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03 街に降り立つ錬金術師③

「納品は彼女を通してくれ、物販も担当している受付だ。俺が暇そうにしてたら俺に声をかけてもいいぞ」

「カテジナです。宜しくお願いします」

「ライトロードです。宜しくお願いします」


 赤毛でそばかすとどこかで見た事あるような見た目の女性だ。


「納品物は先ほど確認致しました。素晴らしい品ですね」

「どーも。ついでにこの辺りで見られる魔物のリストなんかもあれば見せて貰えます?」

「ご準備いたします」


 カテジナさんはカウンターから離れる。


「そういえば」

「ん?」

「おっさんの名前聞いてないや」

「ああ、そういやそうだな。色々衝撃で忘れてたわ」


 がはははは、と笑うおっさん。


「ボーガンだ。まあおっさんでいいぞ」

「了解」

「こ、こんにちは」


 話していると、小さな影が冒険者ギルドの扉を開けて入ってきた。

 大きな箱を、子供が持つには大きな箱を持っている。

 そのせいか、足取りもフラフラしている。


「嬢ちゃん。今日も来たな」

「いつもありがとな、荷物持つよ」

「すすす、すいません! ありがとうございます」


 小さな女の子だ。冒険者達が優しく対応してくれている。


「ゲイル、こっちに運べ」

「あいあい」

「それと残りも持ってきてやれ」

「了解、嬢ちゃん。俺が行くよ」

「どれ、オレも付き合うか」

「ありがとうございます!」


 冒険者が2名、その女の子について出ていく。


「ポーションは液体だからな、あんな小さな子じゃ何回も往復せにゃならん。うちの連中が運んでやってるんだ」

「愛されてんなぁ」


 まあ小さな女の子が頑張っている姿は応援したくなる。


「おう、親父さんが一人で育ててやってたんだが……先月、素材の回収に行って、その時に魔物に襲われちまった」

「ああ……なるほど」


 この世界じゃ珍しくない話だ。

 魔王に攻められた後の街や村では特にそう言った事例が多かった。今更感情が揺さぶられるなんて……。


「あのくらいの子供なら孤児院に入れるべきなんだろうが、親父さんの工房を守るんだって息巻いててな。きちんとポーションも納品してくれてるから、せめて応援だけでもって……贔屓してるみたいで、違うな。贔屓してるか。孤児なんか他にもいっぱいいるしな」

「あの年で自立してるのか? 大したもんじゃねえか」


 スーパー泣ける。


「ああ、だから薬草を格安で売ってポーションを高値で買ってやってる。毎日納品してくれる真面目な子だよ」

「毎日?」

「ああ。親父さんも週に2、3回だったのに、まだ失敗が多いから回数を重ねないとって」

「先月から……毎日?」

「まあそうだな。葬式があって、その次の日からか」

「お待たせしました、こちらが周辺の魔物の資料です」

「あ、ども」

「ダンジョンの物もありますけど……」

「一度に覚えきれないだろうからとりあえずこっちだけで」

「はい。ご入用でしたらまたお声がけ下さい」

「ありがとう」


 オレは渡された紙束をカウンターに……。


「あっちでやれ」

「うす」


 ここは他の冒険者も使う場所でした。






 黙々と資料に目を向ける。

 王都よりも魔王の領域に近い街の魔物が多い。薬草もホジョル草か、根の処理をしっかりしないといけないな。

 毒を持つ魔物の種類も複数いる。

 これは解毒薬も何種類か用意した方が良さそうだ。

 【魔力回復薬(マナポーション)】の素材になる月見草も取れるんだ? ダンジョンがあるなら需要があるかもしれない。

 蘇生薬の材料も、多少遠出させれば手に入りそうだ。これは依頼をかければ持ってきてもらえるかな?

 石化をしてくる魔物はいないみたいだけどダンジョンにはいるかもしれない。後で調べておこう。


「ありがとうございました!」

「いいのよ、ミーアちゃん。これ、食堂の余りのパンね。ダメになっちゃうから持って帰って?」

「いつもありがとうございます」


 さっきの小さな錬金術師の納品が終わったみたいだ。

 顔を上げて改めてそっちを見る。

 7、8歳くらいだろうか? 茶色い髪の可愛い子だ。

 目の下のクマが無ければ。


「やくそう、いいですか?」

「ええ、誰か運んであげれる? それと回収した空き瓶も」

「あいあい」


 冒険者の一人が大きな皮袋に入っている薬草を……あんなに?


「すげえだろ。納品数が増えればもっと稼がせてやれるんだがな」

「一人であんなに使うのか。1日300本くらい作れるんじゃねえか?」

「大体30本くらいだな」

「は?」

「失敗が多いらしいんだ。で、失敗しないように多めに薬草を使ってるって前に言ってたぞ」

「あれで30本……1本貰えるか?」

「あ? ああ」


 500ダラン支払い、入荷したてのポーションを一口。


「にげぇ」

「まあポーションだからなぁ」

「そうじゃない。錬成時の抽出が甘い。というか、あんな子供があれほどの数の薬草を処理しようとしたら相当魔力を……あ!」

「ど、どうした!?」

「あの子、魔力欠乏症じゃねえか?」

「はあ!?」

「さっきからフラフラしてる、単に寝不足かと思ったけど魔力欠乏症の症状に」


 パタ。


「倒れた」

「ミーア!!」

「ミーアちゃん!!」

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おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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