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42 錬金術師と新しい従者⑨

 イドにお礼のご飯を作ったり、浄化石を大量に用意したり、イリーナの服を用意したりして数日後、ハクオウに運ばれてとある海岸に付いた。


「うぷ、気持ちわるぅ」


 ハクオウが足で持てる大きさの籠に乗って、ハクオウの風呂と称する場所についた。


「鍛え方が足りない」

『情けないのぅ』

「そういうレベル、じゃ……ないんだ」


 籠はハクオウが翼を羽ばたく度に大きく上下するのだ。

 しかもそれが約1日。酔った。

 酔い止めも飲んだが、どんな高性能な酔い止めにも限界があるのだ。

 ちなみに一緒に来てるメンバーはリアナ、セーナ、イリーナ、イドの4人とハクオウ1頭。

 ホムンクルスの3人は酔わないし、イドは謎のエルフパワーで酔わなかった。ずるい。


『ほれ、あそこの峠を越えた先じゃ。人の歩みでもすぐにつくであろう』

「少し休ませて、くれ」


 リアナ、セーナ、イリーナも最初は心配してくれたが、心配してもしょうがない事なのだと理解するとドライなものだった。

 くすん。

 セーナの用意してくれた冷たいお茶に口を付けつつ、休憩をはさむ。

 サハギンや大蟹などの海洋性の魔物が視界に入るが、ハクオウの姿を見るとすぐに逃げ出してくれる。

 戦闘は無い。

 そんなこんなで移動して、峠の上に到着。

 眼下に広がる景色に言葉を失う。


「ここが」

「いい眺め」

『ふはは、ここの美しさが分かるか! 良い気分じゃ!』


 ハクオウの誇る様な声が頭の上から聞こえる。

 峠の先、大きな滝から流れ落ちる湖。その周りには森。

 そして湖の周りに大きく広がるのは謎の集落。集落って呼んでいいの? 簡素で出来の悪い家の様なものがいくつも、視界の先の先にまで広がっていた。規模がオカシイ。

 ゴブリンの死体が大量に浮かび、湖の湖岸部分が赤く染まっていなければきっと美しい光景だったんだろうな。


「ゴブリン、かなりの数だ」

『うむ。あやつらが我の風呂を汚しているのじゃ。腹立たしい』


 湖に近い部分の集落は潰されている。おそらくハクオウが攻撃を仕掛けた場所だろう。

 しかし統治も何もされていない様子だ。ただただゴブリン達が集まって住んでいるだけのようだ。

 ゴブリンイーターに現在進行形で襲われている場所まである。


『まあとりあえず風呂を綺麗にせねば』

「いや、あの集落を片付けないと解決しないぞ? 相手はゴブリンだし」

「倒し切れる? かなり多い。全滅させないと」


 あれは単純に魔物の群れだ、だがここまで大きな群れとなると、いずれ人間の生活圏にまで影響を与える可能性がある。特にゴブリンは鼠算式に増えるから不味い。

 ここがどこであれ倒し切るべきだ。


『ぬ? 全滅させてよいのか? ならばブレスを撃つか』

「ちょっ!?」


 頭の上から強烈な咆哮と共に、恐ろしい破壊の光が吐き出されて集落を襲った。

 集落の中心に広がり、奥の奥まで貫いた強烈な光が集落だった場所に剥き身の地面を生み出した。


「はくおうさますごい!」

「恐ろしい威力です」

『そうであろう! そうであろう! クハハハハ! たまにはこうやってストレスを吐き出さねばな』

「でも雑だな、おお。ゴブリンが大騒ぎしてこっちに向かって来たぞ」


 そこら中にいたゴブリン達が何か喚きながらこちらに向かって来た。

 まだ距離がかなりあるから準備をしよう。


「セーナ」

「はい!」


 オレはセーナにいくつもの装備を投げる。黒くて大きなブーツを両足に履いて、同じく大きな手甲を装備。

 メイド服の背中をこちらに向けたので、背面に黒いランドセルのようなバックパックを取り付けた。


「展開許可」

「はい! 展開します!」


 セーナの体が少しだけ宙に浮き、両手に嵌めた手甲からケーブルが伸びて背面のバックパックに接続される。

 バックパックが開き、両方の肩口から大口径の長い砲身が伸びる、更にバックパックが固定できるようベルトも伸びた。

 頭には大きなヘッドセットがつき、そこから半透明な緑色のスコープが伸びる。


「リアナ、接続」

「了解しました、セーナ」

「ええ」


 リアナがエーテルの大量に入ったガラスの容器2本をバックパックに差し込んで固定。


「エーテルボトルより注入開始」


 リアナの言葉と共に、接続されたエーテルがバックパックへゴポゴポと流れ込んでいった。


「エーテルの供給を問題無く確認、両腕部より武装展開、続いて背面バックパックより下部武装をベルトに固定」


 両肩と同じように、長い大口径の砲身が伸びる。


「ターゲットスコープ起動」


 セーナが目を見開くと共に、全身の武装からエーテルの青緑の光が立ち昇る。


「長距離武装の展開を確認しました。マスター、成功です」

「ご主人様、許可を願います」

「よし、成功確認。フルアーマーセーナ戦闘行動を許可する!」


 これはお蔵入りになっていたセーナの完全戦闘形態だ。クラスメート達との悪ノリの結晶でもある。

 クラスメート達と別れた後、大魔導士の海東のような強力な範囲魔法攻撃や、空戦魔導士の竹内のような空中からのピンポイント攻撃を失った。

 そのままでもいいと思っていたオレだが、先日のゴブリンの群れの時のソフィア様を見て、いざという時に必要になるかもしれないと思い開発を再開させたのだ。

 テストの時、オレがセーナに渡している魔力やセーナ自身の魔力だけでは火力が足りなくなってしまった。

 そこを解決するため、属性の方向性を調整したエーテルによる外部供給をすることで解決。


『お、おお! 格好いいのじゃ!』

「セーナ、すごい」

「イド、サングラスどーぞ」

「さんぐらす?」

「色付きメガネ」

「? わからないけど」


 その言葉に得意な笑みを浮かべるセーナは、ハクオウの頭よりも高い位置へと体を移動させた。

 その間にイドと一緒に黒いサングラスを装備。セーナの一斉放射は眩しいのだ。


「ターゲットスコープ起動。ターゲット、ゴブリンの群れ。最も効率的な照射角を選定」


 通常の人間では処理できない量の情報になるが、ホムンクルスのセーナであれば問題無い。セーナの瞳が激しく上下左右し、目標を定めた。

 同時に2門の肩口の大口径砲の角度が独立して動き、腰から伸びた2門の大口径砲の角度をそれぞれの手で調整。


「カウントダウンを開始! 5、4、3、2、1、ゼロッ」


 カウントダウン終了と共に、4門の大口径砲から魔法のエネルギーが強烈に放たれた!

 そのエネルギーはこちらに向かって来たゴブリン達を根こそぎ飲み込み、更に集落をも飲み込んだ。

 エネルギー量でいえば、ハクオウのブレスの方が圧倒的に多いだろう。

 だがエネルギーの効率とその圧縮率はセーナの方が上だ。


『目が! 目がぁ!!』


 一頭ほど閃光によるダメージがあったようだが、流石にドラゴン用のサングラスなんて用意してないんだ。すまんなハクオウ。


「スコープによる索敵開始……完了。効果範囲内での敵生存率7%。建物や個体名、ゴブリンイーターの影に隠れて難を逃れた敵がいくつかいたようです。エネルギー使用量約65%、戦闘継続に支障はありません」

「よし、セーナはそのまま上空より敵の各個撃破にかかれ。イリーナは戦闘を経験してこい。イド、イリーナに色々教えてやってくれ」

「了解! 個体戦闘武装へ変更いたします」


 肩の長距離砲が収納され、ミサイルポッドが背面に展開。

 腰の長距離砲も同じく収納されて、セーナのスカートがはためいた。


「はい!」

「わかったわ」


 イリーナはまだちゃんとした武器を作っていないので、世界樹の木剣だ。

 イドもそれに合わせるらしい。


『わ、我はどうすればいいかのぅ』

「お前は、奥の方の無事な集落を適当に潰してくれ。セーナやイリーナ、イドを巻き込むなよ」

『むう、まあそれが確実かの』


 セーナの長距離砲でも届かない程、集落は伸びているのだ。まだまだゴブリンはいるっぽい。ハクオウに任せることにする。

 そもそもハクオウがドラゴンのまま戦えば、本人の意思とは関係なしに周りを巻き込んでしまうだろう。

 あまり近くにいない方が良い。


「二人とも捕まって。途中まで運んであげる」

「ん」

「せーねぇ、ありがと」


 バックパックに足をかけてセーナの肩に乗るイド。イリーナはセーナに抱き着いた。

 ハクオウも翼を広げて飛び立つ。


「さて、リアナはオレの護衛な」

「お任せください」


 血液や肉片、ゴブリンの死体が大量に浮かぶ湖に視線を向ける。

 滝が流れ込んでいる部分は綺麗な水に見えるが、湖岸やその周りは汚い。

 あいつ、あの状態でも湖に入ったのか。そりゃ小汚くもなるわ。

スト〇リミー〇ィアとか機械神メ〇プルとかそんなイメージ

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こんな作品を書いてます。クリックするとそれっぽいところに飛びます
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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