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四十六
その時巫女は火の前に座っていた。昇る炎に身を捧げ、神の如き熱を宿していた。
それは正しく神だった。
数多の生贄により現世に降臨せし神そのものだった。
地上を焼き、空を焼き、海を乾かして神はようやく一人の巫女の前に姿を現した。
死屍累々の地上から死体が消える。
「神様」
火が言葉を発することはない。
「私が身を捧げれば帝国に讃えられる。そう、神様は私に託されました。この業火の中に栄光はない」
巫女は燃えていた。
「それでも、私は帝国が存在し続けたらどんな所業と言われても、神様が悪魔と呼ばれても構わない。神殿で小さな火に身を捧げていたときから、私はどこか思っていました」
巫女は立ち上がり、金の冠を取り出した。
「あなたにこれを」
巫女が一歩進むと炎は退いた。
「神の巫女サカニカは、今ここに宣言する」
燃え盛る巫女は炎を鷲掴んだ。
「神は敵を討ち滅ぼした栄光によって讃えられ、この金の冠を捧げられる」
金の冠が炎を縛りつけた。
「私は“嘘をつかない”。神様がそうであるように」
炎を抱きしめる。
「あなたがくれた名だ。ネカグリロ。あなたは私の父でも、母でもない。ましてや子でもない」
地上から火が消えていく。
「私の全てを捧げよう。神様がするように」
その日、火の神が地上に降臨した。




