9/41
十
今日も逃げる。毎日毎日。終わらない逃避行。
世界は三百六十五日、逃げ回る人々がいる、いやほぼ全員が逃げている。何の為に?知る由もない。自分という存在を保つ為にはそうするしかない。謂わば食事をする様に、寝る様に、新たな命を授かる様に。過負荷の係る身体にて、いかに逃げようとも逃れなれられないその事実。
ある人は言った、これは上善だと。
ほざけ。
恥晒しだ。この白い布団に白い部屋に白い白いベットに、深く横たわろうとも逃げ切ってやる。ニンゲンだれしも欠陥ありきだ。天高く登る豆の木を登れるわけじゃない。白い巨塔にしがみついて爪を食い込ませて掴んでろ。私は恥晒しになんかなりやしない。
誰かが書いた。
書くな。
隣から聞こえる華やかに発生される声を慎め。私は此処にいる。動く足を揺らせない、動かない手は真っ黒に、動くはずがない胴体は刺さりっぱの滅多刺し。
それでも。
逃げ切ってやる。
恥ずべきは巨塔に住まうアリンコよ。豆木を登る我が魂。
逃げ切ってやる。
逃げ切ってやる。
テーマ、後