七
問おう!一年のうちに最も気持ち良かった日は?
みんな、十人十色の回答が湧いてくると思う。ここに一つの仮説を立てよう、ずばり……楽しめる休暇の日。何故かって?この世界に来る前は一週間に二回休暇──実質的に零回──があったが楽しめただろうか?
不安で日々狂奔してるときにシュナに会って同棲することになり日々幸せを味わう事になったが、前の世界の休暇中にそんな事はあっただろうか、小竜に懐かれて家で飼うなんてことあるか、主人に夕食を気に入ってもらえて執事として高給取りになれたことはあり得たか。
いや無い!
あり得ない!
……ずれたな。
今ある人生は蜂蜜の風呂に浸かっているが如く、私を糖尿病たらしめる。
今度の日帰り王都旅はちょっと風呂の外の滑る床に出るだけだ、決して飽きたわけでは無いからな。ほら、有名な人大抵旅してるじゃ無いか、一般人だって馬車とか竜使って遊学してるじゃ無いか。
はぁ。
質屋で買った安物のクローゼットから極東から来た服を取り出し羽織る、薄いけど馴染む。懐刀をクローゼットの床から取り出す、路地で行き倒れていた老人から昼飯をあげたら代わりとして貰った、ドワーフが鍛えて独特の模様を施されてる、多分此処王都で売れば数日は働かなくても済むだろう、でもあの爺さんは売れなかった。きっと、言わずもがな。
春の陽気は人々に眠気とやる気を運んで到底不可思議な情熱を生み出す。
「ちょっくら出かける、夜までには戻るよ」
「私は?置いてくの?」
ぷクーと頬を膨らませて連れてってと言ってくる。
ごめんねシュナ、偶には独りで行くのも粋なんだよ、よし行こう!
「昼ごはん作ってタツの世話はしてあるから、夕食もなんか買ってくるから今日はゆっくりしといてくれ。んじゃ行ってきます」
シュナは手を小さく振って見送ってくれる、お返しに振り返ってキスを投げる。
へっ。