二十三
彼女が魅惑をもった人物とは限らなかった。
人の形を模ったしたような何かで、ヒーローを殺す役割でもあったのかもしれない。
今となっては知る方法がなく、悲しいといえばいいか、うれしいといえばいいか、葛藤がのこのこと歩いてくる。
もう心配することもないと思えばうれしく、もう会えないと思えば悲しく。彼女はいつも二つだった。
サイコロが好きだったけど、サイコロを振るのは嫌いで、自分で先の結果を決めていた。つまらない、愚痴は毎日のことだった。
それが仕事らしく、げんなりした顔をするときもあったかな。面白い人と思って暫く付き合ってみたら、以外にも人間っぽい。
完全なんてない、不完全もない。ただあれが生物じゃなくて、もっと別の、形容しにくい機構の一つに過ぎなかった。そうでないと、真っ赤になって泣くことはなかったと思う。
泣きついてきたとき、僕はかわいらしい怪物を抱きしめなければ、こうやって振り返る必要もなく、葛藤を抱えることもなかった。
僕は二択を間違い続けた。
きっとこれからも間違えていくんだろうな。コインを投げて、毎回裏を引いてしまう感じ。ありえないけど、実際ここにいるじゃないか。
……機構には自己修正プログラムみたいなのがあって、異常をきたした屠殺機を破壊しに来た。
彼女は壊れてなどいなかった。だからどうしても守りきりたかった。
例え僕を犠牲にしてでも。
笑って返り血を流すなんて御免だ。
身の丈に合わない鈍器を振り回すのも見たくない。
翼をはやして真っ白な姿で空を飛んでも、帰ってきたら真っ赤になって泣いているなんて、悲しいじゃないか。
純白はもとっから存在しない。あったとして、生まれた時のその瞬間しかなっかたんだ。
二人で語ったあの日、確かめた。返り血を浴びたいつかの時から、真っ白な心は堕ちて泥まみれになったんだ。
何で、何であんなに、人間よりも人間らしいんだろう。
ヒーローがいないとやっていけないのに、彼女にはヒーローがいないのに。機構を信じて、ボウルの上で踊り続けた。
つまらない、そういいながらずっとサイコロが回るのを止めたかったんだと思う。想像だけど。
僕のところに落ちなければ、僕がここにいることもなかった。サイコロは面白いね。
さぁ、僕をひと思いにやってくれ。
サイコロを振って、どんな方法で僕を真っ赤にしてくれるんだ。
ころころ
……つまらないな。結局こうなるのか。
その似合わない鈍器をもって、赤く汚れた服を着て、その翼は、堕ちてしまったんだね。
罪滅ぼしの天使よ。僕を殺してください。
あなたの純白を奪った罪で。
*
二人は抱き合い、地に落ちた。もう飛ぶことのできない翼をもった彼女はそれを喜んだ。彼はコインの表を、裏を見たのか、怯えながら共に暮らした。ヒーローなき世は混沌としていたが、サイコロは依然として回り続け、鳴りやむことはなっかた。さらにコインは地面がなく表も裏もなくなった




