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39 錬金術師と新しい従者⑥

「他にも色々秘密あるみたい、聞いても?」

「ああ、まあ答えられない事もあるかもだが」


 素性はバレてしまったが、秘密にしてくれると言っているのでとりあえず信用しよう。というか、イド自身があまりオレの素性に興味が無さそうだし。


「たまに地下に降りて姿を消すのは何?」

「え? 分かんの?」


 女神の魔力の干渉も防げるんだぞこの工房。


「音や魔力なんかは遮断してても、なんとなく気配は分かる」

「そうなんか……」

「ん、工房にいるのは何となくわかる。けど地下は違う。完全に気配も消える」

「地下だから……とかじゃないよな?」

「ん、途中までは分かる。でも突然気配がこの世から消える。何あれ?」


 イリーナを膝に乗せて、頭の耳を弄びながらこちらを見てくる。

 イリーナはくすぐったそうだ。

 どうにもエルフっていうのを舐めていたようだ。

 オレは右手で頭を掻きながら素直に答える事にする。


「あそこは、色んな場所に作ってある転移扉をまとめてあるんだ。気配が消えるのは、別の場所に瞬間移動しているからだ」

「しゅんかん? 何?」

「あー、まあ転移だ」

「転移魔法なら知ってる。短距離じゃないと無理」


 魔王軍とかの魔物にも短距離転移してた敵いたなぁ。


「あれの長距離版だ。その代りオレがあらかじめ扉をセットしておいた場所にしかいけないからオレの行った事のない場所には行けない」


 短距離転移は目の届く範囲内で、かつ障害物の無い場所にしか行けない。

 こちらは扉同士を繋げるので、1の扉から1の扉、2の扉から2の扉、そういった具合にしか移動が出来ない。

 便利と言えば便利だし、大分ファンタジーな代物なのに、中途半端にファンタジーしてない。


「意味が分からない」

「んー、じゃあダンジョンに潜った事あるか?」

「もちろん」

「ダンジョンの中で、時たま転移トラップあるだろ? あれは知ってる?」

「ん、何度か踏んだ」


 イドは、というかエルフは罠を踏み越えるタイプにしか思えない。


「あれのスーパーすごい版だ」

「スーパーすごい……スーパーすごそう……」


 実際スーパーすごいぞ?


「試してみたい」

「あー、まあいいか。他言無用だぞ」


 なんだかんだで一緒に生活してたイドだ。エルフは単純だが約束を大事にする一族だ。信用出来る。


「わかった、楽しみ。明日の夕飯の次に」

「ああ、そういえばそうだな……」


 色々作る約束をしてしまっていた。


「あるじ」

「ん? どうしたイリーナ」

「いりーなのそうび、りあねぇとせーねぇとおなじがいい」

「リア姉……」

「セー姉……」


 嬉しそうにする2人はどうでもいいけど、2人と一緒?


「あれ、メイド服だけど」

「いっしょ」

「セ、セーナもイリーナと一緒が嬉しいわ!」

「ご主人様、午前中お店をお願いします!」


 え? 店番オレがするの?


「縫物ならリアナの出番ですから」

「布取って来る!」

「待て待て、体と魔力が完全に馴染んだら少し成長するぞ? すぐ体のサイズ変わるぞ」

「あ」

「そういえば」


 自分達がそうだったでしょうが。


「2、3日で完全に固定するだろうから、それまで待て」

「仕方ないですね」

「……パジャマくらいなら用意してもいいかしら」

「その辺はお好きにどうぞ」


 間違っても高級な魔物素材の布で作るんじゃねえぞ?






「シンプル」

「そうだぞー」

「でもあるじのはつめい、すごいです」


 地下への扉はオレとリアナとセーナしか開けない。

 それとイドには入るなと伝えていた為、イドは初めてここを使うことになる。

 まあ地下には一本廊下が走っていて、左右に扉が付いているだけだが。


「待って、この絵は世界樹?」

「そうだなぁ」

「こっちは旧魔王城?」

「だねぇ」

「ここは?」

「北部のライダルの湖のダンジョン」

「なにそこ? 聞いたことない」

「阿呆なクラスメートが泳いでたらみつけた」


 湖の底にあるダンジョンなんて普通の人間には見つけられる訳ないのだが、非常識な女が興味本位で潜ったら見つけた。

 完全に湖に沈んでいたダンジョンなので、周りを建物で囲んで水を抜いた。

 空気が無くならない様に作るのがスーパー大変だった。


「手ごわい?」

「ああ。30階までしか攻略してない」


 クラスの連中がいなくなったから20階にも行けないかも知れない。


「楽しそう」

「今度な」


 他にも色々拠点はあるが、今回行くのはオーガの里だ。あの孤島はオーガの領域以外もかなり広い。

 腕試しに丁度いいランクの魔物もいるし、優秀な先生もいる。

 危険もそんなにないだろう。


「今日行くのはこっちだ」


 オーガの里に続く扉を開き、向こうに置いてある一軒家に移動。

 移動した先がまだ家なので、周りをキョロキョロしながら2人は着いて来る。

 家に用はないので。というかこの家、工房を閉じている間のリアナやセーナの待機場所だ。オレは本当に使わない。

 なのでそのまま玄関の外に出る。


「海……」

「これが、うみですか?」


 眼前に広がるのは広大な海だ。

 それはクルストの街ではありえない光景だ。


「それとオーガ」

「コラコラ剣を構えるな」


 畑仕事をしている善良なオーガ族さんだ。


「おんやぁ、道長様。また来たんだべか! まーたべっぴんさんをつれっちてぇ! こりゃ夜は大変だべなぁ」

「そういうのはやめてくれって。ハクオウはいるか?」

「温泉さ行ぐゆうて出かけたべさぁな。しったば4、5んちで戻るゆうてたべ」

「ああ、そうなんだ? いつの話?」

「一週間前だべさ」

「あ、そうかい」


 じゃあいつに帰って来るか分かんないって事ね。


「今日は外で戦闘訓練をしてくる。あまり近寄らないでくれ」

「わがった、皆にも言うとぐ」


 農夫オーガが注意をしてくれるとの事なので安心して里の外に移動する。


「あのオーガ、もしかして赤角族?」

「赤角族? 連中はオーガ族って言ってるけど」

「昔いたって言う、取引出来るオーガ」

「ああ、エルフなら知っててもおかしくないか?」


 みんな長生きだし。


「見た事はない。爺様達の戯言かと思ってた」

「人間や獣人に魔物のオーガと間違われて何度も襲われたらしい。それで逃げ回ってここにたどり着いた一族らしいよ」

「ふうん?」


 興味なさそうだなぁ。


「それよりも、イリーナの訓練」

「そうだな」

「何やるの?」

「最初は影踏みかなぁ」


 鬼ごっこだとタッチの力が強すぎる場合吹き飛ばされる可能性があるからね。

主人公が一番弱い……

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おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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