三十九
つまらない。
答えの分かる物語を手に取って、棚に戻した。
棚ではない。ブラウザバックというやつだ。
つまらない。
その話を友人にしたところ、大声で笑われた。
がっはっは、いんや、いっひひひ。
額に皺を寄せ喉仏が浮上しハラワタの一部が大げさな動作で横隔膜を援護して、寸のところで踏みとどまった。
目から鱗の、矮小、ちっぽけ、猫よりも歪曲した背中。
鏡の俺は、私はそう言った。
「だから俺はいつも、気付いているのにさぁ……呆れてならない。もう何回同じことを繰り返すんだ?いい加減にその腐った蜜柑モドキを取り替えろよ。あってないような学でさぁ?」
振り返る。
この鏡の俺の言う通り、私は私の絶大な信頼の片隅に巨万の悪の集大成を混ぜ切った腐肉であり凡そ自己満足に疎まれる人間の概要を書き写した模造紙と疑い深い視野を割れた鏡が語っている。
だから、
どうした。
つまらないな。
*
東京のとあるカフェにて二人の若い高校生がイタリアンコーヒーなる小さく濃い飲み物を涼しい顔で飲んでいた。
窓際の席に座り、あれよこれよと話を続けるうちに話題と言う話題は流れに流れていく。中間試験、猫、犬、先公、人生、哲学、社会。
複雑化していく話題に二人は疑問を持ちつつ、しかし流れというのは二人に順応を促した。
「つまらない話なんだけどさ」
「うんうん」
「つまらないって感じるのは、自分がつまらないからなんだって」
「えぇ、それは違うでしょ」
「私もそう思うんだけどさぁ……なんか、信じちゃうんだよね」
「へえ、誰から聞いたの?」
「昨日、そう叫んでるお隣さんがいたの」
「うげ、あの?」
「そう、あの」
「引っ越しなよ。危ないし」
「そうしたいんだけど、お金がね……」
「大学入ったら一人暮らしとかでどっか行きなよ。絶対」
「わかった。わかってるって」




