09 ゴブリンを倒す錬金術師①
「マスター起きて下さい、マスター」
「工房を建てたのに我々を呼ばないで、何を寝ているのよ。起きて、ご主人様」
「む、ん?」
ああ、久しぶりの自分の部屋に戻ったから寝ちゃったか。
「扉の反応にリアナが気づかなければまだ向こうで農作業をしてたのかもしれないのよ? 起きてねぎらって、頭を撫でて褒めてよご主人様」
「ああ、悪かった……」
目を覚まし、顔を上げるとそこにいたのは2人の美少女。
人間ではないが。
「リアナ、セーナ、おはよう。久しぶり」
「はい、3週間ぶりですマスター。リアナは再会を喜んでいます」
「セーナを放ったらかしにするなんて許せることじゃないわ、まったく。心配させないでよね」
(クラスメート達の)趣味を全開させて作られたメイド服を着こんだのはリアナとセーナ。
腰まで伸びた銀色の髪の毛を流している、優しい笑みを浮かべたスタイルの良い少女はリアナ。
同じく銀色の髪をツインテールにし、勝気そうな表情を浮かべているスレンダーな少女はセーナ。
この2人は、オレの作った錬金生物だ。
素体の関係で2人しか作れていない。もっと欲しい。
「あー、悪い。ちょっと気が緩んでた」
「お疲れですか? もう少し休まれますか?」
「寝るならその前にお風呂入ってよね、それとスープくらい口にしてから寝ないと体に悪いわよ? というかセーナがいない間、何を食べてたの? ちゃんとした食事してた訳?」
「ちゃんと宿で食事を取ってたよ」
「どうせ肉料理ばっか食べてたんでしょ! 宏美が言ってたもん! これだから男子ってやーねって!」
「はいはい、セーナにはお世話になってるよ」
「分かればいいのよ分かれば!」
改めて二人を見る。うん、今日も美少女だ。
でもしばらく放置してたから表情が若干怒ってる様に見える。
「あー、なんだ。お前達、渡しておいたマナポーションはちゃんと飲んでたか?」
「ええ、毎日1本頂いておりますわ」
「農作業とオーガ達との戦闘訓練(軽い運動)ですもの、魔力はそんなに消費しないわよ」
「まあそうだろうが、久しぶりだし魔力を補充しておこう」
「ホント!?」
「ありがとうございます、マスター」
喜びながら、いそいそと服のボタンを外しにかかる2人。
「コラコラ、後ろを向いて脱ぎなさい」
「以前も言いましたが、マスターにお見せ出来ない体はしておりませんわ?」
「そうだった! ちょっとリアナ! 恥じらいを持ちなさいって奏が言ってたでしょ」
「もう、奏さんはいないのですからいいじゃないですか」
「いいから後ろを向くのよ!」
前が完全にはだけているセーナがリアナの肩を掴んで無理矢理後ろを振り向かせる。その動きがそもそも色々見えそうな動きだが、自制心を持って我慢。
そもそも自分が作ったホムンクルスなんだ。欲情なんてする訳が無い。
「じゃ、じゃあ始めるぞ」
うう、メイド服の上を脱いでいる二人の背中は妙な色っぽさがあるな。
後ろ手でブラを外すしぐさとか特に。
いかんいかん。こんなんじゃまた女子連中にお人形遊びと馬鹿にされてしまう。
深呼吸を一つして、二人の背中に手を当てる。
そして体内にある、人間でいうところの心臓部分に意識を集中させて魔力を込めていく。
「ン、ハア……ウウン。マスターの熱いのが、中に……」
「ああ、気持ち、はっ、いい……もっとぅ」
エロい。
「こんなものか」
「た、助かりますわ、マスター」
「ここここ、このの感覚は、いいいいつまで経っても。な、なれないわね…………気持ちいいけど」
背を向けながら、いそいそと外したブラを直して服を着なおす。
気分が高揚したのか、表情もどことなく赤い。
二人はホムンクルスの為、定期的に魔力を補充しなければ動かなくなってしまう。
オレ自身が注入しなくても【魔力回復薬】があれば回復出来るが、時たまこうして直接入れるようにしている。
これをすると二人とも機嫌が良くなるから。
とても良くなるから。
「さて、眼も覚めた。久しぶりにセーナのご飯が食べたいな」
「えへへ」
「リ、リアナも手伝いますから!」
「ああ、リアナもありがとう」
「オーガの島の食材中心でいいかしら?」
「ああ、久しぶりに米が食べたい」
魔法の鞄におにぎりは入ってたけど、宿暮らし中は宿の食事を取ってたから手を出してないんだよね。
「今日はご飯にお味噌汁に唐揚げにサラダにしようかしら」
「いいね、ごちそうだ」
「じゃあセーナからご主人様にお願いがあります」
「お? なんだ」
「井戸からポンプ引いてきて」
「あ」
そういえばまだ水を引き込んでなかった。
外に出て宿だった時代の井戸に自動で水を引き上げられる様にポンプを設置しよう。
「おおおおお、おししょーさま!」
「あれ? ミーアちゃん、どうしたの?」
家の外に出ると、柵の外側に人だかりができていた。
みんな突然現れた家に驚いて集まったみたいだ。柵で防御しておいてよかった。
「なんか家が建ってます!」
「おう、すごいだろ」
クラスメート達から魔力を半月近く徴収し続けて出来た自慢の工房兼自宅だ。
「あんたがこの家を建てたのかぁ、今日あたりで更地になってるくらいって思ったのに」
「あれは家を建てたっていうのか? なんか生えた感じだぞ?」
「錬金術師だってねぇ。こんなのゲオルグ様のお弟子さんでも出来ないんじゃないのかい?」
「ゲオルグ様が似たような事してるの見た事あるぞ!」
「ってことはゲオルグ様クラスの錬金術師かい!?」
「いやいや、これはダンジョン産のアイテムの力ですよ」
ちょっとだけ改造したけど。
「なんだそうなのかい、でも錬金術師なんだろ? ミーナが世話になったねぇ」
「いえいえ」
「お、おししょーさまはすごい人なんです!」
「や、師匠はやめて」
弟子を育てる時間があれば研究に集中したいし。
「工房になるんだよなぁ? 販売もするのかい?」
「はい、ジブラータル卿の許可が下り次第ですが。熱覚ましや虫避けも販売しますよ」
「助かるねぇ!」
「ああ、毎度教会に足を運んでたしな! クリス坊の店は遠いし参ってたんだ」
「婆ちゃんの足の薬切れそうだったんだ、あんた作れるかい?」
この世界のクラスで言えば十分都市と言える広さの街で、錬金術師が足りてなかった街だ。そりゃあ期待されるのはしょうがないか。
「薬は適当に作るから、うちの従業員に言ってくれれば出すよ。とりあえず営業開始してからね」
「そうさねぇ、早く討伐隊の連中も帰ってきてくれればいいんだが」
「ご主人様、お水まだです?」
色々話しかけられたらセーナが家から出て来た。
「メイドだ」
「メイドだな」
「え? 貴族様の店?」
「おししょーさま! 綺麗な人です!」
「ご主人様?」
「収拾つかなくなるな。とりあえずオレ、家を使えるようにしないといけないから営業開始したら話聞くな」
今のうちに一般的な薬を大量に作っておこう。
とりあえず、ポンプ引くか。




