゴーレム、この辺りの死体を集めてこの中に投げ込め」


 オレの言葉にウッドゴーレム達が一斉に動き出す。

 周りには人間はいないが、念のため穴の周りに簡単な杭を出して紐でくくり柵を作る。


「器用にゴブリンを持ち上げますね」

「ウッドゴーレムになるとツタも出せる様になるからな」


 プチウッドゴーレム自体を作るにはそれなりの錬金素材が必要になるが、一度に大量に作れる。種と言っているが、偽物の魔物の核みたいな物だ。

 成長させるのに魔物の死体から栄養を奪わせるから、育てる分にはプチウッドゴーレムまででいい。一度に大量に作ったプチウッドゴーレムが死体でウッドゴーレムになり、魔物の死体を運ぶ労働力になるのだ。

 仕事が終わったらウッドゴーレムはその場に根を張り普通の木にもなるので、魔王軍との戦いで荒廃した大地の再生にも一役買う素敵な消耗品軍団だ。

 周辺のゴブリンの死体をかき集めたウッドゴーレムは、湖へと進んで湖に浮かぶゴブリンの死体も回収を始める。


「流木にしか見えない」

「で、ですね」


 泳げないから浮かんで進むしかないウッドゴーレムが湖を進んでいく。でも短い根の動きはイカみたいだ。

 死体の片づけはウッドゴーレムに任せて、次は湖の浄化に向かおう。

ビックマウスのマウスは口のマウスです。

ネズミのマウスではありません。


でっけー蛙の化け物です。げこげこ。

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こんな作品を書いてます。クリックするとそれっぽいところに飛びます
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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[気になる点] そっぽ撃ちってなんでしょう? Googleの完全一致で検索してもほとんど出て来ないです。
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