表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
練習・習作  作者: 黒心
17/42

十八

 私は目の前が真っ暗になった。


 ある日のこと、私は普段と変わらない生活のルーティーンの始まりに立っていた。起きたら歯を磨いてぱしゃっと顔を洗い、朝ごはんの用意をしてご飯が炊けるのを待つ。お茶を沸かして弟を起こして歯を磨かせる。親はもう出かけたから居ない。赤いランプが点滅してご飯が炊けると電子レンジで具材を温めて食卓へ出す。弟がまだ寝ぼけた顔でやってきた。


「オネェちゃんご飯ちょうだい」


「ちょっと待ってね」


 作っておいた卵を切っていつもの形にして弁当箱に詰める。昨日用意した具材が冷蔵庫からなくなると、私は最後の皿を持って食卓についた。


「ありがとう」


 あぁ、笑顔。


 走馬灯のようなものなのか、この心地よさを一生味わっていたいのに。

 あぁ!

 もう思い出したくない。


『ありがとう』


 そんな笑顔にならないで、ならないで、私の隣で寝て、起きて、食べて。お願い、お願い……。


「お母さん、残念ですが──」


 ああぁぁぁぁ!


「息子さんはお亡くなりました」


 ああ、あぁ。

 お弁当の感想聞いてないよ。また、まだ、聞いてないよ。卵焼き、頑張って作ったんだよ。

 わたしが、遅く起きていれば、いれば。


「申し訳ありませんが、貴方の父親について──」


 笑顔を、見せてよ。


「電車が脱──」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ